第39話 立ってる者は囚人でも使えです
次の日。私とクリスはカリン村を目指して馬車で移動していた。
昨日行ったのはイリン村。そして今回はカリン村。
名前が似ているって?当たり前じゃない。
この世界を作ったご都合主義でネーミングセンスがまるでない神様がまともに村の名前を付けると思う?
最初の資料倉庫の書類を見た時に気付いたけどわざとスルーしたのよ。
勘のいい人は既に分かったと思うけど12ある村の名前はアリン村、イリン村、ウリン村と始まり最後はシリン村よ。
ややこしいったらありゃしないけど、逆に村の名前はすぐに覚えたわよ!
ネーミングセンスが無いってより、神様、貴方、匙を投げたでしょ?
面目ない。
まあ、今更この世界の神様には期待しないけどさ。
そういえば昨日のイリン村の村長って刑務所に入れられたんだっけ?
刑務所にはどのくらい囚人がいるんだろ。
でも基本的に犯罪者は死刑ってことだし。
収監されている人は少ないのかもしれない。
「ねえ、クリス。このワイン伯爵領には刑務所があるのよね?」
「はい。ありますよ。刑務所は各領地内に一つ以上はあります」
「そう。今って囚人は何人くらいいるの?」
私の言葉にクリスは考えて答える。
「幾分、人数の変動はありますが……。常時200名近い人数はいると思います」
「そんなにいるの?」
「ワイン伯爵領で罪を犯した者を全て収監してますし。犯罪者認定を受けるまではいろいろ調べたりしますのでその認定待ちの者も入れるとそれぐらいの数になります」
「男女比は?」
「8割は男性ですよ」
そうすると単純に160人程度は男の囚人か。
その中には殺人犯もいるだろうし窃盗や詐欺などで捕まった人もいるだろう。
でも一律「犯罪者は死刑」っていうのは怖いわね。
「その人たちは刑務所に入って何をしてるの?」
「え? 牢屋に入ってますが?」
「刑務所内で働かせたりはしないの?」
「?。何でそんなことをする必要があるんですか? 犯罪者は死刑を待つだけですから」
じゃあ、日本みたいに「懲役刑」なんてないから、みんな牢屋に入って「死刑」になる日を待つだけなの?
「クリス。例えばその中で殺人を犯した人物はどれくらい?」
「そうですねえ。だいたい二割程度の人数ですかね」
まあ、さすがに殺人の罪は重いから死刑になっても不思議じゃないけど、その他の囚人が死刑になるのはあまりにも可哀想よね。
それに日本のように「懲役刑」にすれば囚人も立派な働き手になるんじゃないかな?
「立ってる者は囚人でも使え」って作戦はどうかな。
「犯罪者って犯罪者認定を受けるとすぐに死刑にされてしまうの?」
「いえ。死刑にする日取りは改めて決めますので犯罪者認定を受けたからといってすぐに死刑になることはありませんし。『友引』の日は死刑はできないので……」
「はい? 今、何て言ったの!? 『友引』って言った?」
「ええ。昔から『友引』は火葬場が休みなんで死刑が執行されることはありません」
この世界って「六曜」があるの!?
マジで!?




