第38話 女性は立派な人材です
とりあえず村長は警備隊の人が刑務所に連れて行くことになり、私とクリスは馬車で伯爵家へと戻る。
クリスとも話し合って今回の脱税の件は村長の「死刑」を回避すべくワイン伯爵が王都から戻ったら事情を話して対応してもらうことにした。
ワイン伯爵には今は国王様への事業説明や予算要求に集中してもらいたい。
村長がワイン伯爵を騙して脱税していたなんて耳に入れたらワイン伯爵は冷静に国王に事業説明できるか怪しいからだ。
それでもワイン伯爵にとっては村長の裏切りは悲しむでしょうね。
私は一応村長の話に嘘がないか伯爵家に戻ってから古い災害の記録が載っている書類を見てみた。
そしたら確かにワイン伯爵領は10年前に水害と不作に見舞われていたことが分かった。
それがそのまま村長の自白の裏付けまでにはならないかもしれないが私はたぶん村長の言っていたことは真実だと思った。
私は夕食を食べてその後にクリスと一緒に今リビングにいる。
昼間話した即応予備自衛官の制度についてクリスが「資料にまとめたい」と言ったのでもう一度即応予備自衛官の制度について説明していたのだ。
クリスは私の話を紙にメモを取って真剣に自分なりに資料を書いているようだ。
う~ん、仕事のできるイケメンって素敵!
クリスはこれから女性たちの視線を独占するでしょうよ。
私はクリスの相手にはなれないけどイケメンの弟を持つのもいい気持ちだわ~
でも即応予備自衛官をこの世界風に少しアレンジすれば村に男手は戻るけどそれだけでは劇的に農産物の収穫量が増えるとは思えない。
もっと働き手を増やして産業を活性化しないと。
後は人材として思いつくのはやはり女性だ。
子供は基本的に学校に行って教育を受けてほしい。
読み書き算盤ができるようになれば優秀な人材になるからだ。
だがそれはあくまで将来のワイン伯爵領を背負っていく人材にするための先行投資といったところで今現在即戦力として考えられるのは女性の活用だ。
そもそも村の女性って普段は何をしているんだろう?
もちろん家事や育児をしているイメージはあるがそういう主婦たちにできる仕事はないだろうか。
やっぱり現場百回ね。
「ねえ、クリス。今度は別の村に視察に行きたいんだけど」
「またどこか変な村がありましたか?」
「ううん、そうじゃなくて村の女性たちの生活を見てみたいの」
「女性たちの?」
「そうよ。私の国では私が文官をやっていたように女性もいろんな仕事をしていろんな職業の人がいたわ。だからこの伯爵領に住む女性たちの力も借りれないかと思って」
私がそう説明するとクリスは納得したようだ。
「つまり女性の活躍の場を広げるということですか?」
「ええ、私、気になってダイアモンド王国の法律書を読んでみたんだけど、法律書にはこの職業には女性はなれないとかって書いてないのよね」
「そうですね。そう言った法律はないと思います」
「だったら逆に言えば女性だってこの国で文官になっても他の職業に就いても法律違反じゃないわよね?」
私の言葉にクリスは頷く。
「確かにそうです。それにアリサを見ていたら女性が男性に劣るとは思えません。力仕事とかは無理でも女性にもできる仕事を考えるのもいいですね」
「そうでしょう? でもそれには今の女性の生活がどうなっているのか知りたいのよ」
「分かりました。では今度は違う村に行ってみましょう」
「クリスが話の分かる人物で助かるわ」
私とクリスは次の日も視察に出かけようという約束をして別れた。
自室に戻った私はアンナの手伝いで寝る準備をしてベッドに横になった。
日本でも女性の活躍を求める声は年々大きくなっている。
公務員も女性の比率が高くなってきている。
せっかくの女性という人材を放っておくのはもったいない。
この世界にだって女性ができる仕事があるはず。
そう思いながら私は眠りについた。




