第33話 護衛はジャッカルです
その日の夕食の時に私はクリスと明日イリン村に出かけることをローズ夫人に話した。
「まあ、イリン村に行くの? でもクリスと二人では危ないのではないの?」
「大丈夫です。母上。護衛の軍人と警備隊も連れて行きますし」
クリスがそう言うとローズ夫人は少し安心したようだ。
「じゃあ、私軍の軍隊長のジャッカルを連れて行くといいわ」
軍隊長のジャッカル? なかなか強そうなお名前ね。
「分かりました。明日はジャッカルを連れて行きます。日帰りで帰りますが少し帰りは遅くなるかもしれません」
「分かったわ。いってらっしゃい」
ローズ夫人の許可も下りたので私たちはイリン村に向かうことにした。
私は部屋に戻り明日の外出の準備をする。
カバンには「ダイアモンド王国の法律書」を入れておく。
やっぱり困った時は法律書を確認するのに限る。
きっとこの法律書は私の「伝説の武器」ってところね。
この国にも法律があって良かったわ。
国王の独裁政権って可能性もあったわけだし。
それを考えるとマシな世界よね。
異世界感が足りなくて不満を言ったけど、このくらいの世界の方が私の性に合ってる気がするわ。
私はそう思いながら就寝した。
次の日の朝。
外は昨日よりは雲が多いがなんとか出かけられそうな天気だった。
日帰り予定だし大丈夫よね。
私とクリスは朝食を食べて玄関で待ち合わせをした。
自分の荷物を持ってから玄関に行くと何人かの男性とクリスが待っていた。
「アリサ。紹介します。こちらは軍隊長のジャッカル・ランドです。ジャッカル、こちらが僕の姉になったアリサだよ」
「初めまして。ジャッカル・ランドです。ジャッカルとお呼びください」
「初めまして、ジャッカル。アリサです」
ジャッカルは見た目は30歳くらいで赤茶色の髪をしている。
この髪の色の人は初めて見たわね。
それにしても軍人だけあって体格がいいわね。
ジャッカルは身長も高く腕などの筋肉も服の上からでもすごいのが分かる。
そして剣を腰につけている。
やっぱりこの国の主流の武器は剣なのかな?
銃とかは無いのかしら?
「ねえ、ジャッカル。この国では剣で戦うのが普通なの?」
「え? そうですが……それが何か問題ですか?」
「いえ、何でもないわ」
やっぱり基本的には中世ヨーロッパ時代って考えた方がいいかもね。
「では、出発しましょう」
私とクリスは馬車に乗り、ジャッカルたちは馬で馬車の周囲を守る。
う~ん、護衛されて馬車で出かけるなんて貴族感がさらにアップしたわ。
イリン村までは馬車で一時間ほどらしい。
そんなに遠くはないわね。
村長が脱税してるのか、それともイリン村特有の問題があるのか。
どちらにせよ。ここには領主の権限を代行できるクリスがいる。
村長が何を隠していようが暴いてあげようじゃないの!




