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ただの日本のヒラ公務員(事務職)だった私は異世界の最弱王国を立て直して最強経済大国にします  作者: 脇田朝洋


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第26話 説明資料は紙一枚です

 次の日も私とクリスは予算要求の書類を作り、シラーとシャルドネは実績報告書を作成していた。

 ワイン伯爵は何をしているかというと国王に説明する新規事業の説明資料作りだ。


 ある程度仕事をした時にワイン伯爵が「休憩にしよう」と皆に声をかけた。

 人間は集中できる時間というのは決まっている。

 私の経験で言えば集中力が持続するのは二時間が限度だ。


 よく会議で何時間も打ち合わせする人たちがいるが、ちゃんと途中で休憩時間を取る場合とずっと会議を行う場合では頭に入ってくる内容の量に明らかに差が出る。


 もちろん議題が多ければ会議時間も長くなるけど、休憩時間を取るのは大事なことなのだ。

 疲労している頭で説明を聞いてもなかなか理解できない状態になってしまう。


 私たちは事務の手を休めてメイドさんの淹れてくれた紅茶を飲む。


「シラー、実績報告書の作成は進んでる?」


「はい。提出書類が見やすいのでこれまでよりも早くできそうです」


「そう。それは良かったわ」


 功労金を出してまで村長たちに書類の再提出をしてもらっただけの効果があって良かった。


「お父様は国王様への説明資料は出来たんですか?」


「ああ。もうだいぶできたよ。見てみるかい?」


「そうですね。見せてもらえるなら」


「これがそうだよ」


 ワイン伯爵はドサリと紙の束を私の前に置く。


「え? これが国王様に見せる説明資料ですか?」


「ああ、そうだよ。新規事業の内容や必要な経費についての計算式も全て載せてある。完璧だろ?」


 ワイン伯爵は自信満々に書類を前に私を見つめる。

 私は30枚ぐらいの書類の束を見てワイン伯爵に聞く。


「新規事業はいくつ説明するんですか?」


「今回は三つだ」


 私は頭が痛くなった。

 そうだ。この人は事務力が皆無だった。


「まさか、この30枚ぐらいの紙の束を国王様に渡して説明するわけないですよね?」


 私は若干の希望を持ってワイン伯爵に尋ねた。


「いや、この資料を全部国王様に見せて説明するんだが……」


 おお、神様。このワイン伯爵領が今までどうやって予算を国からもらっていたのか教えてください。


 私は頭に手を置いた。


「どうしたんだい? アリサ。疲れで頭が痛いのかい?」


 ワイン伯爵は心配そうに私を見る。


 私が頭が痛いのはあんたの事務力が皆無のせいよ!!!


 私は心の中で叫んだ。


 上への説明の場合は説明する資料は基本的に一枚にまとめるのが普通だ。

 特に国王などの権限を持つトップになればなるほど、説明する資料は一つの事業ごとにA3サイズの一枚に全てを書く。


 だがそれは事業内容を事細かに全て書く必要はない。

 ポイントは三つ。


 まず新規事業の概要を簡潔に書く。そしてメリットとデメリットを簡潔に書く。最後に必要な経費の金額を書く。

 基本的にこれでいいのだ。


 そしてもちろん国王は事業について質問するだろうし、その時のために説明者、今回の場合はワイン伯爵が手持ち資料として事業の詳しい内容を書いた書類を持っていて、それを確認しながら答えればいい。


「お父様。これは説明資料ではなく手持ち資料ですわ」


「え? 手持ち資料?」


「はい。基本的に国王様には事業の概要とメリットとデメリット、それに経費を書いたものをA3サイズの紙一枚に書いたものを渡せば充分です」


「え? 紙一枚?」


 ワイン伯爵は驚いている。


「そうです。そしてその事業の内容は簡潔にお父様が口で説明すればいいんです」


「そんなんでいいのかい? 詳しく内容を書いた方がいいんじゃないのかい?」


「では質問しますが今まで国王様はお父様が作成した資料を全部読んでくれましたか?」


 ワイン伯爵は思い出すように考えていたが答える。


「国王様は一目見ただけで、いつも「どんな事業だ?」と私に質問されていたが……」


 やっぱりそうでしょうよ。


「いいですか? まずは私が言った三つのことをA3サイズの紙にまとめてください。そして一つ一つの文字は大きく書いてください」


「文字を大きく? なぜだい?」


「国王様は50代だと聞きました。人間は50歳を過ぎれば老眼になることが多いです。つまり細かい文字を見るのが大変であり細かい文字を見ただけでその資料を見てくれません!」


「なるほど。だからいつも国王様は私の資料を見てくれなかったのか……」


 ワイン伯爵は納得したようだ。


「もちろんこの30枚の資料は手持ち資料になるので無駄にはなりません。お父様、頑張って作ってみてください!」


「分かった。頑張って説明資料を作るよ」


 ワイン伯爵は私の言葉に頷いた。



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