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第253話 離婚証明書の用紙を手に入れました

 次の日、私は総務事務省へ出勤した。

 昨夜はタイガーと別れた後にサタンと合流して無事に王宮へ帰って来たのだ。


 もちろん帰りは王宮ダンジョンなど通らずサタンに門番の兵士の対応をしてもらい堂々と正門から王宮に入った。


 サタンが味方してくれるのが分かっていたらわざわざ王宮ダンジョンを攻略なんてしなかったのに。

 でもまあ、王宮ダンジョンもそれなりに楽しめたから良しとするか。


 人間は物事を前向きにとらえることが重要である。


 さて、今夜タイガーに会うまでに離婚証明書を用意しないとなのよね。

 どこに行けば手に入るかジルに訊いてみようっと。


「ジル、ちょっといいかしら?」


「はい。アリサ様、何でしょうか?」


 仕事をしていたジルは手を止めて私の所にやって来る。


「ちょっと訊きたいんだけど離婚証明書の用紙ってどこに行けばもらえるか教えてくれない?」


「り、離婚証明書ですか……?」


 ジルは驚いた表情で私を見つめる。


 そんなに驚くことだったかしら?

 結婚もしてない私が離婚証明書なんて言ったからかな。


 離婚証明書が欲しい理由をジルに説明しても良かったのだが同じ部屋にはクリスがいる。

 クリスにはまだロゼッタたちのことを話していないのでここではまだクリスの耳にこの話を入れる訳にはいかない。


「ちょっと必要になったから欲しいのよね。用紙がある部署を教えてくれたら自分で取りに行くから」


 今回はクリスや自分が関係する個人的な事件の解決なのでジルの仕事の邪魔はしたくない。


「分かりました。離婚証明書がある部署は……」


 ジルが教えてくれた部署は総務事務省の一階にあるらしい。


「そこは昼休みでも対応してくれるの?」


「はい。昼休みでも窓口に担当がいますのでもらえると思います」


「分かったわ。昼休みに行ってみるわ。ありがとう、ジル」


「い、いえ……」


 ジルは戸惑い顔のまま自分の席に戻る。


 それにしても離婚証明書を発行する部署は昼休みにも対応しているのね。

 助かるわ。


 最近は役所でも昼休みに窓口の受付事務を休む部署もある。

 しかしそれは住民に接することのない窓口に限られていることが多い。


 住民にも自分の仕事があるから昼休みに役所に来る人もいる。

 そんな時に「今は職員が昼休み中なので窓口の受付はしません」などと言おうものなら苦情になってしまう。


 そのため住民対応が必要な部署は昼当番などの職員を配置して対応することもある。

 もしくは職員同士で昼休みの時間を30分ずつずらして取るようにして常に窓口対応ができる職員を配置しておく方法を取ることもあった。


 私は昼休みまでの間に仕事を片付けようと頑張った。

 なぜなら離婚証明書の用紙にロゼッタのサインが必要ならロゼッタに会いに行かねばならないので午後から休暇を取ってもいいようにと思ったからだ。


 そして昼休みになり私は総務事務省の一階の部署に離婚証明書を取りに向かう。

 一階に行くとその部署はすぐに見つかった。


「すみません。離婚証明書の用紙が欲しいんですけど」


「これは首席総務事務官様。り、離婚証明書ですか……?」


 ここでも窓口の事務官に驚かれてしまう。


 なによ、そんなに私が離婚証明書の用紙を取りに来るのがおかしいのかな。

 別に結婚してない人間だって必要に応じて用紙ぐらいもらいに来るでしょうが。


「そうです。離婚証明書です」


 繰り返し私が言葉に出すと事務官は恐る恐る用紙を私に渡す。


 どれどれ、どういう用紙なのかしら。


 離婚証明書の用紙を確認した私はそこでジルと窓口事務官が微妙な態度だった理由に気付いた。

 用紙には「離婚(婚約破棄)証明書」と書いてあったのだ。


 なるほど、この用紙では婚約破棄もできるってことか。

 ジルたちは私がブランやゼランと婚約破棄すると思ったのね。


 王宮内の事務官たちは私がブランと婚約したことを知っている。

 正確にはゼランとも婚約しているし。


 そんな私が婚約破棄にも使用できる「離婚(婚約破棄)証明書」が欲しいと言えば誤解されてもおかしくはない。


 ここはブランたちに知られないように口止めしておくべきね。


「すみませんが私が離婚証明書の用紙を取りに来たことは秘密にしてもらえるかしら?」


「も、もちろんでございます」


 権力を振りかざすことはしたくないがブランたちにバレる方が厄介なことになるのでここは仕方ない。

 それに公務員には元々守秘義務もあるしね。


 事務官に口止めした私は離婚証明書の中身をもう一度確認する。

 するとさらに驚愕な事実が判明した。


 離婚証明書に必要なのは男性のサインのみ。

 つまり離婚も婚約破棄も男性が望めばできてしまうのだ。


 こんな男尊女卑的な書類は許せないわね。

 あ、でも、こんな書類だったからブランもゼランもあっさり婚約破棄できたのか。


 あのキャサリンやカテリーナのサインが必要だったならブランやゼランが婚約破棄するのは大変だっただろう。


 そもそも離婚と婚約破棄を同等に扱うこの書類が悪いわよね。

 婚姻関係と婚約関係は絶対別にすべきよ。

 こんな書類があるから悪役令嬢が男性から勝手に婚約破棄される話が生まれるんでしょうが!



『波動~自衛官の俺が異世界の華天国を護るために戦った理由 (わけ)~』作者名 脇田朝洋


『女王の華咲く日~六人の王配に愛されて新しき女王は華開く~』作者名 リラックス夢土


『少女スパイと七人の王様~異世界転生で手に入れた最強スキル「透明人間」で「スパイ」活動をしたらなぜか七人の王様に愛されました~』作者名 リラックス夢土


『ファミリーキルの初恋~ヴァンパイアの僕は桜の女神に恋をした~』作者名 リラックス夢土



 以上の作品も連載中です。作者名は都合により使い分けています。

 興味のある方はお読みいただけると幸いです。

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