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第248話 天国の宴に潜入します

「……ここが酒場通りです…「天国の宴」はこの通りの中央辺りにあります……」


 サタンの馬に乗せてもらい王都の端にある酒場通りまでやって来た。

 王都の端にあってもそこは酒場が集まる歓楽街。夜でも人通りは多い。


 今回はサタンを味方にできて良かったわ。

 酒場通りが王都の端にあると聞いてはいたけど王宮からここまで歩いて来てたら時間がかかり過ぎたわね。


 私はダイアモンド王国の王都に暮らし始めて少し経つが基本的には王宮の中で過ごすことが多い。

 王都に外出する時もサタンの馬に乗せてもらったり馬車での移動だったからうっかり失念していた。王都がバカでかいことを。


 たく! 弱小国家のクセに王都や王宮だけはバカでかいんだから!


 文句も言いたくなるがそもそもの移動手段が馬や徒歩だからそう感じるだけなのかもしれない。

 電車や車があれば王都内もそんなに広く感じない可能性はある。


 だが現実問題、この世界に電車や車はまだない。

 それなら乗り合い馬車が定着するするまでの辛抱だ。


 それにマジで乗馬を習った方がいいかもね。

 毎回、サタンに負担かけちゃうし。


「……馬を預けて来ますので……」


「分かったわ。ここで待ってるわ」


 私は馬から降りてサタンが馬を酒場通りの入り口にある馬屋に預けて帰って来るまで酒場通りのお店を眺める。

 やはりキャバクラのようなお店が多いせいか男性の姿が多い。


 そして店先では客引きが男性たちに声をかけているのが確認できる。


 東京にありそうな歓楽街そのままね。

 さて、どうやって「天国の宴」に侵入しようかな。


 サタンはお客として入れるだろうが私がキャバクラにお客として入るのは無理な気がする。

 一番怪しまれないのはキャバ嬢としてお店に入ることだろう。だが私はキャバ嬢ではない。


 私が入店する良い案がないか考えているとサタンが戻って来た。

 とりあえず私とサタンは「天国の宴」のお店の前まで行ってみる。


「ここが「天国の宴」かあ」


 そのキャバクラはデカデカと「天国の宴」という大きな看板を掲げていた。

 外見からしてケバケバしいお店だ。


 私がどうするべきか悩んでいると「天国の宴」のお店の横には狭い道がありその奥から男の怒鳴り声のようなものが聞こえた。

 気になった私はその横道に入り声のする奥の方まで行ってみる。当然、サタンも私の後ろを歩いてきた。


 するとそこはお店の裏口らしい。

 体格のいい男が一人と痩せた男が一人、それに厚化粧で胸の部分が大きく開いた服を着た金髪の女性が一人いた。


「おい! もっとマシな女はいなかったのか!」


 体格のいい男が瘦せた男を怒鳴りつける。


「す、すみません、支配人様。最近はどこの酒場も女の取り合いでして…この女もようやく引き抜きに成功できたんです」


「引き抜くならもっと美人を連れて来い! この国に二人といないような美人をさ!」


 どうやら痩せた男が違うお店のキャバ嬢を引き抜いてきたらしいが支配人の男は引き抜いてきた女性に不満があるらしい。

 女性を蔑む発言には断固抗議したいがここはまず今回のロゼッタの案件を片付ける方が優先だ。


「そんな美人の女なんてそう簡単にいませんよ!」


「それなら珍しい姿の女でもいい! 人目を惹くような姿をしている女とか…とにかく売り上げを上げないと俺の首が飛んじまうんだ!」


 ん? 珍しい姿の女? この国に二人といないような美人って言ってたわよね。

 これだわ!


「サタンはここで待ってて。危なくなったら笛を吹くから。ね?」


「……分かりました……」


 サタンに小声でお願いをして私は自分が被っていた茶髪のかつらを取った。

 黒い長い髪が背中にサラリと流れる。


 私は横道から出て支配人の男に声をかけた。


「珍しい姿の女で良ければ私を雇ってみない? 支配人さん」


 支配人の男も痩せた男も私の姿を見て驚愕した顔になる。


 そう。この世界で何度も珍しく美しいと言われたこの黒髪と黒い瞳が私の武器。

 自分では美人なんて思わないけど絶対にこの姿は美人認定される自身が私にはある。


 だってこの世界は黒髪に黒い瞳は美人だというちょろい世界なのだから!


 私はついでにニコリと窓口スマイルを決めてみた。


「すげえ、美人だな! 姉ちゃん、この店で働きたいのかい? 姉ちゃんみたいな美人なら大歓迎だぜ!」


 フ、やっぱりちょろい世界だったわ。


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