第247話 王宮ダンジョンを攻略しました
とりあえずここで国王夫妻に見つかっても厄介なので私は仕方なく後戻りをして階段の場所まで戻る。
やはり「上」の選択は間違いだったわね。
外への出口なら「下」を選ぶべきだったわ。
今度は下の階段を選び降りて行く。
降りた先に再び通路が伸びていた。
その通路を歩いて行くと壁にぶつかり行き止まりになっている。
壁には扉のようなモノはない。
ちょっと! ここまで来て行き止まりってことはないんじゃない!
私に引き返して最初から選択し直せってこと!
今から最初の分岐点まで戻ったら大幅な時間のロスだ。
まったく! 神様が王宮ダンジョンの道を教えてくれないから失敗しちゃったじゃない!
もしくは王宮ダンジョンの地図をくれるとか攻略本くれるとかそのくらいの優しさがあってもいいじゃない!
私は腹立ち紛れに壁を思い切り足で蹴った。
すると壁が蹴られた勢いでグルンと回転する。
「きゃああっ!!」
体勢を崩した私はそのまま壁が回転した隙間から外に飛び出して転んだ。
「いたたた…」
なんなのよ、もお!
転んだ私が腰を手で擦りながら自分の後ろ側を見るとそこは王宮の裏側に当たる城壁が見える。
どうやら王宮ダンジョンを抜けて無事に外に脱出できたようだ。
最後は回転扉の仕掛けかあ。
ダンジョンには付きものよね。
だけど転んで腰打って痛いんだけど……まあ、王宮ダンジョンを無事に抜けたから良しとするか。
私が立ち上がろうとすると手が差し出される。
無意識にその手を掴み私は立ち上がった。
「……大丈夫ですか……」
男の声の問いかけにも私は無意識に答える。
「すみません。ありがとうござ……」
そこまで言って私は自分に手を差し出して身体を立ち上がらせてくれた相手を見て絶句した。
銀髪に銀の瞳。夜の闇に浮かび上がるその月光のイケメン悪魔の姿。
「ひい! サタン!?」
そこにいたのは私が今夜騙すと決めてホシツキ宮殿の廊下にいるはずの今回のミッションの最大の敵のサタンだった。
王宮ダンジョンの終わりにラスボス遭遇って神様のいじわるー!!
「あ、あのね、サタン。こ、これには、訳があってね!」
ここでサタンにホシツキ宮殿に連れ帰られたら王宮ダンジョンをクリアした意味がない。
そもそもまだ目的地にも着いてないのにゲームオーバーは避けたい私は必死にサタンに言い訳を始める。
「そ、その、サタンを騙すつもりはなかったのよ。でもロゼッタの件を解決しないとクリスがいつまでも仕事に集中できないでしょ? そうするとこの国の有能な人材を失いかねないし、クリスの姉としてもクリスの幸せを考えないとでね…」
「……私もお供しますので……」
「サタンが行くのを反対する気持ちも…え? お供?」
「……はい……なので今後は隠し通路は使わないでください……」
「え? じゃあ、私と一緒に「天国の宴」に行ってくれるの?」
「……はい……一人で出歩かれる方が困るので……」
サタンは頷く。
やったわ! ラスボス倒したわ……って、サタンが折れてくれるならこの王宮ダンジョンを攻略する意味あったのかしら。
いえ、ここで深く考えたらこの物語の主人公は務まらないわ。
終わり良ければ総て良しでいかなきゃ!
「……ただし……この笛を持っていて助けが必要な時に吹いてください……」
サタンは紐の付いた小さな細長い笛を私に渡す。
笛で助けを呼ぶなんて災害で救助を呼ぶような感じね。
でもそれでサタンが仲間になってくれるならもうけもんだわ。
私は紐を輪っかにして首からかけてネックレスのようにして装着した。
「分かったわ。助けが必要な時はこの笛を吹くから」
「……馬も用意しておいたので、どうぞ……」
そこにはサタンの馬も待機している。
銀の悪魔を騙すためには私のレベルはまだ低かったみたいね。
でも騙すことはできなかったけど倒して仲間にできたんだからよく頑張ったって誰かに褒めて欲しいわ。
よく頑張りました
あんたじゃないわよ、神様!