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第245話 上の階段を選んでみました

『だからアリサは譲れない!』


 ブランとゼランの声が重なる。


 あ~はいはい、やっぱり最後はそうなるわよね。


 自分の思った通りの展開に隠し通路の中で私は小さく溜め息を吐く。

 散々、私のどこが好きと言い合ったブランとゼランは結局最後は最初と同じくお互いに私のことを譲れないと言ったのだ。


 まさかこのままケンカとかしないでしょうね?

 口だけのケンカならいいけど剣で斬り合いとかマジでやめてよ!

 そんなこと二人の王子にさせたってバレたら私は後世に残る「悪役令嬢」になるからさ!


 ちょっと不安になって耳を澄ませるが二人の争う音は聞こえて来ない。


「まあ、アリサがどちらを選んでも恨むなよ、ゼラン」


「もちろんだ。ブランも文句言うなよ。それより良い酒が手に入ったから二人で飲もう」


「そうか。それならいただくか」


 どうやらこれからブランとゼランは二人でお酒を楽しむらしい。

 二人のことは気になるが私は自分が今すべきことを思い出す。


 そうだ。ここで時間を使う訳にはいかないわね。

 通路を戻って隠し通路の出口見つけないと。


 神様が教えてくれない以上、出口を自力で見つけなければならない。

 私は最初の選択肢で奥宮に来てしまったのでその通路を戻ろうとしてふと思った。


 ちょっと待って。こういうダンジョンって行けそうにない方に行くほど目的地に着けるんじゃなかったっけ?


 子供の頃やっていたテレビゲームの攻略方法を思い出しながら考える。


 ここは戻るよりさらに奥に進む方が正解かも。

 でもそれが更なる「罠」ってこともあるし……クッ! マジで誰か「攻略本」貸してくれないかしら! この王宮ダンジョンの地図だけでいいからさ!


 そんなことを心で叫んでも「攻略本」など現れない。


 ここは異世界感の足りない異世界だもんね。

 魔法で都合よく「攻略本」なんか出て来ないわよね。っていうか魔法あるならこんな王宮ダンジョンに入らないで転移魔法で王宮脱出するし!


 いいわ!ここは私の「勘」でいくわ。


 私は自分の勘を信じて隠し通路をさらに奥へと進んだ。

 すると隠し通路に階段が現れる。上に行く階段と下に行く階段に分かれているようだ。


 今度は上か下かの選択か。

 普通に考えたら上に登ったら建物の上の方に行くだろうから出口があるとは考えにくいわよね。


 すると下に向かう階段の方か。

 いえ、これもそう思わせる作戦なのかも。


 私は二つの階段を睨みつけて「う~ん」と唸る。





 どっちでもいいから早く進め





 呑気な声が聞こえたような気もしたが私は無視して決断する。


 よし! ここは逆転の発想で上に行くわ!

 迷えば楽しいだろって思ってる神様の思い通りにさせないんだから!


 私は勇んで階段を上る。

 そして進んで行くとまた誰かの声が聞こえた。


 ん? また誰かの部屋に来ちゃったのかしら?


 物音を立てないようにして私は耳を澄ませる。


「あなた。寝る前のお酒をどうぞ」


「ああ。ありがとう、グリーン」


 この声はグリーン王妃とブラウン国王だわ!

 ここって国王夫妻の部屋なの!?


 私は驚いたが声を出さないように自分の口を手で押えた。


 どうしよう。国王夫妻の部屋がある場所まで来て潜んでるの見つかったら刺客と思われて処刑されたりしない!?


 ブランとゼランは私のことを庇ってくれるかもしれないがブラウン国王はこの国の絶対権力者だ。

 ブラウン国王に「処刑命令」されたら私の首など簡単に吹っ飛ぶだろう。


 私の脳裏に自分の首と胴体が切り離された光景が浮かぶ。


 冗談やめてよ! 私はモチ大福屋のイチゴ大福食べるまで死ぬ訳にはいかないんだから!


 百歩譲ってモチ大福屋のイチゴ大福じゃなくてもイチゴ大福を食べることを私は諦めない。

 この異世界にだってどこかにイチゴ大福があるはず。この国にはなくともこの世界の隅々まで探した訳じゃないのだから。


 人間、何事も諦めないことが大事なのだ。

 諦めた時点で全てが終わる。どんな人生のラストシーンが待っていようが最後まで諦めてはいけない。


 ここは気付かれないうちに戻った方がいいかも。


 私はその場からそっと離れようとした。


「それで今日の公務は問題なく終わったのですか?」


「ああ。アリサ首席総務事務官の今後の取り扱いについて決めてきた」


 ブラウン国王の声に通路を戻ろうとしていた私の身体の動きが止まる。


 え? 私の今後の取り扱いを決めたってどういうこと?

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