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第241話 私が防波堤になります

「ロゼッタさんの意思だけで離婚できないのは分かったわ」


 貴族特有の婚姻事情で少なくともすぐに離婚ができないことは理解できる。

 将来その法律もどうにかしたいところだがエディの言うように「貴族の爵位継承」の問題が絡むならすぐに法律を変えることはできないだろう。


 ホント、男側の許可なくして離婚できないとかって今の日本だったら大問題よね。

 でもここは日本じゃないから別の解決方法を考えるか。


「まず確認したいんだけどロゼッタさんは旦那が見つかって離婚に応じてくれるなら離婚したいという考えに間違いはないのね?」


 離婚はその人の生涯において大きな出来事だ。

 別れた後の生活費などの問題もあるしロゼッタには子供がいるからその子供をどちらが引き取るかといった問題もあるだろう。


 でも一番重要なのは「離婚する」という本人の意思。

 人生は離婚で全てが終わる訳ではない。


 私の周囲にも離婚歴を持っていても自分の人生を謳歌していた人はいた。

 生活は大変だったとしてもその人が「幸せ」であることが大切なのだ。


「はい。私は夫と離婚したいと思っています。今の私にはエディもいるので…」


 ロゼッタは真剣な表情で答える。


「私もロゼッタを幸せにするつもりです。彼女に苦労はさせません」


 エディも真剣にロゼッタのことを想っているようだ。


 エディは仕事もしっかりしているからロゼッタが旦那と離婚した後にエディと再婚すれば生活は保障されるだろう。

 それならば当面の目標は行方不明の旦那を探し出して離婚を認めさせればいい。


 キャバクラに通って妻子を捨てるなんて許されないもんね。


「それなら私も協力するからロゼッタさんの旦那を見つけましょう。そして離婚を認めさせればいいわ。旦那の名前はなんていうの?」


「え! アリサ首席総務事務官様が自らですか? しかしそんなご迷惑をかける訳には…」


「平気よ、エディ。これは乗り掛かった舟だから。それにロゼッタさんはシャンデリアの叔母さんなんでしょ? シャンデリアは私の弟のクリスと将来結婚する可能性が高いの。そうなれば私とロゼッタさんは他人ではなくなるわ」


「は、はぁ…」


 そうよ。デリアの二股疑惑は解決したけどロゼッタの問題がクリスとデリアの将来に全く関係ないとは言えない。

 ロゼッタの旦那がキャバクラ通いしてお金を使いきって借金とかしてたらロゼッタだけでなくその実家のクレイ男爵家も巻き込まれるかもしれない。


 クレイ男爵家はデリアの実家でもあるからクレイ男爵家が借金を抱えることになったら一大事だ。

 クリスはデリアの実家に借金があってもデリアと結婚すると言うだろう。


 そしてその話がワイン伯爵の耳に入ろうものならさらに大変なことになる。

 人の良さが服を着ているとしか思えないワイン伯爵はクレイ男爵家に借金があるとなったら自分が支払うとか言い出すに決まっている。


 ワイン伯爵の人の良さは天下一品なのだから。悲しいほどに。


 ワイン伯爵家は領主貴族で私の助言で領地改革を進めて収入も増えてきたとはいえ元々裕福な家ではなかったことは私が一番知っている。

 それにあのワイン伯爵のことだから自分自身が借金をしてまでもデリアを救おうとするに違いない。


 そんなことはさせられないわ。

 ここは先手を打って私が防波堤になってワイン伯爵家とクレイ男爵家を護らないと!


「それでロゼッタさんの旦那の名前は?」


「えっと、ビート・ハニー男爵です。特徴は金髪で茶の瞳で年齢は37歳。右手に火傷の痕があるそうです」


 右手に火傷の痕か。手掛かりにはなりそうね。


「それで最後に目撃されたのが『天国の宴』ってキャバ…じゃない酒場なのね?」


「はい、そうです。『天国の宴』は王都の端にある酒場通りにいう場所にあります」


 とりあえずハニー男爵が最後に目撃された「天国の宴」というキャバクラに行ってみるか。


「サタン。天国の宴まで連れて行ってちょうだい」


「……ダメです……」


「え? なんで?」


 私はサタンに反対されるとは思わなかったので少し戸惑う。


「……天国の宴の経営者はマフィア組織のボスです…危険過ぎます……」


 え? この国にもマフィアがいるの?

 それなら確かに危険かもしれないわね。でも他に手掛かりはないし…


「とりあえず危険でも手掛かりはそのお店しかないんだから行ってみるわ」


「……ダメです……」


 サタンの意思は固い。


 う~ん、サタンを味方にできないのは辛いわねえ。

 でももしかして女一人の方が潜入してもバレないかも。


 なんとか「天国の宴」に行くことはできないかしら?


 そこで私にある考えが浮かんだ。


 そうだ! この手でいこう!


「分かったわ、サタン。別の方法でハニー男爵を探してみることにするから今日は王宮に帰るわ」


「……分かりました……」


「エディ、ロゼッタさん。なんとか私もハニー男爵を見つける方法を考えるからもしハニー男爵が見つかったら連絡するわね」


「はい。分かりました」


 私はエディたちに別れを告げてサタンと王宮に戻った。


 とりあえず今夜は時間がない。

 作戦決行は明日の夜ね。


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