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第240話 すぐには離婚できません

「ロゼッタさんの旦那さんが行方不明ってどういうことなの?」


 泣いていて話ができない状態のロゼッタの代わりにエディが私に説明する。


「ロゼッタは確かに今現在は既婚者です。しかしロゼッタの旦那は半年ほど前に家を出ていなくなりました」


「どこに行ったか分からないの?」


「私も捜しているのですが最後に『天国の宴』の店で目撃されたのを最後に足取りが途絶えてしまっていてまだ見つかっていません」


 天国の宴? なんか怪しそうな店の名前ね。


「天国の宴ってどんなお店なの?」


「そ、それは…」


 エディは泣いているロゼッタを見ながら言い淀む。

 するとロゼッタが涙をハンカチで拭きながら震えた声で答えた。


「エディ…真実を全てお話してちょうだい。私もこれ以上デリアにもあなたにも迷惑をかけたくないし…」


 ロゼッタの言葉を聞いてエディは小さく溜め息を吐いて話し出す。


「天国の宴とは女性がいる酒場で娼館とは違うのですがかなりお金のかかる酒場なんです」


 つまりキャバクラみたいな所ってことかな。

 その店での目撃情報が最後か。


「ロゼッタの旦那は家にあるお金の全てを持って出て行ってしまったんです。ロゼッタは幼い子供と共に生活に困り実家のクレイ男爵家に戻りました」


 なるほど家の有り金全部持ってキャバクラに行ったってことか。

 それはロゼッタに同情するわね。


「それでロゼッタさんがクレイ男爵家に現在世話になっていることは分かったわ。でもエディとロゼッタさんはいつから恋人なの?」


 ロゼッタが旦那が行方不明になる前からエディと恋人同士ならこれは完全なロゼッタの不倫となる。

 もしそうならロゼッタの旦那だけが悪いとは限らない。


 妻に不倫されたショックでキャバクラ通いになったってことも考えられるもんね。


「私はロゼッタが旦那の失踪届けを役所に出しに行く時に体調が悪くなっていたところに居合わせて彼女を介抱して知り合いになりました。そして彼女から旦那の話を聞いたのです」


「ということはエディとロゼッタさんが恋人になったのは最近なの?」


「はい。最初は彼女の幸せのために早く旦那を見つけてあげようと思って手を貸していたのですが段々と彼女に惹かれていって二か月前に告白して彼女と付き合い始めたんです」


 う~ん、ロゼッタの力になろうとするうちに好きになるエディの気持ちは分からないでもないわね。

 でもエディの気持ちを受け入れたならロゼッタは行方不明になった旦那と別れれば良かったのに。


「それならロゼッタさんが旦那と離婚すればいいんじゃないの? 離婚したらこんな所でこそこそ会うこともないでしょ?」


 するとエディとロゼッタは顔を見合わせて困惑した表情になる。


「この国では貴族の離婚は男性側が認めなければできません。もし男性側が行方不明になったりして意思確認ができない状態でも失踪届けを提出してから12年経過しないと離婚はできないのです」


「はあ!? 12年も離婚ができないの!?」


 私は初めて知った事実に驚きの声を上げた。


 ちょっと待ってよ! 日本だって行方不明になって7年も経てば死亡が認められるんじゃなかったっけ?

 12年も待たないとなんて長過ぎじゃないの!?

 しかも離婚するのに男性側が認めないとなんて三行半じゃないんだからさ!


「本当に12年経たないとロゼッタさんの意思だけでは離婚できないの?」


「はい。平民はそんなことはないんですがロゼッタの旦那は一応男爵なので貴族の婚姻の法律が適用されるんです」


「なぜ貴族だけ離婚するのにそんな縛りがあるの?」


「それはおそらく爵位の継承問題があるからだと思います。爵位の継承は成人していることが条件になりますので残された子供が12歳以上になって爵位の継承を可能にするためなのではないかと」


 なるほど、貴族特有の婚姻条件ってことか。

 ということは私もうっかりブランやゼランと結婚した後に夫になった者が行方不明になったら12年は離婚できないってことか。


 いや、待って! もしかして「王族」特有の条件があったりして。


「ねえ、エディ。その12年っていうのは王族にも適用されるの?」


「いえ、王族は男性の死亡確認ができない限り行方不明という理由では何年経っても離婚はできないはずです」


 ハハ…ますますブランとゼランとの結婚は慎重に決めないとだわ。

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