第234話 広い心を持ってください
私はペンで婚約証明書にサインをする。
う~ん、これで私はブランの正式な婚約者か。
ああ、でもゼランの婚約者でもあるのよね。
こんな超絶イケメンと婚約するなんて夢にも思わなかったわ。
イケメン好きの私は結婚するなら絶対イケメンとと思ってはいたが本当に超絶イケメンと結婚することになると思うとなんか不思議な気がする。
まあ、まだ婚約だしブランとゼランのどちらと結婚するかはまだ分からないけど。
でもこの二人は仮にもこのダイアモンド王国の王子だ。
超絶イケメンの王子と異世界で恋仲になって結婚なんて小説ではありがちだけどこの世界のご都合主義の神様がそんな簡単に私にハッピーエンドを与えてくれるかしら。
なんかまた落とし穴があるんじゃない!?
そんな不安にもなるが現実問題としてブランとゼランに婚約者がいないと不都合なことは事実。
この国のために表向きは私が二人の婚約者として存在しないといけない。
「サインしましたよ。ブラン様、ゼラン様」
私がサインした紙を渡すとブランもゼランもニコリと笑顔になる。
「これで私の婚約者となったね。アリサ」
「私の婚約者でもあることを忘れるなよ。ブラン」
ブランの言葉にゼランが反応する。
はいはい、私は二人の婚約者ですよ。
「私はお二人の婚約者ですからご安心ください。でもあくまで「仮」の婚約者ですからね?」
一応、私は二人に念を押しておく。
「分かっているさ。アリサの気持ちは尊重するよ」
「私もアリサに無理強いはしないさ」
超絶イケメンビームを発しながらブランとゼランは満足そうな顔になる。
なんとなくこの二人にハメられた気がしないでもないわね。
「ワイン伯爵にも正式に私たちがアリサとリサと婚約をしたことは伝えておくよ」
「そうだね。さっそくスミスにでもワイン伯爵領に行かせるかな」
スミスの名前が出たところで私はふと気付く。
そうだ! スミスといえば特殊部隊の人間だったわよね。
スミスに聞けばエディという男性が特殊部隊にいるか分かるかも。
「あの、ブラン様。スミスをワイン伯爵領に行かせるなら私も個人的にスミスに頼みたいことがあるのですが特殊部隊の人たちって普段はどこにいるのか教えてくれませんか?」
「スミスたちがいる所かい? それなら奥宮の近くの特殊部隊棟という場所にいるよ」
特殊部隊棟か。
そんなところが奥宮の近くにあったのね。
まあ、王族の身辺警護するなら王族の側にいないと不便だもんね。
「スミスに用事ならここにスミスを呼び出すが」
「いえ、個人的なお願いなんで私の方からスミスに会いに行きます」
すると明らかにブランとゼランが渋い顔になる。
あれ? どうしたんだろう?
「まさかとは思うがスミスに特別な感情を持ってたりしないだろうね? アリサ」
「は?」
スミスに特別な感情?
それって私がスミスが好きだとかいうこと?
そんなわけないでしょ!
それなら「仮」でもあなたたちと婚約なんてしないわよ!
「いえ、そんなことはありません。それに今はもう私はお二人の婚約者じゃないですか」
私はお得意の笑顔を見せる。
「確かにそうだな。それならかまわないか」
「そうだね。アリサは正式に私たちの婚約者だし」
ブランとゼランは渋々だが納得してくれた。
まったくいちいち私が会う男性に威嚇してたらこの先どうなるのよ。
もう少し広い心を持てないのかしら。
この二人にエディって男性を探しているなんてバレたら血の雨が降りそうよね。
絶対今度はそのエディに気があるのかなんて言うに決まってるもん。
ここは内密にエディを探さないとだわ。