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第232話 初恋をこじらせると大変です

 クリスの言葉に驚いた私の脳裏にデリアに会って話をした時のことが浮かぶ。


 デリアは私と話した時はクリスのことを好きって言ってた気がしたけど心変わりをしたってこと?

 いえ、まずはもう少しクリスの話を聞くべきね。


「クリス。デリアが年上の男性と仲良くしてたってどこでその二人を見たの?」


「ぐすん……今日は仕事が休みだったので王都に買い物に出かけたんです」


 涙を拭きながらクリスは私に話し始める。


 クリスも王都に出かけたのね。


「そして王都にある宝石店を探していたらある宝石店の前にデリアと20代半ばくらいの男性がいるのを見かけました……」


「宝石店? 宝石を買いに行ったの?」


「はい。今度の私の誕生日パーティーでデリアに身に着けて欲しいと思ってネックレスを買いに行こうと思ったんです」


 なるほどね。誕生日パーティーではデリアはクリスと正式にお付き合いをしていると皆に紹介する予定だからデリアに贈り物をしたかったのね。

 宝石のネックレスを贈り物にしようなんてクリスは12歳でもやはり貴族ってことか。


 いえ、今はそんなことはどうでもいいわね。


「それで? デリアはその男性と仲良くしてたの?」


「……はい。デリアたちは私に気付いていませんでした。するとその男性がデリアに小さな箱を渡して言った言葉が聞こえてきて……」


 その時のことを思い出したのか再びクリスは涙を瞳に溜めながら俯いた。


「その男性は何をデリアに言っていたの?」


「ぐすん…その男性はデリアに『デリアに似合う髪飾りがあって良かった。いつも俺に優しくしてくれるお礼だよ』って言っててデリアも『私の方こそいつもありがとう。あなたがいてくれてとても嬉しいわ』って笑顔で答えていたんです」


 その男性はデリアに髪飾りを贈ってお礼を言っていたってことか。

 でも今の会話だとデリアとその男性が恋人かは微妙な感じね。


 デリアは男性に「好き」という言葉は使っていないけど「あなたがいてくれて嬉しい」と言ったなら親密な関係ではあると思うけど。

 でもあのデリアが二股とかあんまり考えられないけどな。


「デリアにはその男性が誰か聞かなかったの?」


「……はい。そのまま二人は一緒にどこかに行ってしまったので」


「それならまだその男性がデリアと恋人か分からないじゃない。デリアに確かめてみたら?」


「いえ、それは怖くてできません……もし本当にデリアの恋人だったらと思うと……」


 クリスの顔がさらに暗くなる。


 確かにクリスの気持ちは分かるわね。

 もしデリアの本命がその男性だったらフラれるのはクリスだもんね。


「デリアはきっと私よりも年上の男性が好きに違いありません……」


 再びクリスの瞳から涙が零れる。


 う~ん、年上好きとかいるのは事実だけどそれなら最初からクリスを相手にしないと思うけどな。

 クリスに気がないのに付き合うメリットがデリアにあれば別だけど……。


 そこで私は気付く。


 もしかしてクリスと結婚して伯爵夫人の地位を狙っているとか?

 クリスはワイン伯爵家の跡継ぎだしワイン伯爵家は腐っても領主貴族に違いないもんね。


 確かにそれならこの身分制度のある世界ではありがちな話よね。

 でもあの純情そうなデリアが身分目当てというのはあんまり考えられないけど。


 悩んでても仕方ないわね。

 よし!ここは私が協力してあげるか。


「じゃあ、私がそれとなくデリアとその男性のことを調べてみるからその男性の特徴を教えてちょうだい」


「あ、はい。髪は茶髪で瞳も茶色でした。背は高くて……一番の特徴はその男性は片目に眼帯をつけていました」


 片目に眼帯ね。

 目をケガしているのかな。


「名前とかは分からないの?」


「えっと……確かデリアはその男性をエディさんと呼んでいました。それに男性の服装は王国軍の騎士服を着ていたので王国軍の騎士をしてるのかもしれません」


 王国軍の騎士なら王宮に出入りしていてデリアとも出会った可能性はあるわね。

 それに騎士服だったなら一般兵とは違うからもしかしたら身分の高い人物かもしれないわ。


 あの手紙を運んでくれたスミスだって子爵だったし。

 スミスはブランたちが率いる特殊部隊の人間だったはず。


 そしたらその特殊部隊の人間とも考えられるわね。

 名前もエディって分かってるならそんなにその男性を特定するのに時間はかからないかも。


「とにかく真実が分かるまでクリスも落ち着いて対応した方がいいわよ。感情に身を任せてデリアに別れるなんて言ったら後悔するのはクリスかもしれないんだから」


「……はい……分かりました。真実が分かるまでなるべく普通に過ごします」


 クリスも私に話して少しスッキリしたのかいつもの落ち着いた態度に戻っていた。


「ではアリサ。私は部屋に戻りますので。アリサに迷惑をかけてすみません」


「別にいいわよ。私はクリスの姉だもの。弟のクリスの為なら協力するのは当たり前よ」


 私がこの世界に来てから一番私を助けてくれたのはクリスだろう。

 クリスがワイン伯爵家の庭で倒れている私を救ってくれたんだもんね。


 あの時にクリスに助けられたから今の私がいると言っても過言じゃないし。

 命の恩人でもあるイケメン弟の恋のために一肌脱いであげようじゃない。


 それに初恋をこじらせてこれから先クリスが女性不信になって将来結婚しないのも困るわ。

 イケメンの遺伝子を絶えさせたら人類の宝を失うのと同じよ!


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