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第231話 クリスが泣いてしまいました

「ふう、少し落ち着いたわね」


 ようやくホシツキ宮殿に帰り私は一息つく。


 ああ、せっかくの休日でイリナとも一緒に楽しめたのにグリーン王妃とキャサリンの相手で疲れたわ。

 今日は早く休もうかな。


 私がそう思っていると扉を叩く音が聞こえた。


 誰だろう?こんな遅くに来るなんて。


 時間は既に21時だ。

 こんな時間にホシツキ宮殿を訪ねてくる者は珍しい。


 まさか、ブランが婚約したからって夜這いに来たということはないでしょうね。


 あのブランが私の気持ちを無視して私を襲うことはあまり考えられないがブランたちは私の寝室にある隠し通路のことを黙っていたという事実がある。

 私と結婚するためならブランやゼランが手段を選ばない可能性も考えないといけない。


 だがそこで私は気付く。


 そうだ、廊下にはいつも通りにサタンがいるはず。

 こんな時間にブランやゼランが来てもサタンがおとなしく彼らを私の部屋に入れるとは考えにくい。


 だって、サタンは隠し通路からブランとゼランが入って来れないように細工をして私を護っていてくれたぐらいだもんね。


 そうなるとサタンが夜でも私の部屋に入っても問題ない相手が来たということだ。

 私は少し安心して応える。


「はい。どうぞ」


 私は訪問者に向かって入室許可の声をかけた。

 扉が開く。


 そこにはクリスが立っていた。


 なんだ、クリスか。

 それならサタンが許可を出すはずね。


 クリスとは血が繋がっていないとはいえ私の弟。

 私と過ちを犯すような相手ではない。

 だが、クリスの顔をよく見るとなんだか顔色が悪い。


 どうしたのかしら?体調でも悪いのかな?


「どうかしたの? クリス。入っていいわよ」


 クリスは黙って私の部屋に入ってきた。

 ソファに座る私の前までやって来る。


「アリサ……」


 クリスは消え入りそうな弱々しい声で私の名前を呼ぶ。


 何かあったのかな?

 こんな時間に私の部屋に来るぐらいだもんね。

 悩み事があるなら相談に乗ってあげないとよね。


「とにかく座って。クリス」


「……はい……」


 私の向かいのソファにクリスは力なく座った。


 マジでこんな暗い顔のクリスって初めてみたわ。


「クリス。顔色が悪いわよ。体調が悪いの?」


 クリスは首を横に振る。


「体調に問題ないなら何かあったの?」


 私と同じく総務事務省で働いているクリスは頼もしい存在ではあるけれどやはりまだ12歳の少年だ。

 仕事や生活で悩みがあるなら私も力を貸して解決してあげたい。


「アリサ……」


「ん? なに?」


「私は……私はどうしてまだ12歳なのでしょうか!?」


「は?」


 私の顔を見つめるクリスの顔は真剣だ。


 なぜ12歳かと言われてもその年齢なのだから仕方ないことよね。

 まあ、もうすぐで13歳だけど……。


 いえ、このクリスの感じでは12歳ってことが本題ではないわね。

 別の意味があるんだわ。


「クリスが12歳なのは当たり前でしょ? でももうすぐ13歳だし。何か年齢のことで誰かに悪口でも言われたの?」


 年若いクリスに命令された文官から悪口でも言われたのかと思いそう聞いてみる。


「いえ……デリアが、デリアが……」


 デリアってクリスの恋人のシャンデリアのことよね?

 確かデリアは年齢はクリスより一つ年上だったけど。


 それが何か問題あったのかな?

 別に女の方が年上だって恋愛には関係ないと思うけど……。


 それともこのダイアモンド王国では女が年上だと結婚できないとかいう変な法律でもあるのかしら?


「デリアに何か年齢のこと言われたの?」


「いえ……ううっ!!」


 クリスの青い瞳から大粒の涙が零れた。


 え!? クリスが泣くなんていったい何があったの!?


「ど、どうしたの!? クリス。デリアが年上だと結婚できない理由とかあるの?」


「ぐすん……いえ、そうではありません……でも、でも私は見てしまったんです!」


「見たって何を?」


「デ、デリアが年上の男性と仲良くしている姿を!」


 クリスは涙を零しながら叫ぶように言った。


 え? まさか、あのデリアが二股かけてたの!?


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