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第229話 私は王族と同じ扱いのようです

 甘いケーキを食べながらイリナとおしゃべりした私は久しぶりに楽しい時間を過ごした。


 イリナは私の出身国である遠い島国の話を聞いてきたが私は日本のことについては「ジパング大陸」の本を読んだ後だったのでこの世界の人間が理解できる範囲内のことしか話さなかった。

 私の元の世界の文明を知るにはこの世界の人間にはまだ早過ぎると思ったからだ。


 きっとジパング大陸人もこんな気持ちだったのかな。

 便利なことが必ずしも「幸せ」であるとは限らないか。

 私も肝に銘じて行動しないとね。


 それでもやはり女友達と休日におしゃべりするのは楽しい時間だ。

 久しぶりにリフレッシュした気分で私はイリナとサタンと一緒に王宮に戻る。


 するとセーラからグリーン王妃から会いたいという連絡が来ていると言われた。

 私の脳裏にブランたちが私を双子にしてそれぞれの私と婚約するという話が蘇る。


 グリーン王妃が私に会いたいってきっとそのことね。

 でもブランたちはグリーン王妃には真実は伏せておくって言ってたから双子のフリをしないといけないわね。


 私は着替えてグリーン王妃の待つ国王宮殿へ向かう。

 グリーン王妃の私室に行くとグリーン王妃は笑顔で私を迎えてくれた。


「お待たせしてすみませんでした。グリーン王妃様」


「いいのよ。休日に呼び出してごめんなさいね。あまりにも嬉しい話を息子たちから聞いたからアリサと話をしたくなってね」


 グリーン王妃は満面の笑顔で私を見る。


 うっ! そんな笑顔で迎えられると騙してるこっちが極悪人に感じるわ。


「まあ、ここに座ってちょうだい」


「はい」


 私は言われた通りにグリーン王妃の前のソファに座る。


「ブラントとゼラントから聞いたのだけど、アリサにはリサという双子の妹がいるって本当なの?」


 やっぱりその話ね。


「はい。今まで黙っていて申し訳ありません。妹のリサは身体が弱くてワイン伯爵家から出ることができずゼラント王子様とお付き合いが続けられるか不安でしたので今までリサのことは秘密にしておりました」


 私は予めブランとゼランと打ち合わせしておいた通りに説明した。


「そうなのね。私も息子たちからそう聞いてるわ。リサの身体が弱いことを考慮して今までその存在を私に黙っていたと」


「はい。申し訳ありませんでした」


 私はグリーン王妃に頭を下げる。


「別に謝ることはないわ。そう取り決めたのは息子たちだと聞いてるから。妹のリサが身体が弱いのは気になるところではあるけれど今回ゼラントと婚約までできたのだから以前よりは良くなったのでしょう?」


「はい。多少は回復したと聞いてますがまだワイン伯爵家を出て王都に来ることは難しいのが現状です」


 っていうか、本当にリサが王都に来たら私がびっくりするわよ。


 私は淡々とグリーン王妃に答える。


「それは仕方ないわね。でもいいわ。今回はアリサとブラントが婚約しただけでも嬉しいことだもの。アリサは首席総務事務官ができるぐらい身体が丈夫だからきっと立派な赤ちゃんが産めるわ。その日が楽しみよ」


 グリーン王妃はニコニコと笑顔で紅茶を飲む。


 いきなりもう赤ちゃんの話って。

 私はまだ婚約しただけなんだけどな。

 このままだと予想通りにすぐに結婚させられそうね。


「あの、グリーン王妃様。私とブラント王太子様は婚約はしましたがこの国が安定するまでは正式な結婚はまだしない予定なので……」


 私はやんわりとグリーン王妃にすぐには結婚しないと伝えてみる。


「ええ。ブラントからもそう聞いてるわ。でもアリサは優秀だもの。国の改革などすぐにできるでしょう。問題ないわ」


 いえ、問題あります。

 そんな簡単に国の改革ができるなら公務員に苦労はありません、王妃様。


「本当はブラントとゼラントの婚約を国を挙げてお祝いするところなんだけど息子たちだけでなくブラウンからも時期をみてからと言われてしまったからそれはしばらく我慢するわ」


 グリーン王妃は残念そうに溜息をつく。


 ブラウン国王は私が双子ではないと知ってるはずだ。

 ナイスフォローありがとうございます、ブラウン国王様。


「でも国民へのお披露目は無理でもアリサがブラントと婚約したことは既に王宮内には伝達してありますからアリサも王太子の婚約者としての勉強もきちんとするようにね」


「え? 王宮内には私とブラント王太子の婚約を知らせたのですか?」


「当たり前です。王太子の婚約者は王族と同じ扱いを受けるのだからアリサはもう王族の一人よ」


 グリーン王妃は真面目な顔でそう言い切った。


 王太子と婚約したからってもう王族扱いになるっていいのかな。

 しかも王太子の婚約者としての勉強って花嫁修業みたいなものよね。


 はあ、国の改革しながら花嫁修業もなんてけっこうしんどいんだけど。

 しかもまだブランと本当に結婚するか分からないのに。


「でも、グリーン王妃様。私は首席総務事務官としての仕事を辞めることはしませんので」


 私はこれだけは譲れないとグリーン王妃に宣言する。


「ええ。それは仕方ないことだと私も承知してます。この国の改革にはアリサの力が必要なのは分かっているもの。でもそれと同時にアリサは自分が王族と同じ立場だということを忘れずにね」


 グリーン王妃もそこは譲れないという態度だ。


 仕方ない。これもダイアモンド王国のためだと思ってブランの婚約者としての仕事も頑張ろう。

 それにしても私が本当に王太子妃になって本物のお姫様になったら美紀が爆笑すること間違いないわね。

 美紀の笑い声が聞こえるようだわ。


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