第227話 古代文明からの警告です
私はその『失われた幻の大陸ジパング』という本を手に取って中身を読んでみる。
「えっと、今から遥か昔に現在のダイアモンド王国の南には文明の栄えたジパングという大陸があった……」
う~ん、これって日本にいた頃の古代文明伝説のムー大陸とかと同じ感じかな。
私は先を読んでみる。
「ジパングに住む人々は金髪や銀髪で青い瞳や緑の瞳などの姿をしていた……」
これは黒髪に黒い瞳の日本人とは違うわね。
やはりこの「ジパング」とは日本ではないってことかな。
「ジパングでは天にまで届くような建物があり地面の下にも人々が暮らせるようになっていた……」
天に届く建物って高層ビルのことかな。
地下を利用しているってのも元の世界に近いわね。
「さらには遠くに行く時は高速で動く乗り物や空を自由に飛ぶ乗り物もあったと言われている……」
これは新幹線とか飛行機のことかな。
「だが高度な文明は幸せなことだけではなくその利権を争い「ジパング」の大陸の中で戦争が起こりさらには大きな災害が重なりジパング大陸は一夜にして海底に沈んだという……」
なんか最後は本当に有り得そうで怖い話ね。
「そして難を逃れた僅かなジパングの大陸の民は我らが住む大陸に辿り着き原始的な生活をしていた我らの祖先に文字や生活に必要な道具などの作り方を教えたとされる……」
なるほど。ジパング大陸の人たちはこの現存する大陸の人たちに文字とかを教えたのね。
このダイアモンド王国の古代語とされる言葉は元の世界の英語に近い。
ということはジパング大陸の人々の容姿のことも踏まえると「ジパング」とはいえ元の世界でのアメリカや欧州に近いものだったのかもしれないわね。
でもどういうことだろう?
この世界は完全に異世界ではなく日本のある元の世界と微妙に関係があるってことかな。
そう思えばこの「ご都合主義」だらけの微妙な異世界感にも納得できるような気がする。
古代に元の世界のような文明が存在しそれを元にしてこの大陸の国が発展してきたから今の姿の文明になったのかもしれない。
でも新幹線や飛行機を造る技術をこのジパング大陸人はなんでこの大陸の人々には教えなかったのかな。
そこまで教えてくれていたらもっと今よりも文明が発達していてもっと便利な元の世界に近い世界になったはずなのに。
だがそこまで考えて私はもう一度その本の文章を読み返した。
『だが高度な文明は幸せなことだけでなくその利権を争い戦争が起こった』
そうか。ジパング大陸の人々は高度な文明をそのまま伝えてこの大陸の人々まで戦争を起こして欲しくなかったのかもね。
この大陸でも戦はあるが元の世界のような大量破壊兵器までは存在しない。
それ故にまだこの世界では大陸中の人々がいなくなってしまうような戦はやろうと思ってもできないだろう。
ダイアモンド王国が三大国に攻められて滅びるのも大変な被害だが元の世界の大量破壊兵器があったらこの大陸を自国民さえ生きていけない不毛な大陸にすることができてしまう。
『同じ過ちを繰り返すな』
おそらくそれが「ジパング大陸」の生き残った人々の願いだったのだろう。
だからあえて全ての技術を教えなかったに違いない。
私も気を付けなければならない。
このダイアモンド王国を守るためとはいえ私の知識が後世で悪用されないようにこの世界に与える影響の未来を考えて行動しなければ。
私はそう思いながらその本を閉じた。
「アリサ様。掘り出し物の本はありましたか?」
イリナが私に聞いて来たので私は笑みを浮かべて答える。
「ええ。今の私にとても大切なことを教えてくれる本を見つけたわ」
「そうですか。それは良かったですね」
イリナは無邪気に笑う。
そうね。イリナたちが笑顔でいられる方法で改革をして『真の平和』を手に入れなければこの大陸も「ジパング大陸」と同じ道を歩んでしまう。
それだけはやってはいけないわ。
そうでしょ?神様。
なぜかこの時は神様の言葉を私は感じ取れなかった。
でもそれが神様の答えなのだと私は確信した。