第222話 ホラー映画みたいです
「オタクの教科の内容ってどんなものですか?」
「オタクは毎回テーマを決めてそのテーマについてみんなで研究するんです」
あ! そうか。オタク事務省でも研究者たちが日々いろんな研究をしてるもんね。
この国ではオタクと言うのは「研究者」やその分野の「専門的知識を持った人」ってことになるのね。
「ちなみにどんなテーマか決まっているんですか?」
「テーマは子供たちが班に分かれてそれぞれ自分たちでテーマを決めるので内容は自由です」
へえ、そうなのか。
なら、ギークは何のオタクのテーマで勉強したんだろ?
「ギークは何のテーマでオタクの授業の研究してたの?」
「ん?漫画だよ」
はいはい、期待通りのお答えありがとうございます。
でも漫画の研究ってただ漫画を読むだけなのかな?
漫画を読んで首席事務官になったならそれはすごいことよね。
「ギークは漫画の研究においては天才でしてね。私たち教師もギークの才能には驚かされました」
スタディ先生がそう笑って教えてくれる。
そんなこと言われたら余計に漫画の研究内容が気になるじゃない。
「ねえ、ギークの漫画の研究っていったいどんなことしてたの?」
「ん? そうだなあ。いろんな漫画を読んで現実に実現できないかとか実際に自分で漫画を参考に作ったりとかしたかな」
あ、そういう話は私もテレビか何かの番組で聞いたことあるわ。
子供の時に読んだ「便利な道具」とか「ロボット」が現実にあったらいいなって思ってそれを作るような技術者になった人がいるって。
私が日本にいた頃はもうその漫画の中の物に近い物が実際に発明されてたりしたものね。
スマホだってちょっと昔の世界だったら漫画の中に存在するだけの道具だもんなあ。
「あとは漫画を通じて国の歴史も学んだりしたからそれに興味を持って国の歴史を研究したりもして新しい歴史の発見をしたり」
歴史を題材にした漫画はよくあるけどそれに興味を持って新しい歴史を発見なんてギークってやっぱり「天才」なのかな。
「でも歴史の漫画って創作されてる部分とかない?」
「もちろんあるさ。だから本当の歴史を知りたくなるのさ」
なるほど。フィクションだって分かってるから真実を知りたくなるのね。
「ハハハ、ギークは興味を持ったオタクのテーマがあるとそれに没頭してしまってね。いやあ、あの時は怖かったなあ」
スタディ先生は昔を懐かしむような表情をしている。
怖かったって、何が怖かったんだろ?
「怖かったって何かあったんですか?」
「いえね。ギークは自分が納得するまで我々教師に質問攻めでして。授業が終わると教師室にやって来てその教科の先生を捕まえては質問攻めにするので我々教師の間では『授業が終わるとギークがやってくる』って言ってみんなで怖がっていたんですよ」
『ギークがやってくる』って、どこかのホラー映画じゃないんだからさ。
でも教師が恐れをなすぐらいギークは興味を持つと研究熱心だったのね。
それはなんか分かる気がするわ。
「でもそう思うと漫画って侮れない存在ね」
「前にも話したけど漫画は未知のことを僕に教えてくれたからね。その他にもオタクの授業でいろんなテーマをやったけどやっぱり一番奥深いのは漫画だよ」
「なるほどね。だから今も毎日漫画本を読んでるの?」
「そうだよ。漫画がある限り僕の「知りたい」って欲望は無くならないからね」
そうね。何かに興味を持って「知りたい」って思うのは大切なことだわ。
だって「知りたい」って思うから勉強したりするもんね。
勉強の初心は「知りたい」って思うことね。