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第220話 学校は何歳からですか

 馬車は王都の南側の方まで走る。

 すると一つの建物の前で馬車が止まった。


「着いたよ。アリサ」


 ギークがそう言って馬車を降りた。

 私も続けて馬車を降りて建物を見る。

 建物は二階建てで校庭があり広々としている。

 今は授業中なのか校庭には子供の姿はなかった。


「ギーク」


 そこへギークの名前を呼びながら一人の男性がやって来た。

 年齢は50歳ぐらいの男性だ。


「スタディ先生。久しぶり」


「久しぶりだね。ギーク。首席事務官の仕事はきちんとやっているのかい?」


「まあね。毎日漫画本読んでるよ」


「ハハハ、ギークらしいな」


 ちょっと! ギーク。

 そんな言い方したら首席事務官は漫画本読んでるのが仕事と思われるじゃない!


「そうだ。スタディ先生。今日は「学校」の視察でアリサを連れて来たんだ。アリサはこれでも首席総務事務官だよ。アリサ、このスタディ先生はこの学校の校長先生さ」


 ギークは私にスタディ先生を紹介してくれる。

 ギークの「これでも」って言葉が気にはなったが今更ギーク相手にそのくらいで文句を言っていても仕方ない。

 私はスタディ先生に挨拶をする。


「初めまして。アリサ・ホシツキ・ロゼ・ワインです。首席総務事務官をしています。本日は学校の視察にご協力いただいてありがとうございます」


「こちらこそ初めまして。アリサ首席総務事務官様。私はスタディ・オールです。この学校の校長をしています」


「あ、私のことはアリサとお呼びください」


「そうですか。ではアリサ様とお呼びいたします」


 スタディ先生はニコリと笑みを浮かべた。


「ではとりあえず校長室へどうぞ」


「ありがとうございます」


 私とギークはスタディ先生の案内で校長室に向かった。

 するとベルの音が聞こえて部屋から子供たちが飛び出して来た。


「スタディ先生。このベルの音は休憩時間を知らせるベルですか?」


「ええ、そうですよ。今から30分の休憩時間なのでみんな外に遊びに行くんでしょう」


 へえ、30分も休憩時間があったりするのか。

 ん? でもこの子供たちって何かけっこう幼いような気がするけど一年生かな?


 私たちとすれ違って校庭に向かう子供たちの身体はかなり小さい。


「あの、スタディ先生。あの子たちって随分と幼い気がするんですけど一年生とかですか?」


「ええ、そうですよ。この春に入学してきた子供たちです。まだ5歳だから身体は小さいですがみんな元気いっぱいの子供たちですよ」


 え? 5歳って言った?

 ちょっと待ってこの国の学校の一年生って5歳から入学するの!?


「あの、不勉強で申し訳ないんですが学校って5歳から入学するんですか?」


 私は驚いてスタディ先生に尋ねた。


「そうですよ。「学校」は満5歳を迎えた次の4月から入学できます」


 出たわ! この異世界の微妙な異世界感が。

 てっきり日本と同じ満6歳が一年生だと思ってたのに。

 まずは学校の制度を聞かないといけないわね。


「スタディ先生。学校は一年生から六年生までですか?」


「いいえ。一年生から七年生までです。ただ七年生は満12歳になると希望すればその時点での卒業も可能です」


「12歳になったら自分の都合で卒業できるんですか?」


「はい。12歳は大人ですからね。自分で勉学が身についていると思えば自分の判断で卒業できますし、卒業して「大学」へも入学できます」


 くっ! そういえばこの国では満12歳で大人だもんね。

 学校と言っても義務教育じゃないから12歳の大人になったら自分で進路を判断しろってことなのね。


 それにしても一年生から七年生まであるとは。

 この日本とは違う微妙な異世界感にはいつも悩ませられるわ。


「ギークも12歳で卒業したの?」


「ん? ああ、そうだよ。だって自分の興味あること以外勉強なんてしたくなかったし。親に言われて学校に通ってただけだしね」


 興味のあること以外勉強したくないってギークらしいわね。

 でもギークは普段漫画本を読んでる人間だけど勉学の知識で劣っているようには見えない。

 それはギークが天才だったからなのか、それともこの国の学校のレベルが高いのかも確認しないとね。


「ちなみにギークはどんな勉強が興味あったの?」


「う~ん、やっぱり「言語」かな。文字が読めないと漫画本や小説が読めないし」


 それはそうね。文字が読めないと本は読めないわね。

 でも「言語」って国語のことかしら。


「言語って「大陸共通語」のこと?」


「ん?ああ、普通の授業はそうだよ。僕の場合は外国の本も読みたかったから通常は「大学」で習う外国語もスタディ先生に特別に教えてもらったのさ」


「スタディ先生に?」


「スタディ先生はこの学校の校長先生でもあるけど言語の先生として生徒に教えてるからね」


 へえ、校長先生も生徒に教えてるのか。


「じゃあ、ギークって外国語も使えるの?」


「大陸共通語以外だったら三大国の独自の言葉も分かるよ」


 それなら三大国と交渉する機会があったらギークの力も借りれるわね。

 ギークって漫画本好きのオタクってイメージだけどギークを首席事務官にスカウトしたブランたちの観察眼は本物ってことね。


 そのために「マンガの宮」を用意してもそれだけの価値がギークにはありそうだわ。

 オタクとしての専門的知識も豊富だし、ギークも意外と侮れない存在ね。


「スタディ先生。学校で生徒に教えてる内容を聞いてもいいですか?」


「ええ。これがこの学校で使っている教科書です」


 スタディ先生はそう言って教科書を数冊私の前に置いた。

 教科書には一年生用から七年生用まである。

 私は一年生用から教科書に目を通してみた。


 あれ? 一年生用にしてはなんか内容が多いような。


 そう思って次々に教科書に目を通す。

 そして私は五年生用の教科書を見て驚いた。


「うそ! こんな内容を習ってるの!?」


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