表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/257

第218話 一人二役ですか

「あのブラン様。私は結婚する相手をブラン様かゼラン様か決めておりませんが……」


 私は恐る恐るブランの言葉に反論した。


「分かっている。アリサの気持ちは尊重するつもりだ。だが早急に婚約を決めなければ我々も困るのだ」


 う~ん、ブランたちの立場も分かるけど、私は絶対に恋愛結婚したいしなあ。

 それに私がブランと婚約してもゼランと婚約してもどちらか一人としか婚約できないから婚約できなかった方の相手は私以外の人と婚約しないとよねえ。

 どうするんだろ。


「私が仮に婚約してもどちらか一人としか婚約できませんからもう一人の方はどうするんですか?」


 私が疑問をぶつけてみるとブランもゼランもニコリと笑う。


 うっ! なんか嫌な予感が。


「もちろん我々もそれは分かっている。私たちは共に王位継承権が第一位の者だ。二人ともに婚約者がいないと外国からの縁談を断る理由ができない」


「ではどうするのですか?」


「アリサが一人しかいないならアリサを二人にすればいい」


「は?」


 私を二人にするってどういうこと?

 まさか剣で真っ二つとかじゃないでしょうね。

 そんなゾンビ顔負けの手段ならお断りだわ。


「どういう意味ですか?私を二人にするって?」


「アリサは異国から来てワイン伯爵家の養女となったんだろ?」


「はい」


 ブランの言葉に私は頷く。


「ならばその時にワイン伯爵が養女にした娘が二人いたことにすればいい」


「え? 二人ですか?」


「そうだ。アリサにもう一人リサという双子の妹がいたことにするんだ。だから私と婚約するのは姉のアリサでゼランと婚約するのは妹のリサの方だ」


 はあ!? 私を双子にするの?

 一人二役しろってこと!?


「それだとバレませんか?そもそもワイン伯爵領では私はアリサという一人として存在していたわけですし」


「だから妹のリサの方は身体が弱く滅多なことではワイン伯爵家から出なかったことにすればいい。それに双子ならアリサの姿が見た者が実はリサだったということにすればアリサに妹のリサがいたように偽装しても大丈夫だ」


「身体の弱い妹のリサですか。そううまくいくでしょうか?」


「ワイン伯爵家に養女がいるのをみんなが気付いたのは私やゼランがその伯爵令嬢に婚約を申し込んだからだ。それならその伯爵令嬢が二人いたとしてその二人に婚約を申し込んだとすれば一人の女性を私たちが取り合いをしているという噂も払拭できる」


 確かにそうかもしれないけどさ。

 私に一人二役なんか務まるのかな。


「それともアリサは私たちが他の女性と婚約した方がいいと思っているのかい?」


「っ!」


 ゼランの言葉に私は言葉を詰まらせた。


 そうね。まだブランとゼランのどちらと結婚するか決めていないとはいえ、こんな超絶イケメンの男を誰かに渡すのは惜しいわ。


 美紀が聞いたら「だからあなたはイケメンに弱すぎるのよ」って呆れそうだけど人生で超絶イケメンと結婚できる機会を失うのはイチゴ大福を食べられない悲しさの次に悲しいことに間違いない。


「そうですね。お二人が他の女性と婚約されたら少し寂しい気分がします」


 私の言葉にブランもゼランも満足そうな笑みを浮かべる。


 仕方ない。なんとか一人二役をやってみるか。

 でも私とブランが婚約してゼランと妹のリサが婚約するなら私とリサが同時に姿を現すことになったらどうするんだろ?


「あの、でも私とリサが同時に姿を現すことになったらどうするんですか?」


「そんなことはないさ。だってリサは病弱だからワイン伯爵家からは出ないからね」


 ああ、そうか。だからリサは病弱なのか。


 そして私は他の疑問も聞いてみた。


「それなら私の婚約者はブラン様ということになりますがゼラン様はそれでいいんですか?」


 ブランとゼランは私を取り合っているから私がブランの婚約者として世間に広まってしまったらゼランは不機嫌にならないだろうか。

 二人が争ったりしたらそれはそれで国として大変なことになる。


「私は大丈夫だよ。アリサとイチャイチャしたくなったら私がブランの代わりをすればいいだけだし」


 私とイチャイチャって。いえ、問題はそこじゃないわね。

 よく考えたらブランとゼランは私と違い二人で一人の「ブラント王太子」を演じることができるんだったわ。

 それなら仮にゼランと私が一緒にいても一緒にいたのはブランだったってことにもできるってことか。


 一人二役の私と二人一役のブランとゼランって頭が混乱しそうだけどブランとゼランをキャサリンやカテリーナと再び婚約させるのは避けたい。

 私の気持ちもあるがブランとゼランの区別もつかないようなあの二人が相手ではブランとゼランが可哀想だ。


「分かりました。私もこの国やお二人のために婚約をしますが私がお二人のどちらかと結婚を決める時間は与えてくれるんですよね?」


 婚約したら速攻結婚式突入の事態にならないように私は釘を刺しておく。


「もちろんだ。アリサは私と婚約はするがアリサの気持ちが私たちのどちらかに決まるまで正式な結婚はしない。もしアリサがゼランを選ぶなら私はアリサと婚約解消するつもりだ。その時はアリサはリサとしてゼランと結婚すればいい」


 一応私にも婚約破棄の権利をくれるってことね。


「でも結局私は一人の方としか結婚できませんがその場合はもう一人のアリサやリサはどうなるんですか?」


「アリサがアリサとして生きるならリサは病気で死んでもらう。アリサがリサとして生きるならアリサに死んでもらうだけだ」


 ハハ、どちらにせよ、もう一人の私は死ぬってことか。

 それもなんか複雑な気分だわ。


「大丈夫だよ、アリサ。人を一人始末するぐらい私たちは慣れているから」


 ゼランはそう言ってニコリと笑みを浮かべた。


 いや、それはそれで怖いから笑顔で言わないでよ!

 本当に私が殺される気分になるじゃない!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ