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第217話 私の婚約が決まりそうです

「ねえ、ジル。明日とかちょっと王都内の「学校」に出張していいかな?」


 私は総務事務省に出勤してジルに尋ねた。


「はい。特に問題はありません」


「そう。なら出張するから留守の間のことはよろしくね」


「はい。承知しました」


 さてっと。とりあえず出張の準備はいいわね。

 出張するなら今日の仕事は溜めないで頑張って決裁をしないと。


 私の普段の仕事は書類を見て内容を承認して決裁する作業が多い。

 まあ、管理職ってのは自分で資料を作るよりも事業を決定する仕事が多いのだから首席総務事務官の私がそんな仕事が多いのは当たり前だ。

 この決裁の仕事が滞ってしまうと事業がストップしてしまう。


 だから出張前に少しでも多くの書類を決裁してあげた方が文官たちも助かるだろう。

 管理職が出張中に決裁箱に入った決裁待ちの書類が山のようになっていることは珍しい風景でも何でもない。


 そういえば決裁をするのが遅い管理職がみんなから陰で悪口を言われてたわね。

 私はそんな管理職にならないように気をつけようっと。


 そう思って私はせっせと書類を決裁し始めた。



 夕方近くになるとギークから伝文がきた。

 中身を確認すると明日行く「学校」との調整もできたから予定通り一緒に出張するとの内容だ。


 よし! 明日は学校へ行けるわね。


 就業時間が終わって私はホシツキ宮殿に戻る。

 するとセーラからブランとゼランから夕食の誘いが来ていると言われた。


 今度はブランとゼランの相手か。

 そういえば昨日は王族会議とかで王族の個人資産の納税についての件が話し合われたのよね。

 グリーン王妃はパープル殿下が一番影響があるはずだとか言ってたけど、ちょうどいいからパープル殿下がどんな反応を見せたか聞いておこうかな。


 私はドレスに着替えて王子宮殿へと向かう。

 ブランとゼランは既に食堂にいた。


「遅くなって申し訳ありません。ブラン様、ゼラン様」


「いや、私たちも今来たところだ」


「今日のお仕事お疲れ様。アリサ」


 ブランとゼランはにこやかに私を迎えてくれる。


 う~ん、仕事の後の超絶イケメンの笑顔は身も心も癒されるわよねえ。


 中身がどうあれブランとゼランが超絶イケメンなのは変わらない。

 私が席について食事が始まる。


「ブラン様。昨日は王族会議だったんですよね?」


「ん? ああ、そうだったな」


「個人資産の納税についての話だったと聞きましたが何か王族の方から反対意見は出ましたか?」


 私が聞くとブランもゼランも少し不機嫌な表情になる。

 それだけで私はなんとなく王族会議の内容が分かった気がした。


「反対意見はなかった」


「え?」


 私の予想を反したブランの言葉に思わず目を見開いて驚いてしまった。


 あのパープル殿下は反対しなかったの?


「そ、そうなんですか。パープル殿下も反対しなかったんですか?」


「ああ。パープル叔父上は国王に反対意見など今まで言ったことはない」


 そこで私はサタンが言っていた言葉を思い出した。


 たしかパープル殿下は表向きは「温和な性格で国王に忠実に仕える王族の一人」ってでっかい猫被ってたって言ってたわよね。

 他の王族の前でもでっかい猫被ってるってこと!?


 そしてもう一つの事実も思い出す。


 ブランやゼランだってパープル殿下の正体に気付いたのはそんなに昔の話じゃなかったわよね。

 それだけ周囲を欺いてるってことね。

 侮れないわ。パープル殿下。

 でもそれなら何でブランやゼランは不機嫌な表情なんだろ?


「あの、パープル殿下が反対意見を言わなかったなら王族会議は滞りなく終わったんですよね?」


「いや、確かにパープル叔父上は「個人資産の納税」に関することは反対しなかったが私とゼランが婚約解消したのは良くないと言い出したんだ」


 ブランが苦々しい表情で言う。


 へ? ブランやゼランの婚約破棄の話のこと?


「一国の世継ぎである私とゼランに婚約者がいなければ他国から婚約の話が来て断れない相手ならその婚姻を通じてこのダイアモンド王国が乗っ取られると主張して早急に国内の者との婚約を結んだ方が良いとな」


 なるほど。ブランやゼランに婚約者がいないとなると三大国から婚約の話が来てもおかしくない。

 そしてまだこのダイアモンド王国は三大国の申し出を断れるほどの国力があるとは言えない。


 ブランやゼランの気持ちを無視するなら国内の者を早急に婚約者にしておいた方がいいというパープル殿下の言葉は正当な理由になるだろう。


「だが、私やブランはアリサ以外の女性と婚約する気はない」


 今度はゼランがハッキリと断言した。


 そうよね。二人とも私に結婚の申し込みしてるぐらいだもんね。

 まさかそこからパープル殿下が反撃に来るとは思っていなかったわ。


「じゃあ、パープル殿下はまたキャサリン様とブラン様を婚約させた方が良いと言ってきたのですか?」


「そうだ。ゼランにもカテリーナとの婚約を復活させるようにと父上に進言したんだ」


「それでブラウン国王様はなんと?」


「父上は少し考えてみると答えた。父上は私たちがアリサと結婚したがっていることは知っているからな。だがパープル叔父上の意見は正当な意見だから父上としても無視はできない」


 それでブランとゼランは不機嫌なのね。


 そこでブランは食事の給仕たちを下がらせた。

 食堂にはブランとゼランとサタンと私だけになる。

 そしてブランが口を開いた。


「だから私たちはアリサと早急に婚約することにした」


 はい? 今、なんて言ったの?

 私と早急に婚約するですって!?


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