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第211話 労働力確保を目指します

 私は総務事務省で仕事をしていた。

 とりあえず次にできる政策を考えないといけない。

 この国を「経済大国」にして三大国と同じテーブルに着くようになるのは難しいことだがもう後戻りはできない。


 だからといって私は日本ではたかが地方自治体のヒラ公務員の経験しかない。

 学歴だって高卒だから専門的に「経済学」を習っているわけではない。

 そんな私に国の改革を行いこの国を「経済大国」にできるかなんてハッキリ言って自分でも自信はない。


 でも私がこの世界に異世界転移したのにはきっと意味があってのことだと思う。

 よく私のおばあちゃんが言っていた言葉を思い出す。


 『この世に意味のないことはないんだよ。全ては未来へと繋がっているんだ。だから今は無駄だと思うことでも一生懸命やっていたらいずれ未来の自分に役に立つんだよ。だから何事も一生懸命やりなさい』


 そうね。私がヒラ公務員として働いていた数年間では「こんなことして何に役立つの?」という仕事もあったわ。

 でも自分が何をしているか分からない時期でもその仕事をしていたおかげで職場を異動した時に役に立つことも多かったわ。


 まずは自分ができることをやってみよう!


 私はそう思って紙に「経済大国」には何が必要かをメモすることにした。


 「経済大国」になるってことは基本的に「仕事」をして「賃金」などを貰い生活が豊かになることが基本よね。

 生活が豊かになればそれだけ国民の幸せにも繋がりやすくなるし。


 その「賃金」を多く貰うためには仕事をする商会やお店が儲からなくてはならない。

 商会の収入額が上がればその分多くの「賃金」を国民に支払うことができるし、収入額に応じて税金が国に入りそのお金を使っていろんな事業を行える。

 そうすれば国民が豊かに生活できる環境も更に整えられるわ。


 この世界もいろんな仕事があるし異世界ならではの仕事もあるわね。

 それに身分制度があることも忘れちゃいけないし。


 そうすると大前提として「労働力確保」が必要ね。

 そもそも働く人がいなければ多くの仕事はできない。


 私はワイン伯爵領で経験したことを思い出す。

 このダイアモンド王国では働き手はどうしても男性が多い。

 女性も働いている者もいるが結婚や子育てで仕事を辞めて家庭に入るというのが主流だ。


 ワイン伯爵領では子育て中の女性も働けるように「保育園」を設置した。

 無論、有料での使用とはなったがそれでも「保育園」が設置される前よりは女性の働き手が増えたのは事実だ。


 もちろん高齢者にも元気なうちは働いてもらうことも考えられるがそれよりは女性を「労働力」として確保した方がより多くの「労働力」を得られるだろう。


 あとは確か、女性の働く場所が少ないとの意見もあったわね。

 すると女性でも働きやすくするためには手に職をつける「学校」のようなものがあった方がいいかな。


 でも女性が働くにしても学校に通うにしてもやはり「保育園」は必要不可欠ね。

 国全体に「保育園」を設置することになるとどこの部署と相談したらいいんだろう。


「ねえ、ジル。ちょっといい?」


「何でしょうか? アリサ様」


 私はジルを呼んで「保育園」の事業の内容とそれを実行する場合はどこの部署と相談したらいいか聞いてみた。

 ジルはしばらく考えていたがやがて口を開く。


「その保育園を子供の教育事業のひとつと捉えればこの国では教育文化事務省が担当になるでしょうか」


「教育文化事務省か……。ロッド様のところね」


「はい」


 そうか。「保育園」を教育事業の一つと考えるか。

 それに教育文化事務省なら女性たちが手に職をつけるための学校の設立の相談もできるかもしれないわね。


「ありがとう、ジル。ちょっと教育文化事務省のロッド首席事務官に相談してみるわ」


 私はジルにお礼を言った後に今度はクリスを呼んだ。


「クリス。お願いがあるんだけど」


「何ですか?」


「ワイン伯爵領で「保育園」を設置したでしょ?今度は国全体に保育園を設置したいからワイン伯爵領で保育園を設置した場合にどの程度の女性たちが利用してその結果どれくらいの労働力確保に繋がったかの資料を作成して欲しいの」


「分かりました。ワイン伯爵領に資料の提供を要求します」


「お願いね」


 保育園の設置に関してはワイン伯爵領での「前例」があるから国として導入する際の目安が計算できる。

 前例があるのとないのでは国王様への説明や首席会議へ議題を上げた時の説得力に大きな影響が出る。


 さあ、とりあえずはロッド首席事務官に軽く相談して来ようかな。


 私は教育文化事務省へと向かった。

 当然私の護衛のサタンとイリナもついてくる。


「姐さん。さっき話していた「保育園」って所に子供を預けて女性が働けるようにするんですか?」


 イリナが廊下を歩きながら聞いてきた。


「そうよ。子育て中の女性も子供を預ければ働けるでしょ?そうすれば子育てを理由に仕事を辞めることはなくなるし働ければその分お給料が貰えるから家計も助かるでしょ?」


「なるほど! それはいいですね! 私も将来子供を産んでも姐さんの護衛を続けたいです!」


 いやいや護衛騎士は命に危険も多いからあんまり子供を持つ母親にはさせたくない職業よ。

 でもこの国が護衛騎士なんて必要ないような平和な国になれたらそれは素敵な話よね。

 イリナが子供を産む頃にはそんな国になってて欲しいわ。


 イリナのためにも将来産まれるイリナの子供のためにも頑張らないとだわ。

 いえ、イリナの子供だけではないわ。

 これから産まれてくる全ての子供たちが「平和な国」で生活できるようにするのが私たちの仕事ね。

 自分の子供や孫たちが末永く平和に豊かに暮らしていけることを願わない人はいないもの。


 私はそう思いながら自分の肩にかかる重責を感じていた。


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