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第198話 客観的な証拠が必要です

 オレンジ伯爵家に戻ると私はブランとゼランと三人で話し合う。


「なるほどね。用地買収の金を着服か。オレンジ伯爵もせこい男だな」


 ブランの話を聞いたゼランは馬鹿にしたように笑う。


「しかしゼラン様。まだ確たる証拠がありません。証拠が無ければ伯爵に逃げる隙を与えてしまいます」


「そんなの拷問にでもかければ済むんじゃないのか?」


 私の言葉にゼランがさも当たり前のように答える。


 不正は見逃せないけどなるべく野蛮なことはしてもらいたくないし、どうすればいいかな。


「ゼラン様。自白だけでは証拠が不十分です。やはりここはちゃんとした証拠を押さえないと」


「まあ、アリサの意見も分かるな。ゼラン。オレンジ伯爵と夕食を食べていて不審なことはなかったか?」


 ブランの問いにゼランが少し考える。


「そうだな。オレンジ伯爵は美術品収集が趣味だと言っていたがその割には部屋の美術品が安物なのが気になることかな」


「美術品が安物ですか?」


「ああ、例えばこの部屋のそこに置いてある観賞用の壺などはおそらく10万円程度の物だろう」


 ゼランが指を差した方向には壺が飾られている。

 10万円でも高い気がするが領主貴族が自分の趣味にしているというならもっと値段が高くてもいいだろう。


「なるほど。着服した金で買った高価な美術品はどこかに隠してあるってことか」


 ブランがそう言ったので私は自分の頭に浮かんだ疑問を口にしてみる。


「この部屋の美術品は普通に使うための物だから安物を置いてあるってことはないんですか?」


「アリサ。私たちを誰だと思っている? この国の王太子と王子だぞ。少なくとも今回正式にこの伯爵家には王太子が来たんだ。その部屋に安物を置くと思うかい?」


 あ! そうだった! つい忘れがちだけどブランもゼランもこの国の王子だ。

 しかも今回はブラント王太子が正式に視察に来たのだからその王太子が使う部屋は客室の中でも最上級の部屋が用意されていて当たり前だ。


 それに美術品収集が趣味だと言うなら尚更自慢の美術品を王太子に見せてもおかしくないだろう。

 それをしないということは自分の美術品収集は高価な物を買ってはいないとわざと言いたいのかもしれない。

 身分に合わない高価品があればどこでそのお金を調達したのか聞かれる可能性があるからだ。


「すみません、ブラン様、ゼラン様。お二人がこの国の王子であることを失念してました」


「フフフ、アリサらしいな」


「本当に。アリサじゃなかったら不敬罪に問うところだよ」


「す、すみません……」


 ブランとゼランは面白そうに笑う。


 いけない、いけない。ブランとゼランがいつも普通に接してくれてるから「王子」ってことを忘れちゃうわね。

 今はブランもゼランも私に好意を持っているから笑って許してくれるけど確かに「不敬罪」と言われても仕方ない。

 自分の言動には気を付けないとね。


「それなら明日ゼラン様がブラント王太子としてオレンジ伯爵と視察に出かけている間に私とブラン様で証拠を屋敷内で探すってのはどうですか?」


「そうだな。それならいいかもしれないな」


「ああ。警備の都合上とか理由をつけて屋敷内を探してみるのはいいかもしれない」


 ブランもゼランも頷いて賛成してくれる。


「一番いいのは金を着服している「裏帳簿」のような物があるといい。あとは収入に見合わない高価な美術品も見つかれば言い逃れはできないだろう」


「ではその作戦で行きましょう」


 その日はとりあえずそう言って話がまとまり次の朝になる。


 朝食の席でブラント王太子のフリをしているゼランがオレンジ伯爵に「荷物の警備のため数人の騎士を屋敷に残す」という話をした。

 オレンジ伯爵は一瞬動揺を見せたがブラント王太子の案内を伯爵自身がしないわけにはいかないので渋々頷いた。


 私は引き続き体調がイマイチだから部屋で寝ているとオレンジ伯爵に言う。

 オレンジ伯爵は明らかに不審そうな顔だったがゼランが「昨夜は激しくし過ぎてね」と言ったら納得したようだ。


 だからそういうこと言うとブランが不機嫌になるからさ!


 案の定、ブランは鋭い目でゼランを睨んでいた。


 王宮に帰ってから喧嘩とかしないでよね、まったく。


 そしてゼランとオレンジ伯爵は視察に出かけた。


 さあ! 証拠探しを始めるわよ!


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