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第184話 幸せでなければ意味がありません

「まず基本的には現在のダイアモンド王国の国力で行える案をいくつか説明させていただきます。資料Bをご覧ください」


 代表者たちは資料を確認する。


「まずは既存の事業の見直しをします。採算の取れない事業を見直しして改善すること。次に新規の事業を行うことです」


「なるほど。既存事業の見直しか。確かにそれは大切なことですな」


 それまで黙っていたホット公爵が口を開いた。


「ええ、そうです。事業の見直しは定期的に行わなければなりません。赤字経営事業をなるべく無くすというのは必要なことです。ですがそれで国民へのサービス低下は避けなければなりません」


「つまり赤字経営であっても必要な事業は継続するということですかな?」


「はい。もちろんその赤字が国の財政を圧迫するほどになれば別ですが国民を不幸にして『経済大国』になっても意味がないのです」


「それはどうしてかな?」


 ホット公爵は静かな声で私に尋ねる。


「私はこのダイアモンド王国が好きです。私は異国の出身ですがこの国に来て優しい方々に出会いました。そしてその人たちが平和に安心して暮らせる国にしたいのです」


「平和で安心に暮らせる国ですか」


「ええ、そうです。どんなに経済的に大国と呼ばれる国になっても国民が『幸せ』を感じる国でなければ意味がありません」


 私はかつて自分がヒラ公務員として働いていた頃を思い出す。

 『経済大国』と言われた日本でも本当に国民が『幸せ』を感じていた国だったのかは疑問だ。


 確かに全ての国民が貧富の差も無しに暮らせる完璧な国を作るのは無理だろう。

 しかしこの国に来てそれを目指して努力することが公務員としてのまたは国の政治に関わる者の使命ではないかと思うようになった。


 日本にいた頃は公務員バッシングを受けるのが怖くて自分の職業さえ隠して生活していたことも事実だ。

 その日本で働く公務員として思ったことは国民が『幸せ』を感じる国でなければどんなに『経済』が発達しても無意味だということ。


 経済によって食べる物にも心配がない『豊かな』生活が送れても『心が豊か』でなければ人間は生きていけないのだ。

 毎年多くの自殺者がいるのは悲しいことだ。


 私の目指す国は『理想論』と笑う人間はいるだろう。

 でも私はただ自分の大切な人々には『幸せ』でいて欲しいだけ。

 そしてその力が自分にあるというならその自分の『信念』で頑張るつもりだ。


 もちろんこれは自分一人の力で達成するのは無理だろう。

 だったら協力してくれる『仲間』を増やすのだ。


「国民が『幸せ』を感じる国ですか」


 ホット公爵の言葉に私は頷く。


「はい。そのためにこれからも国の改革をしていきます。新規の事業についての詳細はまだまだこれから考えねばなりませんが私が考えている改革する分野については資料Cに書いてあります」


 私は資料を見ながら説明する。


「ここに書いてあるように「経済関係の改革」「医療関係の改革」「教育制度の改革」「軍事制度の改革」「外交関係の問題解決」「研究機関の充実」「財政関係の改革」「女性等の労働改革」などです。これら以外も必要であれば順次改革案を提示していきたいと思います。そのためには皆様の納めるお金が必要なのです。改革を成し遂げるのは大変なことだと思っています。しかし私は諦めません」


「なるほど。これからそれらの改革を行うということか。確かにそれらをやるにはお金が必要だ。成功するかは分からんだろう。だがその心意気は認めよう」


 スノー公爵が私の言葉を認めてくれる。


「確かにアリサ首席総務事務官殿の意見はもっともだ。民が『幸せ』でなくして存在する国に何の価値があろうか。そのために「改革」が必要ならするべきだ」


 シップ侯爵も同意してくれる。


「そうね。私もそう思うわ。まだ道のりは長いかもだけど何もしないのではいつまでも現状は変わらないわ。女性たちの立場もね」


 ビューティー侯爵は笑みを浮かべる。


「そうですな。それらに私たちのお金が必要なら協力しましょう」


「私もです。ここは皆で協力して三大国に負けない国を目指しましょう」


 モーション侯爵とディッシュ侯爵も納得してくれたようだ。


「私は元々争いを好まない。争いのない国にできるならそれに越したことはない。それに「教育制度の改革」で才能ある者を見つけ出せればこの国の宝となる」


 クラシック公爵もそう続ける。


「しかし皆様方。確実にそんな国ができると決まってはいないんですぞ!」


 ハウゼン宰相が代表者たちに言うが代表者たちはハウゼン宰相を相手にする気はなさそうだ。


「ハウゼン宰相。貴方が言うようにできるかどうかは分からない。だが、既にできるかどうかではないのだよ。どのように成し遂げるかなのだ」


 最後にホット公爵が静かにハウゼン宰相に言った。

 ハウゼン宰相は黙り込む。


「ではそろそろ決議に入ります。この『高位貴族の納税』に対して賛成の方は手を上げてください」


 進行役の事務官が言うと首席事務官たちや代表者が手を上げて最後にハウゼン宰相も手を上げた。


「この『高位貴族の納税』に関しては首席会議で承認されたものとなります」


 やったわ! 無事に承認されたわ。でも実際の戦いはまだ始まったばかりね。

 代表者たちが賛成してくれた期待に応えられるかはこれからの政策次第だ。

 とにかくここまで来たらやるしかないわね。


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