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第183話 国が目指す未来です

「そうですね。率直に言えば国土は小さいとはいえ肥沃な土地もあり国の財政もけして赤字経営ではないし、今は大きな戦もなく軍事費用がすぐに必要でもない。それでも納税をしなくてはならない理由が正直私には分からないという感じです」


 なるほど。モーション侯爵は高位貴族が納税をする必要性を知りたいわけね。


「なるほど、分かりました。確かにモーション侯爵の仰る通り、現段階でこの国は戦をしているわけでもなく赤字経営でもありません。ですが、このダイアモンド王国は本当に「平和で安定した国」と言えるのでしょうか?」


「どういう意味ですかな?」


 モーション侯爵は私に尋ねる。


「このダイアモンド王国が三大国に囲まれて微妙な立場にあることは知っておられますか?」


「それは確かにそうだが……。では三大国に負けない軍備増強にお金を使うということですか?」


「それは難しいと思いますよ。モーション侯爵」


 私とモーション侯爵の間に口を挟んできたのはスノー公爵だ。


「たとえ国家予算の全てを軍備に当てたとしても三大国に勝る軍事力が持てるとは思えない」


 さすがスノー公爵は軍人でもあり実際に他国と国境を接している領主貴族なだけはある。

 三大国に匹敵する軍事力は持てないと言い切るとは。


「それについては私もスノー公爵と同意見です。私は南の海に面した領地を守っているが三大国には大きな軍艦も整備されているし、本気で攻められたら守るのは難しいと思っています」


 スノー公爵の意見に同調したのはシップ侯爵だ。

 シップ侯爵もこの国の南の守りと言われる人物だからこそ、より三大国の脅威を感じるのだろう。


「スノー公爵とシップ侯爵の仰る通りだと私も思います。三大国に軍事力で勝るのは難しいでしょう。今のダイアモンド王国では三大国に対して無力に等しいです」


「それならどうしろと言うのだ?」


 モーション侯爵が私に尋ねる。


「現在のダイアモンド王国では三大国と話し合いをしたいと思っても三大国がダイアモンド王国を自分たちと同等に扱ってくれるとは思えません。なので三大国がダイアモンド王国を自国と同等に扱ってくれるような国にするのです」


「そんなことができるのか?」


「その一つの方法が『経済大国』になることです」


「経済大国?」


「そうです。三大国にとってダイアモンド王国が存在することで自国の利益になると判断されれば三大国と対等な『同盟』を結ぶことも可能です」


 私はそう言って代表者たちを見渡す。


「つまりアリサ首席総務事務官殿が言いたいのは三大国と対等の『同盟』を結べばこの国が守れると?」


 スノー公爵の言葉に私は頷く。


「そうです。『同盟』を結ぶことによりダイアモンド王国がその相手の国に対して何かの対価を与える代わりに他のどこかの国に攻められたら残りの二大国に守ってもらうようにするのです」


「それは随分と大きな勝負だな。だがその勝負はやってみる価値はある」


 スノー公爵はそう言ってニヤリと笑う。


「しかし、それが果たしてうまくいくのでしょうか?」


 モーション侯爵はまだ決めかねているようだ。


「モーション侯爵様はスポーツ事業に熱心でおられると聞きましたが、スポーツの世界でも強いチームや弱いチームはありますよね?」


「え? ああ、もちろんだ」


 私の話題の切り替えにモーション侯爵は面食らっているようだ。


「ではモーション侯爵は弱いチームが強いチームと試合をした場合にどのような作戦を立てれば勝てると思いますか?」


「そうだな。真正面から勝つのが無理なら相手の弱点を狙うとかかな……」


「そうですね。たとえ実力差があった試合でも作戦によっては強いチームを倒すこともできます。同じように三大国に『弱点』がないと言い切れるでしょうか?」


「それは……確かに。あの国々だって完璧な国ではないはずだ」


 モーション侯爵はハッと気付いたように私を見る。


「もしかしてその弱点をこのダイアモンド王国が補うことを約束してその代わりに守ってもらえるような『同盟』を結ぶということか?」


「そうです。そしてそのためにはこのダイアモンド王国が自国の弱点を補ってくれる国だと認識してもらえるようにならなければなりません」


「なるほどね。その一つの方法が『経済大国』になることってことね」


 ビューティー侯爵が口を開いた。


「私もその意見には賛成するわ。国が無視できないモノの中で一番大きなモノは『軍事力』と『経済力』だわ。でも現実的に『軍事力』で勝てないなら『経済力』を持つという発想はいいと思うわ」


 ビューティー侯爵は私のことを見る。


「まあ、でもこれからどのようにその『経済大国』になるかは国の改革次第だと思うけどね」


「そうですね。ビューティー侯爵の仰る通りです」


 私はビューティー侯爵に頷いてみせた。


「なるほど。皆さんの意見はなかなか興味深い。それでは私は敢えて聞きたいのだが国の改革としてどのような案が考えられているのかな?」


 それまで黙っていたディッシュ侯爵が発言する。


「分かりました。とりあえず皆様にはこのダイアモンド王国が目指す未来の姿についてはお話できたと思うので次はどうやって『経済大国』を目指すかの大まかな案を示したいと思います」



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