第182話 議題は高位貴族の納税です
「続きまして『高位貴族の納税』に関する審議ですがこれについては事前に高位貴族の代表者の方々も首席会議に出席したいとの要望がありましたので代表者の方々をお呼びします」
進行役の事務官がそう言うと扉が開き高位貴族の代表者たちが入って来た。
ホット公爵を先頭に全員で7名の代表者たちだ。
私が顔を知っているのはホット公爵とクラシック公爵、それにスノー公爵とビューティー侯爵だ。
残りの三人のことは知らないが代表者たちはそれぞれ自分の名前のプレートがある場所に座ったので誰が誰かが分かった。
スポーツ事業に熱心なモーション侯爵は20代後半の茶髪に茶の瞳の男性。
自分も何かのスポーツをやっているのかガッシリとした体つきをしている。
料理をこよなく愛すると言われてるディッシュ侯爵は50代くらいの茶髪に緑の瞳の男性。
いろんな食べ物を食べるせいか少しお腹が出ている体をしているがけして太り過ぎとまではいかない。
海賊からも恐れられている南の守りの要と言われるシップ侯爵も20代後半ぐらいの金髪に青い瞳の男性。
海に出ることが多いのか少し日焼けをしている感じの色黒の人物だ。
だが顔は意外にも柔和な感じで一目見ただけでは海賊に恐れられているような人物には見えない。
代表者たちが席に座りそれぞれが名前を言って出席確認をした。
さあ、ここからが戦いの本番ね。
私を気合いを入れる。
「ではこれより『高位貴族の納税』についての審議を始めます。まずはアリサ首席総務事務官様からの説明をお願いします」
戦いのゴングは鳴らされた。
「今日はお忙しいところ集まっていただきありがとうございます。私から『高位貴族の納税』の概要を説明します」
私は代表者たちに頭を下げてから説明を始める。
「まず今の現状についての説明ですが現在領主貴族以外の侯爵家以上の高位貴族は慣例で納税しなくてよいことになっていますが今回はそれを改めて領主貴族以外の高位貴族の方々も納税していただくようになります」
代表者たちもハウゼン宰相も黙って私の話を聞いている。
「その根拠は資料1にこのダイアモンド王国の法律の抜粋した部分を載せていますがこのダイアモンド王国では『国民は等しく納税の義務を負う』と記載されており高位貴族だから納税をしなくてもよいということはどこにも書いていません」
皆は資料を確認している。
「それはつまり高位貴族も『国民』である限り『納税の義務』があるということです」
私は代表者たちを見回すように説明を続ける。
「そして現在ダイアモンド王国はより豊かなより強い経済力を持つ国になるための改革を行う方針で動いていますが国の改革には財源確保が必須です。今回高位貴族からの納税により得られる財源は現在の収入の約三割に及ぶ金額になります。その見込み収入額は資料2をご覧ください」
代表者たちは資料を確認するがハウゼン宰相は資料を見る気はないようで私を黙って睨んでる。
まったく、宰相として資料ぐらい見なさいよ。
「この財源を元に今後いろんな国の改革を行う予定です。説明は以上です」
私はとりあえず説明を一通り終える。
「ではご質問のある方は発言をしてください」
進行役の事務官がそう言うとモーション侯爵が発言をする。
「納税する根拠は分かりましたがこの集めた財源を使って何の政策をするのかもう少し具体的に教えて欲しいですな」
そうね。モーション侯爵の質問はもっともなことだ。
自分のお金がどのように使われるかを知るのは国民の権利でもある。
「ではアリサ首席総務事務官様。説明をお願いします」
「はい。では説明させていただきます。ですが具体的な改革案を示すのはこれから先のことになるので、この国が目指す未来について皆様にもご意見を仰っていただきたいと思います」
「国の未来?」
「ええ、そうです。モーション侯爵は今のダイアモンド王国について率直にどう思われますか?」
私はニコリと笑顔を浮かべながらモーション侯爵に尋ねた。