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第180話 悪魔は弱い者を守ります

 私の前にはサタンの後ろ姿があった。

 そしてサタンは剣を抜き、スノー公爵の剣を受け止めている。


 え? もしかしてスノー公爵が私に斬りかかったの?


 サタンが尋常ではない身体能力を持っているのは知っている。

 だからスノー公爵が私に斬りかかった瞬間に私とスノー公爵の間に入りスノー公爵の剣を受け止めたのだろう。


「姐さん!」


 イリナも慌てて腰の剣を抜く。


「……イリナ……大丈夫……これは挨拶……」


「え?」


 サタンの言葉に私とイリナは一瞬何を言われたのか分からなかった。


 挨拶ですって!? 剣で斬りかかることが?


 するとスノー公爵はサタンに笑みを向ける。


「護衛騎士になって前線から退いたから腕がなまったかと思ったがそうでもないらしいな」


「……当たり前……」


 スノー公爵は剣をしまった。

 サタンも剣をしまう。


「失礼しました、アリサ様。サタンとは昔からこういう挨拶をするのが普通だったので」


 はあ!? 挨拶の度に剣を抜いて挨拶するの!?

 このスノー公爵もある意味ぶっ飛んでる性格ね。


「い、いえ。大丈夫です」


 私は引きつった顔をしながらも答える。


「それよりサタン。お前が本気で護衛騎士になるなんていったいどうしたんだ?お前はブラント王太子の部下になってもいつも一匹狼でブラント王太子の護衛もまともにしなかったのに」


「…………」


 スノー公爵の問いにサタンは答えない。


「あ、あの、スノー公爵。サタンはブラント王太子の護衛の仕事をしていたのですか?」


 私が尋ねるとスノー公爵は私の方を見た。


「ええ。国境沿いでは大きな戦はありませんが、盗賊狩りなどは頻繁に行われているんです。サタンも盗賊狩りの仕事をさせたんですが問答無用で皆殺しにしてしまうので捕まえてアジトを聞き出すようにしたい私にとってはちょっと扱いづらく、それならブラント王太子の護衛をさせたらどうかと思ってブラント王太子に紹介したんです」


「そうなんですか」


「護衛騎士は親衛隊のような組織もありますが個人での護衛騎士の場合もあるのでね。ところがこいつはブラント王太子が視察先で襲撃にあっても知らんぷりしましてね」


「え? 知らんぷり? サタン、それは本当なの?」


 ブランが襲撃されたことも衝撃だがそのブランを守ろうとしなかったの?

 それって護衛騎士として失格なんじゃないの?


「……襲撃者は特に強い者ではなかった……ブラント王太子とゼラント王子だけで……倒せたから……」


「ブランとゼランが勝てる相手だと判断したから助けなかったの?」


「……はい……」


 サタンは無表情に言い切る。


 いや、私はブランやゼランの剣の腕前は知らないけど、主人が襲われたら守るのが護衛でしょうよ。


「サタン。主人が危険に晒されたら守るのが護衛でしょ?」


「……はい……だから今……守りました……」


 ん? 確かに今スノー公爵から私を守ってはくれたわね。


「それって私は剣が扱えないから守ってくれたの?」


「……はい……アリサ様は……主人ですので……」


 今のサタンの主人は私で私は剣が使えない者だから守るってことなのかな。


「なるほどな。まったくお前らしいな。お前はいつも探していたもんな」


 スノー公爵は面白そうにサタンに近付きサタンの耳元で何かサタンに囁いた。

 その声は私には聞こえなかった。

 スノー公爵が何か囁いてもサタンは無表情だ。


「まあ、お前が元気にしてるなら良かったよ。それではアリサ様、私はこれで失礼します」


 スノー公爵はそう言って廊下を歩いて行ってしまった。


「サタン。スノー公爵に何か言われたの?」


「……いえ……なんでもありません……」


 サタンはそれ以上語るつもりはないようだ。


 仕方ないわね。でもあの人がスノー公爵か。

 やっぱり少し変わった人ね。

 でも明日の首席会議ではあの人も納得させないとなのよね。


 私はそう思いながらホシツキ宮殿に帰った。


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