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第174話 プレゼントは何がいいですか

 私は溜息をついた。


「どうかしたのかい?アリサ」


 ゼランに聞かれて私は我に返る。


 あ、いけない。今はブランとゼランと食事中だったわ。


「いえ。ちょっと悩み事があって……」


「アリサが悩むなんて珍しいな。アリサは何でも的確に物事を処理していくタイプなのに」


 ゼランはそう言って食後のデザートを口に運ぶ。


 あのねえ、私だってそう何でもかんでも解決策が浮かぶ天才じゃないのよ!


「何を悩んでいるんだい? 相談に乗るよ」


「ありがとうございます。ゼラン様。実はキャサリン様の誕生日パーティーに何をプレゼントしたらいいかと……」


 そう。ジルに首席会議の日程が決まったと聞いて仕事は当面その首席会議への下準備を行えばいいのだが、カレンダーを見て気付いたのだ。

 首席会議の前にもう一つの仕事でもあるキャサリンの誕生日パーティーがあることに。


「プレゼントか。別に何でもいいんじゃないか?」


「ちなみにブラン様は何を贈るんですか?」


「私は花だな。装飾品を贈るとまた勘違いするだろうし」


 そうね。ブランからネックレスでも貰ったらキャサリンは見せびらかしてブランはキャサリンのことを想っているって言いふらしそうよね。


「ゼラン様は?」


「私は王都の有名店のクッキーだよ。クッキーはいつまでもとって置いたら腐るから食べるしかない。そうすれば証拠は残らないし」


 ゼランは当たり前のことのように言う。


 証拠は残らないって発想はすごいわね。でも確かに変に「物」を贈ったらいつまでも部屋とかに飾って置きそうよね。


 でも「花」や「クッキー」で済ませられるのはやはり二人がキャサリンより身分が上だからだろう。

 私がそんなモノで済ませたらやっぱり失礼よね。でもキャサリンに私がアクセサリーとか贈るのも違うと思うし。


「ブラン様やゼラン様の誕生日には貴族たちは何を贈ってくるんですか?」


 私は質問を変えてみた。貴族たちがブランやゼランに何を贈るのかを聞けばヒントが浮かぶかもしれない。


「私にか? そうだな、よく貰うのはその時に流行っている物や後はその貴族の領地でとれる特産品が多いな」


「そうだな。特産品は多いな。やはり貴族も自分の存在を私たちに知ってもらうためにも自分の領地の品物で気を引こうと思うのかもな」


 特産品かあ。そうよね、自分の領地の特産品であればそれをブランやゼランに褒められたらいい宣伝になるだろうし。

 そうだ! ワイン伯爵領の特産品があるじゃない! あれなら王族に贈っても問題ないわ。


「ありがとうございます。ブラン様、ゼラン様。おかげで贈り物を何にするか決まりました」


「そうか。それは良かった。アリサに悩み事させるなんてやはりキャサリンは邪魔だな」


「本当にそうだ。アリサはただでさえ仕事が忙しいのに」


 ブランとゼランは不愉快そうに発言する。


 まあ、二人の言うことも分かるけど「社交」は私の仕事の一つだし。

 それにキャサリンを処罰されても寝覚めが悪いからここはフォローしておくか。


「いえ、社交は私の仕事でもありますし。今回、キャサリン様の誕生日パーティーで少しでも他の貴族の方と仲良くなれるなら私にとっても嬉しいですわ」


「アリサがそういうなら仕方ないか」


「そうだな。アリサ、何かキャサリンに意地悪されたら私たちに言っておくれ」


「はい。お心遣いありがとうございます」


 私は笑みを浮かべて答えた。

 食事が終わりホシツキ宮殿に帰った私はワイン伯爵に手紙を書いた。

 キャサリンに贈る品物をワイン伯爵に送ってもらうためだ。


 早馬で出せば間に合うわね。ちょっと頼んで来ようかしら。


 王宮には常にあちらこちらに伝令を出せるように早馬を扱う部署がある。

 お金はかかるがそこに頼めばワイン伯爵家まで早馬を出して手紙を届けてくれるだろう。

 一応早馬を使用していいのは王族か王族の命令を受けた者、そして首席事務官だけだ。


 まあ、職権乱用な気もするけどキャサリンの誕生日までに間に合わなければ意味がないからここは割り切ろう。


 私がそう思ってその部署に向かう途中で懐かしい人物に出会った。


「まあ、スミスじゃない?」


「これはアリサ様。お久しぶりです」


 スミスは私とブランたちの手紙を届けるために王宮とワイン伯爵家を半年間行き来していた人物だ。


「まだ仕事なの?」


「あ、いえ。これからが仕事というか」


「え? もう夜なのに?」


「はい。これからある領地へ出かけて来るので」


 そうか、スミスは第一特殊部隊の副隊長だったはず。

 特殊部隊っていうくらいだから普通の文官と同じ勤務時間なわけがない。


「アリサ様はどちらへ?」


「ああ、私はワイン伯爵に手紙を届けてもらうために早馬を出してもらおうと思って」


「ワイン伯爵様にですか?」


「ええ、そうよ」


 スミスは私の言葉を聞いて少し考えていたが口を開いた。


「それでは私がワイン伯爵様に手紙を届けましょうか?」


「え? でもスミスは仕事の途中なんでしょ?」


「今回行く場所はワイン伯爵領を通って行くので手紙を渡すぐらい平気ですよ。早馬でも早く手紙は着きますが私の方がワイン伯爵家までの近道を知ってると思うので」


 なるほどね。そりゃ、半年間も行き来すれば近道ぐらい分かるようになるわよね。

 それにスミスなら信頼できるし。


「じゃあ、お願いできる?」


「承知しました。ではお預かりします」


 スミスは私が差し出した手紙を受け取る。


「では失礼いたします」


 スミスは私に一礼して王宮の出口に向かって行った。


 とりあえずこれでキャサリンへのプレゼント問題は解決ね。

 スミスには感謝だわ。


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