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第166話 女性の騎士は少ないです

 最後に出て来た果物のデザートまで食べつくしてイリナは満足そうに言う。


「ごちそうさまでした」


 私たちのテーブルにはイリナが食べて空になったお皿が何枚も重ねてある。


 どうやったらこんな量の料理があの痩せた身体に入っていくのよ。

 その時に私は親友の美紀のことを思い出した。

 美紀は私よりも痩せているのに私の2倍の量を普段から食べるような子だった。


 昔、美紀に「どうしてそんなに食べて太らないのよ?」と聞いたら美紀は笑って「私は胸から大きくなっていくタイプなの」と言っていた。


 チッ、美紀は今も私より痩せているのかしら。

 いやいや今は美紀のことはどうでもいいわ。このイリナのことを聞かないと。


「ねえ、イリナ。お腹大丈夫?」


「はい! 満腹です!」


 いや、そうじゃなくて空腹で一気に食べて大丈夫か聞きたかったんだけど。

 まあ、この分なら大丈夫そうね。


「イリナはいつから食事してなかったの?」


「昨日から何も食べてなくて……」


「イリナに家族はいないの?」


「私は……父がいましたが喧嘩して家を飛び出してきました」


 え? 家出少女ってこと?

 お父さんは普通に心配してるんじゃないのかな?


「そう。でもお父さんがきっと心配してるから帰った方がいいと思うわよ」


「いえ。もう父の世話にはなりません!それに私は自分の憧れの『女騎士』になる夢を持ってるんです」


「女騎士? イリナは剣が使えるの?」


「はい。子供の頃から剣術が好きで剣を習っていたんです。でも父に「結婚しろ」って言われて頭にきて家を飛び出してこの国まで来ました」


「その結婚相手は好きな人ではなかったの?」


「はい。なので家に帰ると無理やり結婚させられてしまいます……」


 イリナは顔を俯かせた。


 身分制度のあるこの世界で親が結婚を決めるのは珍しくないかもだけど、無理やり結婚させるのは可哀そうだわ。

 やっぱり結婚は恋愛結婚しないと!

 それにさっき「この国まで来た」って言ってたけど、イリナは外国から来たのかな。


「イリナの家ってダイアモンド王国にあるんじゃないの?」


「私の家はサファイヤ王国にあります」


 そうか。外国まで逃げて来るなんて相当結婚するのが嫌だったのね。

 でもこの国に「女騎士」って職業はあったかな?

 王国軍はみんな男性だし。


「ブラン様、ゼラン様。この国では女性は騎士になれますか?」


「いや、普通は軍人や騎士は男性がなるモノだが、例外がないわけではない」


「例外?」


「王族などの特別な高位の女性を守るために護衛として「女騎士」をおくこともある」


 え? そうなの?


「じゃあ、王妃様とかには「女騎士」がいるんですか?」


「ああ。そうしないと同性じゃないと護衛できない場所も少ないがあるしな」


 そうか。それもそうよね。

 サタンだって私の側にいるって言ってもホシツキ宮殿では部屋の外にいるし……。

 まあ、サタンは気配を読むのがすごいから部屋の中で異変があったらすぐに気付けるから廊下にいるんだろうけど。


 そうだ! いいこと思いついた!


「ではブラン様、ゼラン様。イリナを私の「女護衛騎士」にしてもいいですか?」


「アリサの?」


「この娘を護衛騎士に?」


 ブランとゼランは明らかに動揺している。

 その理由はもちろん分かる。

 このイリナがどういう人物か分からないのに私の護衛騎士にするのに戸惑いがあるのだろう。


 でも私の勘が告げる。

 イリナを助けるべきだと。


 このままイリナが家に帰っても望まない結婚をしなくてはならない。

 しかし、このダイアモンド王国では「女騎士」の職業に就けるのは極僅かな人間だ。

 しかもイリナは外国人だ。

 このまま放っておいたら仕事を探す前にまた飢えてしまう可能性が高い。


「しかし、この娘の剣の腕前も分からんし、身元も分からない者をアリサの側におくのはどうかと思うが……」


「ならばイリナは「見習い護衛騎士」にしましょう」


「見習い?」


「ええ。私の正式な護衛はサタンがいます。見習い護衛騎士として私についてその働きによって正式に護衛騎士にするのはどうでしょうか?」


「ふむ……」


 ブランとゼランは考え込んでいる。


「ねえ? イリナ。この国では「女騎士」になれる人は少ないの。私の側でまずは「見習い護衛騎士」として働いてみない? もちろんお給料は出すわ」


「本当ですか!? それはぜひともなりたいですが……えっと……でも、貴女方はどういった方なのですか?」


 ん? そうか、イリナは外国人だからブランとゼランが王太子と王子って知らないのね。


お店に入った時は空腹で店の者がブランたちを王太子と呼んでいたのも聞こえていなかったのだろう。


「この方はブラント王太子殿下でこの方はゼラント王子殿下よ。私はこの国の文官で首席総務事務官をやっているわ」


「ええ!! この国の王太子殿下と王子殿下ですか!? それに首席総務事務官様!?」


 まあ、驚くわよね。普通。


 イリナは瞳を輝かせた。


「そんな方とは知らずに失礼しました!」


 イリナはブランとゼランに頭を下げる。


「それなら、なお、姐さんの「見習い護衛騎士」になりたいです!」


 は? 今、「姐さん」って言った?


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