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第16話 保管書類の整理は戦いです

「なるほど。あの30万円は村長の功労金か」


 ワイン伯爵は納得したように頷いて私を見る。


「アリサには事務能力だけじゃなく人を動かす能力もあるみたいだね。素晴らしい!」


 ワイン伯爵の賞賛に私は溜息をつく。

 公務員の事務職は事務だけやってればいいってわけじゃないからね。


 住民や他の部署の職員、それに業者との付き合いをうまくできなければ一人前の公務員とは言えない。

 対人スキルも公務員の必須スキルである。


「とりあえず、昼食を食べようか」


「そうですね。お父様。あと、私にもシラーたちが着ている男物の服を貸してくれませんか?」


「男の服? なぜだい?」


「ドレスでは資料倉庫の書類整理ができないからです」


 ヒラヒラのドレスでは書類整理は出来ない。

 書類って見た目より重たいから書類整理は力を使うのだ。

 もちろん仕分けるのに頭を使うけどさ。


「分かった。用意させよう。でもアリサは女性なのに男物の服を着るのに抵抗はないのかい?」


「私の国では女でもズボンを履いてるのは別に珍しいことではありませんでしたよ」


「まあ、確かに女性でも乗馬服などはズボンだが……」


「お父様。固定観念は捨てた方がいいですよ。これからの領地経営のことを考えれば」


「ふむ。そうか……」


 まあ、いきなり固定観念を捨てるのは難しいわよね。

 でもワイン伯爵領だっていつまでも同じことをしていてはいつまでも貧乏なだけだ。


「それと、シラーとシャルドネも資料倉庫の書類整理を手伝ってもらっていいかしら?」


「もちろんだ。シラーとシャルドネには私から言っておくよ」


「ありがとうございます。お父様」


 やっぱり重い書類を整理するのに男手は助かる。

 そして昼食を取り、私たちはいざ書類整理のために資料倉庫に向かった。

 私は男装して準備万端だ。


 そうだ、この世界には段ボールがあるかしら。

 書類を保管しておくには段ボールの箱ごとに管理した方がいい。


「クリス。ここには段ボール箱はある?」


「はい。倉庫の備品の中にあります」


 良かった。それがあればだいぶ助かるわ。


「その段ボールをあるだけ持ってきてくれる?」


「分かりました。シラー、シャルドネ、手伝ってください」


「はい。分かりました」


 ワイン伯爵まで倉庫に行って段ボールを持って来る。


「これは何に使うんだい?」


「これは後で使います。まずは資料倉庫の中にある書類を年代別に分けてください。去年の分はここ、一昨年の分はここって感じで」


 私の言葉に従って皆で資料倉庫の棚から書類を取り出しては年代別に分けていく。

 過去5年間分の書類があると言っていたが確かにその通りのようだ。

 大きな書類の山が五つ出来上がる。


「次は倉庫の棚に番号を付けます」


「棚に番号を?」


「どこの棚にしまったかを後で分かるようにです」


 そう言って私は棚に番号札を作ってつけて行く。

 全部の棚に番号札を付け終わるとこれからが本番だ。


「まずは一つの年代分の書類を村別に分けてください」


 皆で手分けしてまず去年の分を12の村別の書類に分けた。

 これだけでもけっこうな作業だがまだまだ書類整理は始まったばかりだ。


「できたぞ、アリサ」


 ワイン伯爵の額には汗が滲んでいる。


 うう、伯爵に書類整理させるのは気が引けるが少しでも多い人数の方が早く終わる。

 それにここからがワイン伯爵の力が必要になる。


「お父様。ここからがお父様の力が必要なところです」


「いったいどうするのかね?」


「まずお父様はこの12の村別に分けた書類の中で中身を見て重要度を三段階に分けてください」


「重要度?」


「はい。とても重要な書類には「1」、次に重要な書類は「2」、そしてあまり重要ではない書類は「3」として分けてもらいたいのです」


 この作業は事業の内容を知っているワイン伯爵しかできない。


「分かった。やってみよう」


「そしてお父様が三つに分けた書類をシラーは段ボールの箱に詰めてください。その時は重要度「1」の書類同士を同じ箱に入れるように。同じく重要度「2」と「3」も同じもの同士を入れてください」


「分かりました」


 シラーが返事をする。


「そしてクリスはシラーの詰めた段ボールの中の書類のファイルの題名を見てその題名をこの台帳に書いていってちょうだい」


「分かりました」


「台帳にはまず番号を書くの。まずは箱番号の「001」からの続き番号、そして次は村の番号の1から12の数字、そして次は書類の重要度の1から3の数字」


 私の説明をクリスは真剣に聞いている。


「そして最後は棚の番号よ。その後にその箱に入っているファイルの名前よ。そして台帳の番号を箱に書く。例えば「001-1-1ー1」って感じね」


「全てを数字で表すってことかい?」


「そうです。お父様。この「001」は箱番号、次の「1」は村番号、次の「1」は書類の重要度番号、そして最後の「1」は棚の番号です」


「なるほど……」


「そしてその番号を段ボールに書いて棚にしまうのはシャルドネがやってくれる?棚の番号と箱に書いてある棚の番号が一致するようにね」


「分かりました」


 シャルドネが頷く。


「私はお父様の仕分けを手伝うわ。領地での事業の内容も知りたいから」


「分かった。ではアリサの言う通りに作業を開始しよう」


 ワイン伯爵の号令で書類との戦いが始まった。


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