表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

155/257

第155話 初恋もNGですか

「ところで話は変わるがアリサのいた国ではアリサはどんな生活をしていたんだい?」


 ブランは食後の紅茶を飲みながら尋ねてきた。


 ん?日本での私の暮らし?

 そうねえ。高校まで学生生活して公務員になって約5年間働いて忙しかったけど社会にも慣れて美紀とも遊んで馬鹿笑いしていたくらいかな。

 自分が異世界転移してその国の高官になるなんて夢にも思ってなかったことは事実ね。


「そうですねえ。18歳まで学校に通っていてその後に文官の仕事をしていました」


「ほお。アリサの国では18歳まで学校に行くのが普通なのかい?」


「う~ん。私の国では18歳まで学校に行かないとなれる職業が少ないので。でも半分以上の人間はその上の学校まで通って22歳くらいまで学校に行って働く人も多かったですね」


「22歳まで学校に!?」


 ブランが驚きの声を上げる。


 まあ、この国は12歳で成人だから22歳まで学生っていうのは抵抗があるかもしれないけど。

 でも以前この国には大学があるって言ってなかったっけ?


「この国にも大学はあるんですよね?」


「確かにあるが。それでも大学を卒業するのは通常は16歳だぞ」


「へ? そうなんですか?」


「ああ。大学に入れるのは12歳以上の大人で専門的な知識とかを習うために行くんだ。授業料も高いからそれなりの裕福な者が行くことが多いが」


 そうなのか。この国でも大学に行くにはお金がかかるのね。

 12歳までに習う内容も気になるが日本でいえば小学校卒業していきなり大学に行く感じかな。


「じゃあ、文官の仕事が休みの時は何をやっていたんだい?」


 今度はゼランが聞いてくる。


「休日ですか?友達と遊ぶことが多かったですね」


「その友達というのは男か?」


 ゼランの瞳が険しくなるのを見て私は慌てて答える。


「いえ。よく遊ぶ友達は女性の美紀って友達です」


「そうか。でもアリサには過去に恋人がいたことはないのか?」


 は? 恋人? そんなのいなかったわよ。

 でも中学生の頃に好きになったイケメンの先輩はいたわね。

 あの先輩は今でもイケメンかしら。


 私が余計なこと考えて返事をしなかったのでゼランが冷たい声で言う。


「アリサには付き合った男がいたんだな?」


「いえいえ。付き合うなんてとんでもないです! ちょっと中学生の頃に片想いの初恋をしただけで……」


「初恋?」


 今度はブランが飲んでいた紅茶のカップをガチャンと音を立てて置いた。


「そいつは誰だ? アリサの心を射止めるなど許さん!」


「ちょ、ちょっと落ち着いてください! たかが中学生の頃の初恋ですよ?」


「アリサのその中学生というのは何歳の時だ?」


「へ? 中学一年だから13歳ですかね?」


 ブランとゼランの雰囲気が明らかに冷たいモノに変わる。


「13歳は立派な大人ではないか」


 ブランの言葉に私は自分の失言に気づく。


 しまった! この国では12歳から大人だったわ。


「今すぐそいつに決闘を申し込む。そいつに会わせろ」


「私もブランと同じく決闘を申し込む」


 いやいやちょっと待ってよ! 初恋ぐらい誰にでもあるでしょ!

 そもそも決闘を申し込むったって。相手は日本にいるんだからブランとゼランが異世界転移しなくちゃ無理でしょ。


「いえ。私の国にいるので会いに行くのは無理ですよ。私の国は滅茶苦茶遠い島国ですから!」


「どれぐらい遠いのだ?」


「えっと。大陸を離れてずっと海を渡らないと辿り着けない世界の果てぐらいの遠い国です!」


 っていうか、この異世界と私の世界の距離なんて分からないわよ!

 逆に日本に行けるもんなら行ってみなさいよ!

 私だって帰れるならとっくの昔に帰ってるわい!


 いやいやここは落ち着かないと。

 ブランとゼランに諦めてもらうために遠い国にしなくちゃ。

 絶対に異世界なんて言ってはいけない。


「……確かに、そんな遠い国に行くのには長期間この国を留守にしなければならないな」


「さすがに王太子と王子が長期間国を離れることはできないし」


 ブランとゼランは悔しそうに言葉を吐き出す。


「そ、それに、ブラン様とゼラン様だって初恋ぐらいしたことあるでしょ?」


「初恋か……私の初恋はアリサだ」


「私も初めて好きになった女性はアリサだな」


 え? マジで私が初恋の相手なの?

 ブランやゼランはこんなイケメンでモテるのに?


 そこで私はこの二人が私と出会う前は女性に興味を示さなかったことを思い出す。


 そうだった。ブランとゼランは婚約者をじゃんけんで決めるぐらいだもんね。


「それに今は私はお二人の側にいるじゃないですか」


 私はブランとゼランの機嫌を直そうと笑顔で二人に言う。


「むう。確かにそうだが……アリサはもうその男に会いたいと思わないのか?」


「ええ。思いません」


 ブランの言葉に私は頷く。

 

 まあ、会いたくても会えないってのが正しいけどね。


「それなら許そう」


「そうだな仕方ない」


 ブランとゼランの冷たい雰囲気がいくらか和んだ。


 ふう、良かった。それにしても私の初恋の相手に嫉妬するなんて思わなかったわ。

 それだけ私のことが好きなのは嬉しいけど、もしこれで私がこの世界でブランとゼラン以外の男性を好きになることがあったら……。


 いや、考えるのはやめておこう。

 だって想像するだけでめっちゃ怖いもん!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ