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第154話 国の未来のために協力します

 ホット公爵邸から王宮に帰ると既に就業時間は終わっていたので私はホシツキ宮殿に戻った。

 セーラからブランとゼランからの夕食の誘いがあると聞いて私は着替えて王子宮殿に向かう。

 王子宮殿の食堂には既にブランとゼランがいた。


「遅くなってすみません」


「いや、大丈夫だよ。今日はホット公爵の所に行ってたのだろう?」


「はい。そうです」


 さすがブランは情報が早いわね。

 まあ、総務事務省に聞けば私が出張でホット公爵の所に行っていると分かるけど。


 夕食が始まり今度はゼランが私に聞いてくる。


「昨日はクラシック公爵の所に行ってたみたいだし。二人の公爵を説得できた?」


 私はクラシック公爵とホット公爵のことを思い出す。

 二人の公爵は違ったタイプの難敵だったけどなんとか攻略はできた。


「はい。クラシック公爵もホット公爵も高位貴族の納税に対して協力してくれるそうです」


『本当か!?』


 ブランとゼランの声が重なる。


「あの二人の公爵から協力を得られるなんてアリサはやはり優秀だ」


「まったくだ。あの二人には私たちも手を焼いていたのに」


 へえ、そうだったんだ。


「クラシック公爵は音楽や芸術以外のことはまともに話を聞かないし」


 それは同意見ね。

 私がたまたまピアノが弾けたから話し合いになったけど、それじゃなかったら私と会ってくれたどうかも怪しいし。


「クラシック公爵は音楽をこよなく愛する方だったので宝石の原石を見つけませんかとお話したら納得してくれました」


「宝石の原石?」


「はい」


 私はクラシック公爵と話し合いをした時のことをブランとゼランに話す。


「へえ、アリサはピアノも弾けるのか。今度、聴かせてくれ。だが、その方法だったらクラシック公爵を攻略できた理由が分かる」


 ブランが頷く。


「そうだね。彼は音楽家のたまごたちを支援するためにはお金もじゃんじゃん使うタイプだし」


 ゼランも感心したように言葉を漏らす。


「だけどホット公爵はどうやって説得したの?言っては悪いがホット公爵は自分の信念を持って動くタイプだしその信念は「中立」ってことだったと思うけどね」


 そうね。あのホット公爵は自分の信念を持つタイプだったわ。

 だからホット公爵には小手先の話術は通じなくて私の信念で戦った。


 このダイアモンド王国を強くしてみんなで笑顔で暮らせるようなそんな国にしたいという私の信念をぶつけた。

 私にどれだけのことができるか分からない。


 日本のヒラ公務員としての知識はあるけど、この国は日本とは違う。

 日本の常識がそのまま通じる世界ではないこともこの国に住んで分かったことだ。


 だけどそれでもダイアモンド王国の政治の中枢に関わることになったことに私は後悔はない。

 その重責は感じるがそれだけやりがいもある。


「ホット公爵にはこの国の未来に投資してもらえるようにしました」


「この国の未来?」


「はい」


 私はホット公爵と話し合った内容をブランとゼランに話す。


「ふむ。ホット公爵が「自分は中立」という立場を脅かしてもアリサにこの国の未来をかけたってことか」


「いえ。それほどのことではありませんが……」


「いや、ブランの言う通りだ。ホット公爵はアリサという人物の可能性にかけたんだ」


 ゼランはそう言うと私を強い眼差しで見た。


「アリサは伝説のブラックダイアモンドの女性だと私は思う。アリサの考えはこの国の者には無い視点からの指摘が多い」


「確かにゼランの言う通りアリサの考えは私たちには無い発想だ」


 まあ、日本では普通のことがこの国や世界には無いもんね。

 だけどこの世界が異世界なのだからそれは当たり前だ。


 だから改革もこの国やこの世界の事情を考慮して行う必要がある。

 私は完全にこの世界の「ルール」を無くそうとは思わない。

 むしろ「ルール」があるならそれを逆に利用するのも良いとも考えている。


「でもホット公爵は本当にこのダイアモンド王国のことを考えていらっしゃる方だと思いました」


「そうだな。ホット公爵は決して頭の悪い人では無いし、ホット公爵なりにこの国のことを想う気持ちがあることは私も知っている」


 そう言ったのはブランだ。


「この国が今後どのような国になるかは王太子の私にも責任のあることだ。アリサ、ぜび君には協力してほしい」


「はい。私の力が必要ならいくらでも協力します」


「ありがとう。アリサ」


 ブランはそう言って満足そうな笑顔を見せる。


 あ~、やっぱり超絶イケメンの笑顔は疲れた身体の癒しねえ。

 あ、でもホット公爵からは条件を出されていたんだ。


「ですがホット公爵には条件を出されました」


「条件?」


「はい。首席会議に高位貴族の代表者を出席させてくれと」


「なるほど。それは一気に高位貴族を納得させて宰相の壁を突破するつもりだろう」


「宰相様の壁?」


「宰相も侯爵だから高位貴族だ。おそらく宰相は反対するだろうが高位貴族の代表者たちが満場一致で納税に同意すれば宰相の立場からは反対できないからな」


「そうそう、宰相だって他の高位貴族の意見を無視したらさすがに宰相を代えた方がいいって話が出ても仕方ないしね。宰相の家は名門とは言っても全ての高位貴族を敵に回しては無事に済まないだろうから」


 そういえば宰相も高位貴族だったわね。

 また宰相に恨まれそうだけどこれは仕方ないわ。


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