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第153話 真の平和に向けて努力です

「ブラウン国王様が何か関係がございましたか?」


 私の言葉にホット公爵は笑みを浮かべる。


「私がブラウン国王とはイトコなのはご存じでしょう?」


「はい。存じております」


「私とブラウンは年齢も近く幼い時からよく交流していました」


 ブラウン国王と幼馴染なのね。


「そしてブラウンはいずれ国王になるのが決まっていた。だが、当時既にダイアモンド王国の立場は微妙なモノだった」


 ホット公爵は何かを思いだすような遠い目をする。


「三大国に囲まれてどのようにこの国を守っていくか。そのことを私たちは何度となく話し合いより良い道を探っていた。その結果のひとつが私が宰相の身内となり宰相の力が大きくなりすぎるのを止めることだった」


 そんなことをブラウン国王とホット公爵は話し合っていたのね。


「王族の血を引く私が宰相の義兄になり中立を保ち、ブラウンは己の勝手に政治をすることなく統治することでこの国は今まで無難にやって来れたのでしょう」


 そうね。ブラウン国王は自分勝手に政治をする人ではないわ。

 まあ、ブランとゼランの意見で私をいきなり首席総務事務官に任命しちゃうところは驚きだけど。


「確かに貴女の言う通り今のままなら無難に平和が続くかもしれない。だがそれはいつまで続くか分からない『仮』の平和だ」


 『仮』の平和。そうよ。三大国の気分しだいの『仮』の平和が今のこの国。


「私とブラウンはどのようにこの国を守っていくかと同時にこの国を豊かにして最高の『真』の平和な国になることを夢見ていたのですよ」


 『仮』ではなく『真』の平和な国ね。

 私が望むのもその『真』の平和になったこの国だわ。


「だが、いつしかこの国を『守る』だけに必死になってしまい、貴女の言うように国が発展することへのリスクばかりを気にするようになってしまった」


「いえ。ホット公爵様。ブラウン国王様とホット公爵様が守って来たからこの国は今も存在するのですから、お二人は間違ってはいませんわ」


 私はニコリと笑みを浮かべる。


 国の発展は大事だ。発展しない国に訪れるのは衰退のみ。

 でもブラウン国王とホット公爵のような人たちがこのダイアモンド王国を守って来たのも事実。

 私はそれを否定する気はない。


 ただ、ホット公爵の言ったとおりこの『仮』の平和を『真』の平和に変える時が来ただけ。


「そう言っていただけると私も救われます。アリサ様のお考えは分かりました。私は貴女にこの国の未来を賭けましょう。高位貴族たちには私からも納税をしてもらえるように説得します」


「本当ですか?」


「はい。貴女はこの国の未来を真摯に考えていらっしゃる。確かにリスクは伴うが賭ける価値のある意見だ」


「ありがとうございます。公爵様」


 私は頭を下げる。

 ホット公爵は静かに話を続ける。


「ブラウンが貴女を首席総務事務官に任命すると聞いた時は私は正直反対でした」


 え?そうだったの?


「貴女がワイン伯爵領で行った改革の話は聞いたが私にはブラントとゼラントが恋に狂って貴女を手に入れるための口実でしかないと疑っていた」


 う~ん、確かにブランとゼランの強引な意見が通ったことは事実よね。

 いくら前首席総務事務官が無能だったからと言って文官ですらなかった私を首席総務事務官にするんだもんね。

 そう思われるのが普通だわ。


「しかしブラウンは言ったんですよ。『息子たちの人を見る目は確かだ。心配はない』とね」


 私は驚いた。

 まさか、ブラウン国王がそんなことを言っていたなんて。


「ありがとうございます。これからもブラウン国王様とホット公爵様のお眼鏡にかなうように努力いたします」


「いえ。貴女なら心配ないでしょう。それと私からも要望を出させていただきたい」


「何でしょうか?」


「まずは事前に高位貴族へ納税の原案を私に渡してください。そしたらそれを私の名前で高位貴族に通知します。そうすれば納税に反対する貴族は私に意見を言ってくるのでその貴族は私が説得します」


「なるほど。そうしていただければ助かります」


「そして高位貴族の納税を審議する首席会議に高位貴族の代表者を参加させて欲しい」


「分かりました。その手順で考えます」


 ホット公爵は笑みを見せる。


「貴女のこれからに幸あらんことを願います」


 私は自分の想いを認めてくれたことに感謝で涙が出そうになる。

 この公爵のためにも必ずこの国を発展させなければならない。


 私は自分に喝を入れた。

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