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第152話 逆転の発想です

「アリサ様は異国の出身でまだ年齢も若くブラント王太子やゼラント王子と懇意にしていると聞いていたのでその力を使って首席総務事務官になったとの話を聞いていたのだがどうやら間違いのようだ」


 ホット公爵はそう言って私を見つめる。


 やっぱり世間にはそういう噂が広まっているのね。

 まあ、ブランやゼランと仲がいいのは本当だけど私から強請って首席総務事務官になった訳ではない。

 文官になりたいと望みはしたが。


「アリサ様。貴女はこの国のことをよくご存知のようだ。だが、まだ甘い」


「甘い?」


 私の考えが間違っているということかな。


「アリサ様のような優秀な方なら分かるかもしれないが私は王族の血を引いていて宰相の姉を妻に迎えている。なぜ私が宰相の姉を妻に迎えたかの理由が分かるかね?」


「国王側と宰相側との権力のバランスを取るためですか?」


「そうだ。宰相は貴女の言葉を借りれば国民の代表のような者だ。王族の血を引く私が国民の代表の身内になる。そのことでどちらが暴走しても私には止められるだけの権力がある。だがそれ故に私が政治に口を出すことはない」


 やはりそうなのね。宰相の姉を敢えて妻にしたのは権力のバランスを取るためで国を動かす権力を持つ国王と宰相を対立させないのがホット公爵の役割なのね。


 確かにホット公爵が中立の立場だから今までは波風が立たなかったのかもしれない。

 でもそれでは国を守ることはできても国を発展させることはできない。

 改革には当然リスクが伴うものだ。


「ホット公爵様の言い分は分かりました。でもそれではこの国は遅かれ早かれ滅亡への道を辿りますわ」


「なんだと?」


 ホット公爵は初めて怒りに近い感情を見せる。

 しかしここで怯んでいてはいけない。


 このホット公爵は話が分からない人物ではない。

 ここが勝負どころね。


「ホット公爵様が中立の立場であれば国を守ることはできるかもしれません。しかし、国は守りにばかりに徹していてはそれ以上の国の発展は望めません。国をよりよく発展させ成長させるためにはある程度のリスクが必要なのです」


 ホット公爵は黙って私の言葉を聞いている。


「国が成長しなければその国はいずれ衰退していきます。今は国が今後成長できるかの別れ道です。ホット公爵様はこの国が三大国の微妙な力関係で成り立っていることは当然ご承知ですよね?」


「もちろんだ」


「現状のダイアモンド王国では三大国に同等として扱ってもらえる存在ではありません。ですがこの国が三大国さえも手が出せないような『経済大国』になったらこの国は安泰です」


「経済大国だと?」


「はい。大国というのは領土の広さや軍事力の強さだけでなく『経済』でも大国になれるのです。そのためには王族や国民が一丸になってこの国を成長させることが必要なのです」


「だがそれでは三大国はその豊かな経済大国を手にいれるために攻め込んで来るのではないか?」


 ホット公爵は怒りを静め私に自分の意見をぶつけてくる。


「いいえ。この国が『経済大国』になれば今まで以上に三大国は手が出せなくなるでしょう」


「なぜだ?」


「経済力を使って三大国と同等な『同盟』を結ぶのです。今は中立の立場であるこのダイアモンド王国ですが敢えて三大国と『同盟』を結ぶことでひとつの国が攻め込んだら確実に他の二つの大国が揃ってその攻め込んだ国を撃退してくれるようにするのです」


「なんだと? 三大国の力を逆に利用するということか?」


「そうです。ですがこれはあくまで三大国と同等な『同盟』が結べることが前提です。そのためには三大国にも利益をもたらすような存在にこの国がなる必要があります」


「それが『経済大国』ということか」


「そうです。『経済大国』になるためには国の改革が必須。そしてそのためには財源が必要です。なので今回は高位貴族からの納税で財源確保をするということになるのです」


 ホット公爵は目を閉じて腕を組み考えている。


 この経済力を使って三大国の力を逆に利用する考えは私もこの国の立場を考えて出した答えだ。

 三大国に軍事力で上回ることは不可能に近い。

 ならば三大国に敵対するのではなく三大国に守ってもらえばいいという逆転の発想だ。


 もちろんこれはホット公爵にも話したとおり三大国と同等の『同盟』が結ぶことが前提だ。

 だがこれがうまくいったならもうダイアモンド王国は三大国の影に怯えることはない。


 やがてホット公爵はフウッと息を吐き出した。


「貴女と話していると昔ブラウンと話していた若い頃を思いだしますよ」


 ブラウン?ブラウンって国王のことよね。

 何でブラウン国王が出てくるのかしら。


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