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ただの日本のヒラ公務員(事務職)だった私は異世界の最弱王国を立て直して最強経済大国にします  作者: 脇田朝洋


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第146話 悪魔を本気にさせないでください

 私が振り向くと中年の男がいた。


「おっと……。へえ、姉ちゃん、可愛いねえ」


 その男は片手に酒瓶を持ち、お酒の臭いをプンプンとさせていた。


 くさっ! 何このおっさん。午前中から酔っ払ってるの?


「なあ、ちょっと遊ぼうぜ。姉ちゃん」


 男が私の腕を掴む。


「離してよ! あんたと遊ぶ気なんかないわよ!」


「そんなこというなよお」


「アリサを離しなさい!」


 私が酔っ払いに絡まれたのが分かったクリスが男に注意する。


「フン! ガキは黙っていろ!」


「私はもう成人してます! それよりアリサから手を離しなさい!」


「うるせえ!」


 クリスが私を掴んでいる男の手を掴み、離そうとする。

 男はそんなクリスのことを持っていた酒瓶を逆さにしてそれをクリスに振りかざした。


「危ない! クリス!」


「いてててて!!!」


 私の叫び声と目の前の男の悲鳴が重なる。

 私を掴んでいた男の手が離れて男が蹲る。

 男の手を掴み捻り上げたのはサタンだった。


「……遅くなってすみません……大丈夫ですか?……」


 サタンが来てくれたことに私はホッとした。


「ええ、大丈夫よ。サタン」


 私がそう答えるとサタンはその銀の瞳を男に向ける。


「離せよ!! このクソ野郎!!」


 男は手を捻り上げられて苦しいのか、顔を真っ赤にして怒鳴る。

 周囲の人々も何事かと立ち止まりこちらの様子を見ている。


 そしてサタンの銀の瞳に私は僅かな変化が生じたのを見逃さなかった。


「ダメよ! サタン!」


 私は考えるよりも先に言葉が出た。


 次の瞬間、喚いていた男の首先にサタンの剣先が突きつけられるがその剣先はギリギリのところで男を傷つけなかった。

 私たちにも男にもサタンが剣を抜いたのが分からないほどの速さだった。


「ひいいいいい!!!」


 一拍おいて男の悲鳴が上がった。

 

 ふう……マジで危なかったあ。ここでサタンに人を殺させるわけにはいかないもんね。


 私はサタンと一緒に過ごすことが多いから無表情に見えるサタンの表情の中にも僅かな感情が宿る時があるのがなんとなく分かっていたからサタンを止めることができた。


「サタン。私を守ってくれるのはありがたいけど、絶対必要がある時以外は人を傷つけるのはやめてちょうだい」


「……分かりました……」


 サタンは剣をしまった。


 男は腰を抜かして立てないようだ。

 そこへ騒ぎを聞きつけた警備隊がやって来る。


 私は警備隊に説明をして男は警備隊に連れて行かれた。


「ふう、とりあえず大事にならず良かったわ」


「アリサが危険な目に合うなんて充分大事ですよ」


 クリスにはそう言われたが私はサタンの方をチラリと見る。


 いえ、サタンを止められただけで良かったわよ。

 悪魔を本気にさせたらダメだって。


「じゃあ、買い物に行きましょう」


「はい。アリサ」


 私たちは市場に入り生活用品などが売っている所で目的の物を買う。

 私がワイン伯爵へと選んだペンには追加料金を払ってワイン伯爵の名前を彫ってもらった。


 これできっとワイン伯爵も喜んでくれるわね。


 クリスも目的の物を買えたようだ。


「クリス。買い物も終わったし、昼食を食べて帰りましょう」


「そうですね。それだったらこないだ見つけた美味しいお店があるので行きませんか?」


 こないだ見つけたお店?

 それってもしかしてデリアと行ったのかしら?


「もしかしてデリアと一緒にそこに食べに行ったの?」


「え? あ、はい。そうです……」


 クリスは顔を赤くしている。


 恋は順調にいってるみたいね。


 私はクリスと一緒にそのお店に向かった。

 お店は市場近くのステーキ屋だった。

 お店に入り私はサタンにも一緒に食べるように勧める。


「……私のことはお気になさらず……」


「いいえ。さっきは助けてもらったのだもの。食事ぐらい奢らせてよ」


 私が何度もサタンに言うとサタンの方が根負けしたのか私たちと同じ席に着いた。


「さあ。好きな物注文していいわよ。サタン」


「……はい……ではおすすめステーキの500グラムサイズを……」


 サタンは結構食べるのね。

 でも肉体労働がメインのサタンなら当たり前か。


 そういえばクリスはこのお店にデリアと来たのよね。

 デリアの情報をもう少し聞いておこうかな。


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