第143話 公爵はレベルが高そうです
その日の夕食はブランとゼランたちと一緒だった。
う~ん、疲れた身体に超絶イケメンの癒しは効くわねえ。
ブランもゼランも最初の頃よりは落ち着いて見れるようになったけど、何度見ても超絶イケメンはいいわ~
「アリサは今はどんな仕事をしているんだい?」
ブランが優雅に食事をしながら声をかけてきた。
「え~と、今は『乗合馬車の運行』と『高位貴族の納税』について検討中ですね」
「乗合馬車? 高位貴族の納税?」
ブランが怪訝そうな表情になる。
「乗合馬車は人流をスムーズにすることによって経済効果を狙う方法です」
私は現時点での乗合馬車の運行に関する素案をブランとゼランに説明する。
「なるほどね。確かに人が動けば経済も動くのは必然だもんね。良いところに目をつけたね」
「ありがとうございます。ゼラン様」
「もう一つの高位貴族の納税というのは?」
「あ、はい。いろんな新規事業や制度改革にはお金がかかるので収入を上げるための方法です」
私はコインと話したことを踏まえて説明する。
「ふむ。侯爵以上の高位貴族も国民であることには間違いないしな」
「だけど、おそらく高位貴族の反発は大きいだろうね」
ブランもゼランもやはり考えは同じようだ。
「ええ、なのでコイン様に教えてもらった高位貴族の反発を抑えられる人物として二人の公爵様に協力を頼んでみようかと」
「それはクラシック公爵とホット公爵かい?」
「はい。そうです。お二人のご意見も聞いておきたいんですが」
私の言葉にブランもゼランも難しい表情になる。
「クラシック公爵は作曲家でもあるせいか、少々変わり者の公爵だ。だが、彼のように貴族や平民を問わずの人脈の広さは他にはいない」
「そうだね。ブランの言うとおりだ。彼は人脈が広い分、その発言力は多くの者に影響を及ぼす人物だよ」
ふむふむ。クラシック公爵はちょっと変わり者か。
でも変わり者でも話が分からない人物かどうかは会ってみないと分からない。
「ホット公爵は私たちにとっても親戚に当たる人物で権力も強いし、由緒正しい公爵家の公爵として保守的な高位貴族からも支持が高い」
「でも本人はあまり野心家というタイプではないよ。宰相の姉を妻にはしているけど、そのことで国政に積極的には口を出すことはない。でもその分、口を出した時の影響は大きいけどね」
「そうなんですか?」
「うん、普段から温厚な人物だけど、敵に回すと厄介な相手だよ」
ゼランはそう言って肩を竦める。
そうか。少なくとも敵には回すべき相手ではないということね。
俺様的な二人が言うなら本当にホット公爵の持っている発言力は大きいのだろう。
「とにかく一度お会いしてみようと思います」
「アリサが会いたいと言うなら止めないけど。結構、大変だと思うよ」
「そうだな。ゼランの言うように大変だと思うが………でも、アリサはやるつもりなんだろう?」
ブランが美しい緑の瞳で私を見る。
その瞳には「期待している」という感情が伺える。
「ええ、最初から諦めたら改革なんてできませんから」
私はブランとゼランの二人に決意を述べる。
最初から諦めたら国の改革などできない。
私はこの国が豊かになってみんなが笑顔でいられるようなそんな国にしたいのよ。
「そうか。やっぱりアリサは素晴らしい女性だ。どうだ? そろそろ私との結婚証明書にサインしないか?」
「私もいつでもサインするよ。アリサ」
いえいえ、丁重にお断りさせていただきます。
まだ、二人のどちらかなんて選べないしね。