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第142話 二人の公爵を攻略します

 私は昨日ジルが休む前にまとめてくれた高位貴族の資産や収入に関しての資料を読んでいた。

 思ったとおりに高位貴族の資産は多く、それによる収入額も多い。

 そしてジルはその収入に対して税金をかけた場合の税収の見込み額も計算していた。


 ジルは有能で助かるわ。

 私の言葉で私が何を求めてるのか理解してくれるんだもん。


 私はその資料を見ながら考える。

 高位貴族からの税収の見込み額は現在の税収の約三割にも及ぶ金額だ。


 国の税収の三割アップを可能にするならこれは絶対に高位貴族からの納税はするべきね。

 でもどうやって高位貴族からの反発を回避できるのかな。


 いつもならジルに聞くのだが今日はジルは休みだ。

 元々、貴族というモノの力関係やその発言の影響に関しては私も知らないことが多い。


 だって私が伯爵令嬢になったのはこの世界に来てからだもんね。

 う~ん、とりあえずコインに聞いてみようか。


 私は財務事務省に向かった。

 首席財務事務官室に行くと扉をノックする。

 入室許可の声が聞こえたので部屋に入るとコインがいた。


「これはアリサ様。何か御用ですか?」


「はい。国の税収を上げる案を持ってきました」


「ほお。ではお話を聞きましょう」


 コインと私は椅子に座り私は『高位貴族の納税』について話をする。


「なるほど。高位貴族から納税させるということですか?」


「はい。ダイアモンド王国の法律書では国民は等しく納税の義務を負うと書いてありますので侯爵以上の高位貴族も『国民』である以上、納税させることは可能かと」


「まあ、高位貴族が今まで納税してなかったのは昔からの慣例ですからな。アリサ様の言うとおり法律上は可能でしょうが高位貴族からは強い反発があるでしょうな」


「ええ、なのでコイン様の知恵をお貸しいただけないかと」


「私の?」


「私は伯爵令嬢になってまだ一年も経っていなくて貴族の世界をあまりよく知らないので」


「ふむ。そうですか」


 コインはしばらく腕を組んで考えていた。


「これは、実現するのは難しいかもしれませんが………」


「どのような考えでも参考になりますので教えてください」


「そうですか。実はこの国には二大公爵家と呼ばれる貴族に大きな影響を与える二人の公爵がいます」


 二人の公爵? 公爵って爵位で一番上よね。

貴族の爵位は上から順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵だったはず。


「一人はクラシック公爵でもう一人はホット公爵です。もしこの二人の公爵が高位貴族への納税に賛成してくれるならおそらく他の高位貴族は反発したくてもできないと思います」


 それほど、その二人の公爵の発言力が強いということか。

 その二人を説得すれば他の高位貴族が反対できないってことね。

 ならば説得するのみ。


「コイン様。その二人の公爵様の特徴などを教えてくれませんか?」


「いいですよ。クラシック公爵はご自身が作曲家であると同時に芸術関係者を中心に貴族や平民と交流してその人脈の広さは貴族で一番と言ってもいいかもしれません」


 なるほど。作曲家の公爵か。


「もう一人のホット公爵は母親が先代国王の妹君で現国王とはイトコの関係にあります。そしてホット公爵の奥様は現宰相の姉君です」


 奥さんが宰相の姉ってことはホット公爵は宰相の義兄かあ。

 説得するのは難しそうね。


「ですが、ホット公爵自身はご自分の血筋や立場を理解しておられて基本的に宰相に味方するわけでもなく、王族の身内として国王に味方するわけでもなく、自ら国の政策に発言することは少ないです」

 

 へえ、中立の立場ってことかな。


「ホット公爵はその由緒正しい家柄と人を惹きつける人柄で高位貴族からの支持が厚い方です。そのためホット公爵の発言力は貴族の中でも強いのです」


 ふ~ん、血筋や家柄を重視する高位貴族の支持を集めているのか。

 それは今後のためにも味方につけておきたい人物ね。


「分かりました。とても参考になる意見をありがとうございました」


「いえいえ、でも実際にこの二人の公爵を説得するのは大変ですよ」


「ええ。でもまずはお話だけでも聞いてもらえるように交渉してみますわ」


 私はコインとの話を終えて総務事務省に戻った。


 今度は二人の公爵への根回しか。

 でもこれがうまくいったら税収三割アップはおいしい話だもんね。

 チャレンジするだけの価値はあるわ。


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