第135話 両想いのようです
明日に控えたお茶会のために午後は休みをもらった。
セーラに「お茶会に出るならどのドレスを着るかとか装飾品はどうするかのお時間をください」と言われたからだ。
ハッキリ言って私は全てセーラが選んだモノでいいと思ったがセーラは「普段着のドレスとは違います」と譲らなかった。
私は総務事務省から自分のホシツキ宮殿に戻る途中でクリスがいる部屋の近くでシャンデリアに出会った。
そうか、こんな時間に宮殿に帰ることがなかったから彼女とはあまり会わなかったのね。
シャンデリアは掃除の仕事をしているようだったから昼間に部屋の主がいない時に掃除をするのが基本なのかもしれない。
シャンデリアは私の邪魔にならないように廊下の隅に立って頭を下げている。
ちょうどいい機会だから彼女がクリスをどう思ってるか聞いてみよう。
「ねえ、貴女、デリアよね?私はクリスの姉のアリサだけど覚えてる?」
私が声をかけるとシャンデリアは少し驚いた表情で頭を上げる。
「は、はい。アリサ様のことは覚えてます」
「そう。ちょっと貴女に話があるんだけど時間ある?」
「時間は少しならありますが………」
私は廊下に他の人がいないのを見て尋ねる。
この場合は護衛のサタンはいてもいないこととする。
サタンは口が堅いからだ。
「単刀直入に言うけどデリアはクリスのこと好きなの?」
「え? あ、あの………」
「この際身分とかそういうの考えなくていいからさ」
「は、はい。クリスタル様のことはお慕いしております」
シャンデリアは真っ赤な顔で答える。
ふ~ん、両想いかあ。なんか反応が初々しくていいなあ。
「そう。だったらこれからもクリスを支えてあげてね」
「そんな、私などにクリスタル様をお支えなど」
「そんなに難しいことじゃないわよ。なるべく一緒にいてあげるだけでいいから」
「そ、それなら、喜んで………」
シャンデリアはコクリと頷く。
好きな人が一緒にいてくれる。
それはとても幸せなことだ。
「仕事の邪魔してごめんなさいね。それじゃ、今度またゆっくり話しましょう」
「はい。アリサ様」
私はシャンデリアと別れて自分の宮殿に戻る。
「アリサ様。お待ちしてました」
セーラが部屋で待ち受けていた。
「ごめんね、セーラ。ちょっと仕事が立て込んでてね」
「お茶会も立派な「社交」というお仕事ですよ。それと先ほどブラント王太子様とゼラント王子様から贈り物が届いております」
「ブランとゼランから?」
「はい。明日のお茶会用だとの伝言です」
私は嫌な気がした。
そしてセーラが持って来た箱を開ける。
箱の中身はダイアモンドのネックレスとイヤリングだった。
またあの二人は無駄遣いして!
あの二人から税金をとってやろうかしら?
どうせブランとゼランに文句を言っても「個人財産から支出した」と言われれば反論できない。
まあ、王族はダイアモンド王国の法律書でも「公人」扱いだから純粋な王族からは税金を取れないけどさ。
ん? でも個人財産からは税金取れるかな?
ちょっと考える余地はありそうよね。
私が考え込んでいるとセーラの声が聞こえる。
「ではこの装飾品に合うドレスを選びましょう」
セーラが合図をすると侍女たちがドレスをいくつも持って来る。
普段のドレスとは全然違う豪華なドレスだ。
「セーラ。舞踏会じゃないのにこのドレスは豪華過ぎない?」
「あら、アリサ様。これはお茶会や昼間の行事用ですから舞踏会や夜の行事用のドレスはちゃんと他に用意しております」
マジで? こんなに豪華なドレスよりもっと豪華なドレスがあるの?
「今回は高位貴族令嬢が集まりますからね。アリサ様にはブラント王太子様やゼラント王子様と並んでも問題ない服装でないといけません」
いや、あの超絶イケメンの二人と対抗しても素材が素材だから無理だと思うけど。
「さあ、始めましょう。アリサ様」
私の心の声など無視されてセーラは嬉々として私を着せ替え人形のように次から次へとドレスを着替えさせた。
ようやく明日の服装の全てが決まった時には夕方になっていた。
マジでしんどいんですけど。