第132話 彼女たちの本音が気になります
「アリサの提案の『契約書の義務化』と『文官の給与改定』については先ほど父上のサインをした書類を総務事務省に送っておいたから」
「ありがとうございます。ブラン様。明日、確認します」
ブランは仕事が早いわね。助かるわ。
ブランはニコリと私に微笑んだ。
う~ん、やはり超絶イケメンの笑顔はかなりの武器よね。
それにしてもさっきのキャサリンはすごい勢いだったなあ。
そんなにブランのことが好きなのかな?
政略結婚で決まったような婚約だったかもしれないけどキャサリンやカテリーナは本気でブランやゼランを愛してたのかも。
私はなんだか自分の心がモヤモヤしたがその感情は抑えたままブランに聞いた。
「ブラン様。先ほどキャサリン様が言ってたことは本当ですか?」
「キャサリンの言ってたこと?」
ブランは眉をひそめたが私は言葉を続けた。
「プライベートで女性と食事をしなかったことです。キャサリン様は婚約者だったのでしょう?」
「私が望んだ婚約ではない。そんな女のために時間を作るなんて面倒なだけだ」
ブランはそんなの当たり前だという顔だ。
「ゼラン様もカテリーナ様と食事をしたことないのですか?」
「ああ、ないね。カテリーナはキャサリンと違って王子宮殿に気楽に入れる身分ではないからブランよりは気楽だったな」
そうか。キャサリンは王族だから奥宮に住んでるけどカテリーナは宰相の娘だもんね。
宰相の娘でも許可がなければ奥宮には入れない。
「お前が羨ましいと思うな、ゼラン」
「まあ、そう言うなよ。じゃんけんで負けたのはお前だろ、ブラン」
「それはそうだが………」
え? 今、なんて言ったの?
じゃんけんとか言わなかった?
「あの、もしかしてキャサリン様とカテリーナ様とどちらと婚約するかじゃんけんで決めたんですか?」
私は恐る恐る聞いてみる。
「ああ、そうだよ。どうしても婚約だけでもしてくれってうるさいからどちらと婚約するかゼランとじゃんけんしたんだ。負けた方がキャサリンってことで。何か、おかしかったかな?」
充分、おかしいわよ! 自分の結婚相手をじゃんけんで決めるなんて!
でも今の話だと負けた方がキャサリンってことよね?
なんでだろう?
「でもなんでキャサリン様が負けた方の婚約者になったんですか?」
「え? だって、さっきみたいにキャサリンは奥宮にいるからカテリーナより逃げるのが大変だからな」
逃げるのが大変って………。逃げるの前提かよ!
「でもキャサリン様やカテリーナ様はブラン様とゼラン様を好きだったのでは?」
私の言葉にブランもゼランも不愉快気な顔になる。
あれ? 違うのかな?
「あの二人は私たちを愛してるわけじゃない。私たちが王太子や王子だから愛してるのだ」
ブランの言葉には嫌悪感さえ感じる。
まあ、王太子や王子と結婚するのは普通に考えてみんなが憧れることよね。
でもキャサリンやカテリーナは私よりも長くブランやゼランと過ごしてきたはずだ。
ブランやゼランに好意はなくてもあの二人はブランやゼランが好きということも考えられるだろう。
王太子とか王子だから好きと一概には言えないんじゃないかな。
「そうなんですか?」
「ああ。アリサに誤解されたくないから面白いモノを見せてあげるよ。今度の休日に母上主催のお茶会がある。呼ぶメンバーは高位貴族の令嬢だ。アリサもそこに出席すれば分かる」
「お茶会ですか?」
「そうだ。そこにはキャサリンもカテリーナも参加する。そこで彼女たちの本音が分かるはずだ」
キャサリンとカテリーナの本音か。
それは確かめておいたほうがいいわね、今後のためにも。
「分かりました。では今度の休日にお茶会に参加させてもらいます」
「母上にはアリサが参加することは知らせておくから」
「はい。よろしくお願いいたします」
そう言ってその日の夕食は終えた。