第128話 漫画本から得るものもあります
ブラウン国王の承認をもらい私は総務事務省に戻って来た。
「アリサ。国王陛下の承認は取れましたか?」
クリスが待ちかねていたように私に聞いてくる。
「ええ、バッチリよ。これからは各関係機関への通達を出す作業になるわ」
「分かりました。そのように手配します」
「お願いね。クリス」
私はそう言って自分の席に座る。
さてっと。一番重要な国王様の承認が取れたし、次は何をしようかな。
あ、そういえば乗合馬車の件でギークに聞きに行かないとだったわね。
ギークはいるかな。
私は午後になるとオタク事務省に足を向けた。
オタク事務省の受付にギークがいるか聞くとギークは首席事務官室にいると教えてくれた。
また、漫画本でも読んでるのかな。
漫画本読むのが仕事の内って普通は考えられないわよねえ。
でも漫画本から得る知識も馬鹿にはできないのも事実よね。
私も子供の頃から漫画本はよく読んでいた。
漫画というのは基本的にフィクションだ。
だけど歴史ものの漫画はいろんな戦いのことや登場人物が実際の史実に基づいて設定されていることも少なくない。
なので私は漫画本から歴史を学んだこともある。
一時期は「子供の教育に漫画本は悪影響だ」なんて風潮があったけどそれは漫画本を知らない大人たちの考えに過ぎない。
それに漫画本やアニメはいろんな「夢」を子供たちに与えてくれる。
実際にある漫画本を読んで「こんな道具を作ってみたい」と思って研究者の道を選んだ人もいる。
そして現在はその漫画本に似たような道具や機械が発明されているらしい。
私はそんなことを考えながらギークの部屋に来た。
扉をノックすると「入れ」と中から声が聞こえる。
「失礼します」
私が部屋に入るとギークはやはり漫画本を読んでいた。
「なんだ、アリサか」
ギークはチラリと私を見て漫画本を閉じる。
「読書中にごめんなさい。ギークに相談があって」
「相談? まあ、座りなよ」
私はギークの前のソファに座る。
「何の相談?」
「実はね、今度『乗合馬車の運行』をしたいなと思ってるの」
「乗合馬車?」
ギークは不審そうな表情をする。
「そう。今は馬や馬車を個人で持ってない民は歩きで移動しているでしょう?だからそういう民のための移動の足を作ってあげようと思って」
私は簡単に自分で考えた乗合馬車の構想をギークに話す。
「ふ~ん、つまりその乗合馬車に少しお金を払えば誰でも乗れるってこと?」
「そうよ。王都内を走る馬車と町と町を繋ぐ馬車を作ってみたいの。そうすれば人の移動ももっと短時間になって人流がスムーズにいけば経済的にも効果あると思うのよね」
「なるほどね。つまりそういう使用の馬車がないか僕に聞きにきたのか」
「そういうこと。私は馬車の知識がないから」
私はこの世界に来て初めて馬車に乗ったんだもん。
どういうタイプの馬車がこの世界にあるかはほとんど知らない。
オタク事務省には乗り物研究をしている部署があるのは前に聞いたからね。
「それなら馬車を研究している場所に案内してやるよ。そこには馬車に関するあらゆる資料があるから」
「それは助かるわ。ありがとう、ギーク」
「別に。僕はアリサのことを気に入ってるからね」
ギークはそう言って部屋を出て行く。
私はギークの後をはぐれないようについていった。
やはりオタクはその道のプロだもんね。
彼らの知識は馬鹿にはできないわ。