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第127話 みんなで頑張ることが大切です

 次の日の午前中に今回の首席会議で承認された『契約書の義務化』と『文官の給与改定』についての国王への説明が行われた。

 出席者はブラウン国王、ブラント王太子、ゼラント王子、ハウゼン宰相、そして首席総務事務官の私と補佐する事務官が数名いる。


 本来は国王と王位継承権第一位の者に説明するのだが、ブランとゼランは双子で厳密に言えば二人とも王位継承権第一位なのでゼランも会議に加わっているとのことだ。


「では今回の『契約書の義務化』についてと『文官の給与改定』について首席総務事務官殿から説明がございます」


 ハウゼン宰相がそう言って会議が始まる。


「では説明させていただきます」


 私は昨日の首席会議で発言した各首席事務官の説明や意見も踏まえながらブラウン国王に説明する。

 ブラウン国王は国王用に用意した資料を見ながら私の話を聞いてくれる。

 ブランもゼランも真剣な顔をしている。


 やはりブランとゼランが実質的な政治を行っているという噂は本当のようだ。

 ブラウン国王はただ聞いてるだけだがブランとゼランは私の説明を聞きながらメモを取っている。


「なるほど。アリサ首席事務官の話はよく分かった。確かに商売の取引によるトラブルはなるべくない方がいいし、雇用契約書によって個人が不利益を被るのは私としても見過ごせない」


 ブラウン国王はそう言ってハウゼン宰相を見る。


「ハウゼン宰相。これまで契約書は国同士もしくは領主貴族同士しか結ぶことはなかったが国民に対してこの案を導入することをこれまで検討はしなかったのか?」


 ブラウン国王に質問されてハウゼン宰相は汗を拭きながら答える。


「恐れながら今までに国民に適応されたことの前例がなかったため私としても気付かず申し訳ありません」


「だが、ハウゼン宰相。経済事務省の資料によると商会や商人のトラブル、さらに雇用主と使用人とのトラブル件数が千件以上報告されているがこれについては調査をしなかったのか?」


 ブランが攻撃に出た。

 ブランやゼランには国王よりも詳しい資料を私は渡しておいたが効果があったようだ。


「ブラント王太子殿下。それは今まで経済事務省からの報告が私になかったため私も実態を知りませんでした」


 ハウゼン宰相は経済事務省に責任を擦り付ける作戦にしたようだ。


 そうはいかないわよ、宰相さん。


「恐れながらブラント王太子殿下。首席経済事務官は前首席総務事務官にこのトラブルの件数について以前から相談していたのに前首席総務事務官は「問題なし」と判断したと証言しています」


 私が発言するとハウゼン宰相は私を睨みつける。


 睨んだって怖くないわよ。

 私は事実を言ってるだけだもの。

 それをどう判断するかは国王様やブランやゼランが決めることだもんね。


「今のアリサ首席総務事務官の話は本当か?ハウゼン宰相」


 ブランの緑の瞳が冷たい視線になる。


 う! 超絶イケメンの氷の攻撃だわ!


「前首席総務事務官は私の弟ではありましたが私には前首席総務事務官からそのような話はまったく聞いたことがなく、私としても事実であれば遺憾であります」


 ふ~ん、自分のために身内を切り捨てたわね。


「そうか。ではそのことに気付いてくれたアリサ首席総務事務官には感謝せねばならないな。そうですよね、父上」


「そうだな。ブラントの言う通りだ。よくぞ国民のために気付いてくれた。感謝するぞ、アリサ首席総務事務官」


「もったいない御言葉ありがとうございます」


 ブラウン国王の言葉に私はお礼を言う。

 ハウゼン宰相は苦々しい顔で私を見ている。


「文官の給与改定についてはいかがでしょうか?」


 私がブラウン国王に尋ねると国王は笑みを見せる。


「文官は私の手足になって働いてくれている。予算に問題ないならこの「残業代」に関しては特に私からは言うことはない。ブラントとゼラントはどうだ?」


「私も特に言うことはありません。むしろこれまで気付いてやれなかったことが悔やまれます」


「私もブラントと同じ意見です。文官は物ではなく血の通った人間であることをアリサ首席総務事務官は教えてくれた気がします」


 私は最後のゼランの言葉が胸に染みた。


 そうよ。公務員だって一人の人間なのよ。

 疲れもするし、苦しみもするし、泣いたり笑ったりする。

 そこに公務員だからとか民間人だからとか関係ない。

 みんなでこの国をよくしていかないといけないのよ!


「ではこの二つの案件に対して国王として承認するものとする」


 ブラウン国王はそう宣言して会議は終わった。


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