第124話 文官の馬番使用料は無料です
休日明け。私は総務事務省に出勤する。
クリスとジルも出勤して本日の仕事が始まる。
「アリサ様。文官専用の馬番の費用を総務事務省で支出できるか試算してみましたが今の馬番の人数や馬の数などが極端に増えなければ充分可能です」
ジルはそう言って私に資料を見せる。
資料は費用の試算が分かりやすく書いてある。
やっぱりジルは有能ね。
ちゃんと報告事項のポイントを押さえて資料が作られているわ。
私はその資料を確認してジルに指示を出す。
「これなら大丈夫そうね。来月から文官の馬番の使用料を無料にするということを各事務省に通達してちょうだい」
「分かりました」
ふう、ひとつの問題はクリアね。
「アリサ。首席財務事務官様から残業代についての単価に関する資料が届きました」
今度はクリスが私に資料を渡す。
財務事務省として残業代の単価の計算ができたのね。
どれどれいくらになったかしら。
私は資料を確認すると単価は基本給の100分の110にしたいと書かれていた。
まあ、これぐらいなら財務事務省も頑張った方ね。
もっと削ってくるかと思ったけど。
「クリス。首席財務事務官宛てにこの単価で承諾したことを伝えてちょうだい。あと、この単価を首席会議の資料に反映させておいて」
「分かりました。すぐにやります」
「それと首席会議の日程はいつ?」
「はい。各首席事務官の予定と宰相様の予定を調整して明日の午後2時からに行います」
「分かったわ。準備を急いでちょうだい」
「はい」
私は自分でも首席会議の時に宰相に質問されてもいいように手持ち資料を作成していく。
あ~あ、やっぱりパソコンが無いのはキツイわね。
そして私は昨日ブランたちと出かけた時に思ったことを思い出した。
そういえば、乗合馬車とかの件ってどこの事務省の管轄になるのかな?
「ジル。ちょっと聞きたいんだけど」
「はい。何でしょうか?」
私は簡単に「乗合馬車」があったらいいのではないかとジルに話してみる。
「なるほど。確かにそういう物があれば国民も移動が楽になりますし、文官の一部もそれを利用して王宮まで通って来れるかもしれません」
「そうよね。具体的にどの事務省と話した方がいいかしら?」
「そうですね。まず馬車のタイプはどのような物が向いているかはオタク事務省の乗り物研究部門に聞いた方がいいと思います。街中を走る馬車と町と町の間を走る馬車では違うタイプの馬車になるでしょうし」
そうか。そうよね。街中を走る馬車と町の間を走る馬車じゃ違うタイプになりそうね。
そもそも乗合馬車に適した馬車があるか分からないし。
「それと経営を民間に委託するなら経済事務省ともどこの商会に委託するか相談しないとですし、最終的な委託費用などを財務事務省にも調整してもらう必要があると思います」
なるほど。乗合馬車の委託先ね。
馬車を扱う商会も決めないとか。
それにその費用はもちろん財務事務省に話しておくべきよね。
まずはオタク事務省のギークに相談してみるか。
でもとりあえずは明日に迫った首席会議の準備ね。
「ありがとう。ジル。参考になったわ」
「いえ。いつでも聞いてください」
私はその日は資料作りで一日が終わった。
どこの世界でも休日明けの仕事はエンジンかかるまで疲れるのよねえ。