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第116話 オタクを味方につけました

 私は次の日オタク事務省に向かった。

 オタク事務省は中央宮殿ではなく東中央宮殿と呼ばれる場所にある。

 東中央宮殿にはいろんな研究所があるらしい。


 私は以前ブランに貰った王宮ダンジョンの地図で東中央宮殿の場所を確かめて歩いて行った。

 東中央宮殿にたどり着いたのは良かったがそこも中央宮殿に負けないくらい広かった。


 まったく何でこんなに広いのよ!


 私はようやくオタク事務省の受付を見つけて首席オタク事務官に会いに来たことを伝える。

 そして首席オタク事務官室に案内された。


 私が扉を開けて入るとまだ10代としか思えない男性が一人いた。


 え? この人が首席オタク事務官かしら? 首席事務官にしては若すぎないかな?


「あの、首席オタク事務官様に会いに来たんですが……」


 私は恐る恐るその少年に尋ねた。

 その少年は読んでいた本から顔も上げずに答える。


「何の用?」


「あの首席オタク事務官様ですか?」


 少年はチラリと私の方を見て本を閉じる。


「ここには僕しかいないじゃん。僕が首席オタク事務官に決まってるでしょ。あんた、目が悪いの?」


 今、「あんた」って言った?

 それにこの人が首席オタク事務官なんて若すぎる上に失礼な人ね!


「いえ。失礼しました。私は首席総務事務官のアリサ・ホシツキ・ロゼ・ワインです。アリサとお呼びください」


「ふ~ん、アリサって言うの。僕はギーク・アキバ。ギークでいいよ」


 いきなり呼び捨てですか?

 今までの首席事務官たちは一応私のこと「アリサ様」って様をつけてくれたわよ。

 どう見てもこの人私より年下なのに。


「ギーク様ですね」


「様はいらない。ギークでいいから。みんなそう呼んでるし」


「そう。じゃあ、ギークって呼ばせてもらうわ」


 なんか調子狂うなあ。やっぱり首席オタク事務官って変わってる人間なのかなあ。


「それで何の用?」


「はい。次の首席会議での議題の事前説明に来ました。『契約書の義務化』と『文官の給与改定』についてです。これが資料です」


 私が資料を渡すとギークは資料を受け取ったが中を見ようともしない。

 私は仕方なく契約書の義務化と文官の給与改定について説明する。


「ふ~ん。分かった。この案件には賛成するよ」


「ありがとうございます。何か内容について質問はありますか?」


「質問して欲しいの?」


 く! 何なのよ。この男は。

 失礼過ぎない?


「いえ、内容を正しくご理解いただけたか心配で」


「内容は分かったよ。僕は無能じゃないから」


 どうしてこんな奴が首席オタク事務官になれたのかしら?


「今、漫画本を読むのに忙しいんだ。質問があったら後で部下の者に総務事務省まで質問事項を聞きに行かせるから」


「ちょっと! その態度はないんじゃないの! 国の重要な案件を決めるのよ!」


 私はついギークの態度に我慢しきれなくなって強い口調で反論してしまった。

 ギークは驚いたような顔をする。


「へえ、アリサって本当にこの国のために仕事しようと思ってるの?」


「そんなの当たり前じゃない。首席事務官である以上国のために働くのは当然じゃない」


「でもこの国は三大国に攻められたらあっという間に潰される弱小王国だよ」


「それが何よ。弱小王国なら三大国が手を出せないような最強王国にすればいいじゃないの」


 私がそう言うとギークは面白そうに笑う。


「ハハハ。本気で言ってるの?この国の軍隊は三大国に比べたらあまりに非力だよ」


「あら、最強って言うのは軍隊の強さだけでは決まらないわ。この国が無ければ三大国にも不利益になると三大国が認めれば攻められることはないのよ」


「ふ~ん、面白い考えだね」


「そうかしら。私はこの国を守りたいのよ。それにこの国が戦場になったらギークだって漫画本読んでる暇は無くなるわよ」


「そうか……。それは困るな」


「でしょ?いつまでも平和に漫画本読める国に私はしたいのよ」


「分かったよ。僕はアリサに協力するよ」


 ギークはそう言って私の資料を見始めた。

 その紙を捲るスピードは速い。


 ちょっと、そんなスピードで読んで内容が頭に入るのかしら。


 資料を読み終わってギークは言う。


「さっきの説明してくれた他の事務省が指摘した事項を解決したら特に問題はないよ。オタク事務省としても研究者と雇用契約書を結ぶよ」


「そう。ありがとう。これは素案だから今回各事務省に指摘されたことを踏まえて最終案にするわ」


「うん。それで問題ない」


 ところでギークも何かのオタクなのかな?

 漫画本読んでたしアニメオタクとか?


「ところでギークは何の研究してるの?」


「僕はあらゆる研究部門で研究されてることが頭に入っているから特にこれと言ったものはないけど、強いて言えば漫画本が好きだね」


「へえ、そうなのね」


「何か分からないことは僕に聞いてよ。アリサになら話してあげるから」


「ありがとう。では今日はこれで失礼するわ」


 私はオタク事務省を出た。


 やっぱり首席オタク事務官は変わり者だったわね。



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