第113話 悪魔の判断基準は食事です
私は次に外交事務省に向かった。
首席外交事務官に会いたい旨を伝えると事務官が案内してくれる。
首席外交事務官室の扉をノックすると「どうぞ」と声が聞こえる。
中に入ると男性が椅子に座って書類を見ていたがすぐに書類を置いて私の顔を見る。
金髪に茶の瞳の30代前半の男性だ。
そういえば今まで会った首席事務官って30代から40代くらいよね。
日本の省庁のトップを考えたら首席事務官としては若い方かしら。
まあ、この国では12歳で大人だし、日本の感覚とは違うのかもね。
「初めまして。首席総務事務官のアリサ・ホシツキ・ロゼ・ワインです。アリサとお呼びください」
「どうも初めまして。私は首席外交事務官のプレーン・ジェットと申します。どうぞプレーンと呼んでください。アリサ様」
「ありがとうございます。プレーン様」
プレーンは私に椅子を勧めて自分も座る。
「今日の御用は何ですか?」
「はい。今度の首席会議で決める『契約書の義務化』と『文官の給与改定』についてです」
私は資料を渡して説明する。
「ふむ。内容は分かりました。元々我が省では外国と契約書を交わすことには普段から慣れていますからな。問題はないでしょう」
そうか、確か国同士が約束する時は契約書を交わすことが普通だって以前聞いたものね。
「そうですか。残業代の方はどうですか?」
「基本的には賛成ですが我々は外国に行くことも多いのですがその出張の場合は残業代の対象ですか?」
「いえ、それは残業代ではなく出張の旅費の中でやりくりしてください。今回はあくまで事務省で働いた残業代が対象です」
まさか、旅費を出さないってことはないわよね?
「あの、プレーン様。出張の旅費は出るんですよね?」
「もちろん出ますよ」
私はその言葉に少し安心した。
やっぱりそれぐらいは出るわよね。
「残業代に関しては分かりました。外交事務省としては特に問題はありません」
「分かりました。ではこの案件に関してはこのまま進めます。あのプレーン様、私はあまり三大国のことを知らないのですが三大国について教えてくれませんか?」
「三大国? サファイヤ王国やルビー王国やエメラルド王国のことですか?」
「簡単でいいので国の特徴などを知りたいなと思いまして……」
いずれ三大国にダイアモンド王国が攻められないようになんとかできないか考えるにしても敵の情報は大事だ。
「そうですねえ、サファイヤ王国は温暖な気候で主に農産物などを国の産業としています。三大国の中では一番恵まれた土地を持っていると言ってもいいでしょう」
なるほど。肥沃な土地を持っているということか。
「ルビー王国は北に位置するため一年の半分は冬みたいに寒い国です。ここでは鉱山資源が豊富です。鉄なども多く取れるので武器を作って軍隊を強化していますね」
ふむ。鉱山資源が豊富か。鉄があれば武器は作りやすいわよね。
「エメラルド王国は国土の半分は砂漠地帯です。なので食料確保には苦労しているみたいですが逆に砂漠のオアシスでしか取れない薬の原料になる植物があるのでそれは高値で取引されています」
砂漠地帯かあ。それは食糧難になりやすいわよね。
でも薬になる植物は貴重よね。
「ありがとうございました。プレーン様」
「いえ、また分からないことは聞いてください」
「はい」
私は外交事務省を出て時間を確認する。
もう一つくらい回れそうね。
私は次は経済事務省を目指す。
その間に私はサタンと話す。
「サタン。貴方は三大国に行ったことがあるの?」
「……はい……あります……」
「サファイヤ王国はどんなところ?」
「……食事がしょっぱいです……」
「ルビー王国は?」
「……食事が硬いです……」
「エメラルド王国は?」
「……食事が辛いです……」
サタンの中では食事が判断基準なのね。
そういえばダイアモンド王国にいる理由は好きな食べ物があるってことだったもんね。
それにしてもサタンの好物って何かしら。
手に入ったら私にも食べさせてくれるって約束したけど気になるわ。
私はふとモチ大福屋のイチゴ大福を思い出す。
こういう疲労が溜まった時は甘い物が欲しくなるわよね。
三大国でイチゴ大福があるとすれば農産物が多いサファイヤ王国かな。
イチゴ大福ちゃん、必ず貴方を見つけるから待っていてね!




