第110話 モンスターでも仲間です
その夜はなんとかグリーン王妃の攻撃をかいくぐりながら自分の宮殿に戻った。
あ~、国の改革もやること多いけど、王子たちとの結婚問題もいつまでもスルーできないしなあ。
王妃の心配を考えると早く王子と結婚してあげた方がいいとは思うけどやっぱり恋愛結婚がいいわよね。
ブランもゼランもどちらかというと好きだけど二人と結婚するわけにもいかないし。
私はそう思いながらその日は就寝した。
翌朝。セーラがブランとゼランが朝食を共にしたいと連絡があったと寝起きに教えてくれた。
今度はモンスター王子たちの相手か。
でも超絶イケメンを見ることは私の活力にもなるから断るつもりはない。
私は着替えてブランとゼランの待つ食堂へ向かう。
「おはようございます。ブラン様、ゼラン様」
「おはよう。アリサ」
「おはよう。いい朝だね、アリサ」
ブランもゼランも今日も超絶イケメンオーラを発している。
最初はこの超絶イケメンオーラにやられてた感じがあるけど、最近はこの二人に会うとなんかホッとする。
人間というものは慣れるものなのね。
この二人もモンスターだから気をつけないといけない存在だけどこの王宮ダンジョンでは数少ない味方だ。
しかも二人とも攻撃力も高いし、仲間モンスターとしてはとても頼りになるしね。
「アリサ。昨日は母上と夕食を共にしたと聞いたけど何か言われたかい?」
ブランが心配そうに聞いてくる。
まあ、二人との結婚を迫られたことはあったがグリーン王妃が嫌いなわけじゃない。
グリーン王妃は王妃として国を守ろうとしているだけだ。
ある意味敵に回さなければとても頼りになる人物だということは分かった。
私は真の通った女性は好きだ。
「いえ。特には何も。とても楽しい時間を過ごさせていただきました」
「そうか。ならいいが……。母上に無理難題を言われたら私たちに言っておくれ。注意しておくから」
「大丈夫ですよ。王妃様は優しい方です」
間違っても王妃の悪口なんて言えないわね。
モンスター王子たちVS母親モンスターの戦いになったら王宮に血の雨が降りそうだもの。
ここは平和にいかないと。
「そう言ってくれると私たちも嬉しいよ。ところで今日はアリサはどんな仕事をする予定かな?」
「えっと、契約書の義務化と文官の給与改定のための首席事務官への事前説明の続きです」
「へえ、さすがはアリサだね。もうそんな難しいことに取り組んでるんだ」
ゼランが感心したような声を上げる。
「今日はどこの事務省を回るんだい?」
「今日は軍隊事務省と外交事務省の予定です」
ブランの問いかけに私は頭の中のスケジュールを思い出しながら答える。
「軍隊事務省に行くなら私と一緒に行こう」
「ブラン様とですか?」
「私は王国軍の元帥だからね。定期的に軍隊事務省にも顔を出しているんだ。ちょうどいい機会だから王国軍の訓練を見学するといいよ」
「訓練の見学ですか?」
「なら私も行こう」
今度はゼランが口を挟む。
「ゼラン。お前は仕事があるんじゃないのか?」
「私は仕事の調整ができない無能ではないからね。それに私だって王国軍の第一将軍だ。王国軍の訓練を見学するなら私が案内してもおかしくあるまい」
ゼランはブランの冷たい視線を余裕で受け止める。
うっ! また、こんな小さなことで争わないでよ!
「ブラン様、ゼラン様。私はお二人とご一緒に見学がしたいです」
私が控えめな言葉で言うとブランもゼランも私を見る。
「仕方ない。アリサの希望を叶えるか」
「そうだな。アリサが三人でと願うなら仕方ない」
良かったわ。丸く収まって。
仲間とは仲良くしないとね。
たとえモンスターでも。