表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/257

第109話 国王を決めるのは私のようです

 セーラの案内で私は王妃の待つ食堂に向かう。

 食堂はもちろん王族の居住区にある。


 王族が住んでいる所は「奥宮」と呼ばれていて奥宮は大きく三つに分かれている。

 国王と王妃が暮らす「国王宮殿」とブラントとゼラントが暮らす「王子宮殿」、そしてその他の王族が暮らす「王族宮殿」である。


 私がブランとゼランと時々食事をするのは王子宮殿なので今回初めて国王と王妃が暮らす「国王宮殿」に入った。

 国王宮殿の食堂に行くと既に王妃が席に着いていた。


「王妃様。遅くなりまして申し訳ございません」


 私が謝ると王妃はニコリと笑みを見せる。


「いいのよ。アリサは首席総務事務官の仕事があるのだもの。忙しいのは分かっているから」


 私が席に着くと夕食が始まった。


 国王は一緒に食べないのかな?


「あの国王様は一緒にお食事をしないのですか?」


「ああ、いつもは一緒なんだけど今日は政務で外出してるの。帰るまでもう少しかかると思うわ」


「そうでしたか」


 へえ、国王は外出中かあ。


 ちなみにまだ紹介していなかったがこの国の国王の名前はブラウン・ライト・ダイアモンドで王妃の名前はグリーン・レイン・ダイアモンドだ。

 国王は茶色の瞳だし王妃は緑の瞳。


 瞳の色で名前を決めたのかなあ。


 ブランもゼランも緑の瞳だが王妃の瞳はブランたちに比べると少し色が濃い。


「アリサ。お仕事は順調?」


「はい。周囲の方に助けられながらやっています」


「そう。それは良かったわ。それで結婚相手は二人のどちらかに決めているの?」


 出た! 母親モンスターの攻撃ね。


「いえ、まだ決められません。ブラント王太子もゼラント王子もお二人とも魅力のある男性ですし」


 私はとりあえず二人のモンスター王子たちを褒めておく作戦に出た。

 自分の子供を褒められて嬉しくない母親はいないわよね。


 ところが王妃は溜息をつく。


「魅力ある男性ねえ……。確かに外見は悪くないとは思うのだけどなかなかずる賢い性格なのよねえ。いったい誰に似たのかしら……」


 王妃様。ブランとゼランは貴女に似たんだと思いますよ。


「でも仕事から帰って来た時に二人が『運命の女性と出会ったから婚約解消する』って言った時はビックリしたわ」


 ハハ……。それはそうでしょうね。二人とも婚約者がいたんだもんね。


「陛下に『婚約破棄できないなら今後政務はしない』なんて脅すものだから陛下も困ってしまって結局婚約破棄を認めたのよ」


 自分の父親とはいえ国王を脅すなんてさすがはモンスター王子たちね。


「陛下も政務をやってはいるけど正直息子たちの方が政治的才能があるのは事実だから二人に仕事放棄されると国としては機能できなくなるわ」


 へえ、ブランもゼランも仕事はできる男なのね。


「私よりも婚約破棄された婚約者様たちの方がお二人にはお似合いだったのではないですか?」


「とんでもない!」


 私は自分の気持ちを言ってみたが王妃は強く否定する。


「私はね、アリサ。この国の王妃になった時に必ず国を守っていくと自分自身に誓ったわ。王妃として国を守るということは立派な跡継ぎを産むことよ」


 そうでしょうね、王族に嫁ぐということは跡継ぎを産むのが仕事のひとつと言ってもいいでしょうね。


 王籍のある王族は複数婚が認められているとはいえ現在ブラウン国王にはグリーン王妃以外の妃はいない。

 王妃はブランとゼランを産んだから王妃としての役目を果たしたとも言える。


「でもあの息子たちは全然結婚する気がなくて強引に婚約をさせたもののいつも理由を付けては結婚を先延ばしにしていたので困っていたのよ。このままでは王家の直系が絶えてしまうとね」


 はあ、それは王家としては一大事だったでしょう。


「そこへ貴女が現れて二人とも結婚する気になってくれたのよ。婚約破棄されたキャサリンとカテリーナには悪いけど国益のためなら多少の犠牲は仕方ないわ」


 今、「国益のためなら犠牲は仕方ない」って言ったわよね?

 国のためならその元婚約者たちに犠牲になれって平気で言えるなんてさすがはモンスター王子たちの母親モンスターね。

 でもその考えで行くと私も「国益のために二人の王子と結婚しなさい」ってことを言いたいのよね?


 私は恋愛結婚以外はお断りよ!

 たとえ最終的にブランかゼランを選んだとしてもその時は相手のことを好きになって選ぶわ。


「アリサ。貴女が息子たちのどちらを選んでもいいように準備はしておくから大丈夫よ」


「準備ですか?」


「ええ。貴女がもしゼラントを選んだらゼラントを王太子にするから安心してね」


「え? 王太子はブラント様じゃないんですか?」


「双子の場合は王位継承権は同じなのよ。今はブラントが王太子に便宜上なってるけど厳密に言うとブラントもゼラントも同じ王位継承権第一位なのよ」


 何ですって!?

 双子の場合は王位継承権の順位が同じなの!?

 それって私と結婚した方を次の国王にするってこと!?


 私に未来の国王を決める権限があるってことじゃない!

 そんな重大な権限なんていらないわよ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ