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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

蔵品大樹のショートショートもあるオムニバス

命令

作者: 蔵品大樹

奇妙な世界へ…

 俺は三島翼。ただの高校1年生の青年だ。

 いきなり自慢するようで申し訳ないが、俺の人生は勝ち組だ。親父は上級国民。なので、俺がどんなことをしようと、親父が警察や関係者に賄賂を払ってそれを揉み消す事ができる。現に俺はクラスの暗い男、柄本進を複数人でいじめているのだから。

 そんなある日の事、夜、俺の元に変なメールが来た。メールにはこう打たれていた。

 『私はクローバー。私は明日から貴様ら5人に命令する。その命令を背くとどうなるか…覚悟をしておけ』

 最初はただの厨ニ臭い迷惑メールだと思っていた。

 次の日、俺が学校に行くと、あの柄本がいなかった。俺はいじめ仲間である永山隆雄に聞いた。

 「永山、柄本の事、知らねえか?」

 「ん?柄本か?あいつ、不登校らしいぜ」

 「ふ、不登校?」

 「あぁ。それより、このメールに見覚えあるか?」

 すると、永山はおもむろにポケットからスマホを出し、メール画面を見せた。そこには俺が見たメールの文面そのものだった。

 「あっ、それ、俺も見たぞ」

 「えっ、それは本当か、三島!じゃあ、見せてくれ」

 俺は永山に例のメールを見せようとした時、新しくメールが来た。

 「な、なんだ?」

 俺と永山は恐る恐る、メールを開いた。

 『今から30分、自分の所持品を1つ壊せ。そして、壊した後の写真を送れ』

 「えっ…自分のものを壊す?」

 俺は少し怖くなったが、いたずらだと思って、それを無視する事にした。

 その日の帰り、俺は暗い道を歩きながら、帰路についていた。そして、例のメールを見ていた。

 (これ、無視しても大丈夫なやつか…?)

 俺はそう思いながら歩いていると、向こうからバイクが蛇行運転をしながら走ってきた。

 (おいおい、危ないだろ…こんな暗くて細道じゃ…)

 バイクと俺の距離が残り2メートルに差し掛かった時、何と運転手の右手にはマチェーテがあった。

 「うわっ!」

 俺は思わず、横に避けた。そして、そのままバイクは俺に当たることなく、そのまま通り過ぎて行った。

 「ハァ…ハァ…あ、危なかった…」

 俺が胸を撫で下ろしていると、電話が来た。相手は知らない番号だ。俺は恐る恐る電話に出た。

 「は、はい…」

 恐らくボイスチェンジャーで声を変えているのだろうか、低い男の声が聞こえた。

 「運が良かったな」

 相手がそう言うと、電話は切れた。

 夜、俺はベッドに入っていた。すると、電話が来た。相手は永山だ。

 「ん…何だよ…今から寝ようと思ったのに…」

 「す、すまない…それより、さっき命令が来た。『1分以内に外を出て、歩きながら発狂しろ』って…」

 「あっそう…」

 俺は眠そうな声で話しているが、永山は焦っていた。

 「まぁ…無視すれば?」

 「無視か…わかった。そうするよ。明日、ゲームセンター、10時に行こうぜ」

 「オーケー…おやすみ」

 俺が切ろうとした瞬間、永山の声が聞こえた。

 「お、おい…誰だお前…その手に持ってるやつは…やっ…やめ……あっ」

 そして、電話は切れた。俺の額には汗が滴っていた。

 次の日、俺は朝食を食べながら、ニュースを見ていた。すると、ある1つのニュースが流れた。

 「速報です。今日、東京都横芝町にて、未成年の死体が発見されました」

 ニュースキャスターがそう言うと、場面が切り替わると永山の家が写っていた。そして、テロップには、『学生 永山隆雄くん (16)』と書かれていた。俺は呆然とした。

 その後、いじめ仲間の植松克己から電話が来た。内容は、植松の家に行って話すことだ。

 俺が植松の家に行くと、植松といじめ仲間の葛城太、辻涼平が話し合っていた。

 「何を話してるんだ、お前ら」

 「あぁ、三島、丁度いいところだ。これを見てくれ」

 3人はスマホを見せた。無論、そこには例のメールが写っていた。

 「実はさ…俺…」

 辻が口を開く。

 「どうした?」

 「俺の父さん、捜査一課の刑事なんだ。実は父さんからこんな話を聞いたんだ。永山の死体の近くに、スマホが置かれていたんだ。勿論、それは永山のスマホ。そして、そのスマホは起動したまんまだったんだ。画面にはこう打たれていたんだ。『命令に背いた者は死を』ってね」

 (じゃ、じゃあ、まさか…)

 俺は昨日の事を思い出した。自分を襲って来たバイクは命令に背いたから…、永山が謎の人に殺されたのは…。そう思うと、寒気がした。

 「ウ、ウワァァァァァ!」

 「ど、どうした!植松!」

 植松が急に叫びだした。

 「ど、どうしよう」

 「お、おい、どうした!」

 すると、植松はスマホの画面を見せた。そこにはメールで『10分以内に自分を傷つけろ。そして、写真を送れ』

 「あ、あぁ…」

 「落ち着け、植松!」

 「おっ、落ち着けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 植松はそう言うと、自分の部屋から出て台所へ向かった。そして、急に静かになり、俺達は台所に行った。

 「おい、植松、大丈夫…か…」

 そこには、包丁で腕を刺そうとした植松がいた。

 「う…うぅ…」

 「や、やめろ!」

 「や、辞めるもんか!」

 植松がそう叫ぶと、植松は包丁を腕に刺した。

 「いっ…痛あああああああああああ!」

 「お、おい、植松!」

 「早く救急車を!」

 葛城が自分のスマホで救急車を呼んだ。植松は、自分の腕の写真を撮り、それを送った。

 「こ、これで良いだろ…」

 植松はそう言うと、意識を失った。

 その後、植松はなんとか一命を取り留めたらしい。

 次の日、奴からメールが来ていたことに気づいた。メールにはこう打たれていた。『1日以内に親族を殺せ。そして、死体を撮った写真を送れ』俺は固唾を呑んだ。

 家には今、寝たきりの祖父しかいない。親父は仕事、母さんは旅行でいない。そして、俺は腹を括った。ガムテープと紐を持って祖父の部屋へといった。

 部屋の扉を開くと、祖父は寝ていた。一応、息はしているが寝たきりである。

 まず、口をガムテープで塞いだ。恐らく声は出せないだろうが、念の為である。そして俺はロープで祖父の首を縛った。小さい頃の祖父との思い出がよぎるが、そんな物を俺は無視し、強く縛った。その内、祖父から出ていた息は弱まり、そして…止まった。

 「ハァ…ハァ…ハァ…」

 過呼吸になりかけるが、俺は落ち着き、祖父の死体の写真を撮り、それを送った。

 俺はリビングに行き、テレビを点けようとした。その瞬間、チャイムの音がなった。

 「はい」

 ドアを開けるとそこには葛城がいた。

 「か、葛城。どうしたんだよ。こんな時間に」

 「あぁ、俺も命令されたんだよ。友達三人を殺して、その写真を送れってな」

 葛城のスマホのメール画面には葛城の言っていた事と同じ文があった。

 「さ、三人?ま、まさか、お前!」

 「あぁ、植松と辻は殺した。植松は入院中だったから無抵抗。辻は命令で目を潰した後だったから簡単だった。そして最後はお前だ…だから…死ねやぁ!三島ぁ!」

 葛城は片手に持ったナイフを振り上げた。

 「うわっ!」

 俺はとっさに台所に逃げ、アイスピックを取り出した。俺が台所を出ると、葛城はリビングに来ていた。俺は覚悟を決め、葛城に特攻した。




 どれぐらいの時間がかかったのだろうか。俺は返り血を浴び、植松、辻、葛城の死体の写真をやつに送った。その後、知らない番号から電話が来た。

 「今、どこに居る?」

 相手は聞いたことのある声。それは一昨日、『運が良かったな』と言った奴だ。

 「三島翼の家に居る」

 「わかった。じゃあ、玄関でそのまま待ってろ」

 奴がそう言うと、電話が切れた。

 俺はそのまま玄関に向かい、すると、扉は開き、巨漢の男がいた。

 「すいませんね。これも、若の命令なんで」

 そう言われ、頭に袋を被せられ、俺は意識を失った。





 「……………い………起きろ……」

 「う…うわっ」

 顔に冷たい物を被せられ、俺は目を覚ました。俺がいる場所は暗い所だ。更に椅子に縛り付けられていた。そして、目の前にいる男は…柄本だ。あの柄本進だ。

 「お、おい!何をするんだ、柄本!」

 俺は喚き散らした。しかし、柄本はソレを無視するかの様に話し始めた。

 「やぁやぁ、三島君。あの時はどうも。実は僕、裏社会の人間の息子で命令主のクローバーは僕だ。キャハハハ」

 「くっ、クソっ!離せ!」

 「へっ!離すものか。実際、俺が『やめろ』と言っても、止めてくれなかったじゃないか。いいか、耳の穴よくかっぽじってよく聞けよ。最後の命令は……………………………………………死だ」

 そう言うと柄本はナイフを持ちこちらに近づいてくる。

 「やっ、辞めろ!柄本!おっ、俺が悪かった!許してくれ!頼む!頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む!許してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…」

 俺の訴えも虚しく、俺は頸動脈を……………………





 「では、吉岡、死体の処理を頼む」

 柄本が巨漢の男である吉岡に命令をした。

 「はい…解りました。……にしても、復讐なんかして、良かったんですかい?」

 「なんか文句でもあるのか?」

 「い、いえ、そういう訳じゃありません。ですが、先週、若が『復讐をしたい』だなんて言うから、びっくりしましたよ。その為に対象の携帯番号を探すために情報屋を頼んだりして、大変でしたよ…」

 「まぁ、そうか。すまないな。今度なんか奢ってやるよ」

 「はっ!有難き幸せ!」

 「フッフフフ、フフフフフフ…ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 柄本は復讐を果たせたのか、愉悦の顔をしていた。

読んでいただきありがとうございました…

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