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打倒魔王の魔術学校生徒  作者: 野河マコト
40/43

40話 潜入Ⅲ

突如、轟音が響いた。

魔術学校校舎の地下にある魔石研究室、そのドアが大きく変形した状態で室内に飛んでいった。

突然の事態に中に居た者達は皆驚愕している。

ドアがあった場所に姿を見せるのは麗沙だ。拳を突き出して笑みを浮かべている。

麗沙の性格を知ってる者なら、最早何が起こったのかは聞かなくても察するだろう。

「勝手に突っ込むなよ…馬鹿なのか?」

零央、黄緑の代わりに後ろから俺がツッコミを入れる。

今さっき全員で行こうみたいな雰囲気だったのにそれをいきなりぶち壊されたら流石に指摘したくもなるだろ。

「うるさいわね。この方が早いじゃない。」

「いや轟音+衝撃=警戒だろうが。明らかに対処が面倒くさくなっただろ。やっぱり馬鹿だったか…。」

「何よその計算式。訳わかんないこと言ってないでさくっと倒すわよ。」

…まぁ、手早く終わらせるってのには賛成だ。

奇襲を仕掛けるよりは正面から打ち倒す方が楽だからな。

「んじゃ仕方ねぇ…。サクッと終わらせるぞ!」

麗沙の行動で緩まった、俺を含めて3人の緊張が再び高まるのを感じる。

それと同時に中に走っていく麗沙。

俺達もその後に続く。

(さっきみたいに剣の側面を叩きつけて気絶、場合によっては切り込んで──)

ふと、違和感を覚えた。

研究員(標的)を無力化するべく姿を見たその時に。

その顔には焦りがはっきりと浮かび上がっている。

にも関わらず、その目の奥には僅かながら恐怖や焦りとは違う何かがあるように思えた。

刹那の後、左側へ跳んでいた。

ほぼ同じタイミングで麗沙も右へ跳んだ。

無意識のうちに跳んだことを自覚した時には、零央と黄緑は球状の膜に囚われていた。

「なっ!?何だこれっ!」

「…結界ですね。間違いなく。」

2人の声が聞こえてきた。どうやら音を遮断するものではないみたいだ。

2人が無事であることに安堵する暇もなく、床から振動が伝わってきた。研究員達は逃げ始めていてその振動かとも思ったが、それにしては大きすぎる。

そして大型装置の奥から──事前に『眼』でその奥に空間があるのは知っていた──人の形をした物がこっちに向かってゆっくり進み始めたのが見えた。

人の形と言っても一般的な身長よりも2回り程度大きく、輪郭が見えそこにいると解るのに全身が透けている。

そういえば、さっきの結界も似たような質感だったな。

そんなよく分からない物が、何体もこちらへ向かって来ている。

「はあぁっ!!」

俺が向かってくる敵を視認していると、衝撃音と熱、麗沙の力強い声が伝わってきた。

零央と黄緑を閉じ込めている結界を殴りにかかったがビクともしてない。

それでも麗沙は続けて殴り続ける。こんな風に焦り気味な麗沙は初めて見たな。

「麗沙ちゃん落ち着いて!私たちは大丈夫だから。それにこの結界は多分物理的、魔法的にも干渉出来ない造りになってる。どれだけ強い魔法を当てても壊れないよ。」

「っ…じゃあどうするのよ!?かなりの数の敵が来てるのよ、もし守り切れなかったらっ…!!」

そこまで言ったところで俺は麗沙に近づき、閉じることを知らない口を仕方なく手で塞いだ。

「黄緑の言う通り落ち着けって。敵が来てるって分かってんならやることは分かるだろ?」

そう、先の不安を口にするよりもやるべきことがある。

それはとてもシンプル。

「障害になる敵を倒して、2人を助けて、そして赤ちゃん達を見つけ出す。簡単な話だろ?」

それを聞いた麗沙が手をどけようと暴れるのを止めたので、俺は手を離した。

「……そうね。それじゃあ、サクッと終わらせましょ。」

落ち着きを取り戻した麗沙は部屋の奥に視線を移す。

俺もそっちへ目を向けると、こちらへ進んでいた人型物体がさっきよりも近い位置で止まっていた。

麗沙が落ち着くまでの間に止まったようだ。

「…あれはおそらくゴーレムです。」

黄緑が結界越しに人型の正体を判断した。

「でも、ゴーレムってあんな特殊な見た目してないよね…?」

「零央くんの言う通り、あのゴーレムは既存のものとは違います。多分、材料が普通のとは違うんだと思います。」

一般的にゴーレムは岩が人の形をとったような見た目をしている。岩石を素として魔術で編み上げてるらしいが、今回はその岩石に当たる物が別のものになっているみたいだ。

俺は『眼』を使って、ゴーレムの構造を見る。

材質までは分からないが、構造上の弱点くらいは分かるはずだと思っていた。

が、俺の『眼』には()()()()()()()()

構造どころか、ゴーレムの姿さえ確認できない。

「……これって…。」

俺は1つの考えに行き着く。

実は『眼』は構造を把握出来ないものがある。

それは俺たちが日常的に使っているもの。

魔力の流れと魔力そのものは『眼』で視認することが出来ない。

他にも見れないものがあるのかもしれないが、現状考えられるのは、そう。

「…あいつら、魔力だけで作られてんじゃね?」

「っ!そう考えれば、結界とゴーレムの材質が似てることも説明できます!」

「魔力のみで作られたゴーレム…初めて見たな…。」

「そんなの当たり前だよ零央。」

俺の確信を持った発言に全員の視線が俺に向く。

「それは多分ここの奴らの研究成果の1つだ。知ってるはずがない。」

ここは研究所だ、何かの実験や研究をしていた。そのために生まれたばかりの赤ちゃんを攫ったんだ。

「…待って!後ろから来てる…かなりの数ね…。」

麗沙が突然そんなことを口にする。

何かと思い『眼』で確認すると、先程廊下で切り伏せた敵と同じ格好をした者が十数人向かってきていた。

『眼』を解除したとき、不意に麗沙の顔が見えた。

ご褒美を待ちきれない子供のような期待に満ちた顔がそこにあった。

(ゴーレム達を見た時とは明らかに違う表情だな…。)

麗沙の性格がまた少し解った気がする。

「あー、麗沙、後ろから来る敵、お前に任せてもいいk「もっちろんよっ!!」

……そこまで嬉しいか麗沙よ。

「んじゃまあ、俺の相手は魔力の木偶の坊か。」

零央と黄緑を結界から出すのに、あいつらは邪魔だ。

部屋の外の向かってきてる敵は麗沙が倒すだろうから問題ない。

「速攻で倒してやる。せいぜい足掻いてみやがれ。」

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