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打倒魔王の魔術学校生徒  作者: 野河マコト
39/43

39話 潜入 Ⅱ

危なかった。

俺の失態で零央が怪我するところだった。

さっき居た通路に戻ってすぐに敵の1人の鳩尾に剣の柄頭をお見舞いし、そのまま流れるように蹴りで3人を気絶させた。

最後の1人は剣で応戦してきたが難なく受け止め一撃喰らわせた。

ただ、つい焦ってそいつの二の腕を斬ってしまった。

深い訳では無いから大事にはならないだろうけど、最悪殺してたかもしれない。

…他人の事で焦るのは、あの日以来か。

土が崩れる音が聞こえてすぐ零央がこっちに駆け寄ってきた。

「誠!ありがとう。…でもごめん、僕1人じゃ倒すのは無理だった…。」

「いや、あれは俺の落ち度だよ。索敵した時に見落としてた…てのは言い訳か。」

俺は剣に付いた血を払って鞘に収めつつ、零央に背を向けて走り出した。

「着いてきてくれ!急いだ方が良さそうだ!」

そう言うと零央は俺の後に続いて走り始めた。

「どうしたの?急に焦ったみたいに。」

「憶測なんだけど、ここに複数人が来たってことは、俺たちが侵入したことだけでなくその居場所まで大体知ってるかもしれないんだ。」

零央が戦ってる最中にもう1人合流するからともかく、巡回していた集団と鉢合わせたってのは確率が低くて納得がいかない。

それに集団で見廻らせるのは見つけることに関しては非効率だ。

現在位置まで知られてるかは分からないが、どこから侵入したかバレたのは事実だろう。

「あのまま居続けたらもっと敵が来るかもしれない。それは面倒だからさっさと移動することにしたんだ。」

「あ…確かにそうだね。あれ以上の人数が来たら本当に無理だ。」

最初に確認した突き当たりを曲がると、先程と違い左側に扉が並んでいた。

「…全部見てる暇は無さそうだから、目星を付けてた部屋だけを見た方がいいかも。」

零央の提案は理に適っていた。

いつ敵が来るか分からない以上、なるべく早く見つける必要がある。そのためには探す時間を短縮するしかない。

「了解。じゃあ当初の予定通り、言語研究室に行くぞ。」

そう言った矢先。

ゴオォォン…という爆発音が遠くで響いた。地下だからか振動は微かだ。

「これって…2人も襲われてるんじゃない!?」

「だろうな。俺たちの位置が割れてたんだ、向こうだって気づかれてるだろ。」

「そんな…!」

助けに向かおうとした零央の肩を掴む。

零央はパッと振り返って俺を見ると、肩の力を抜いて息を吐いた。

「まあ待てよ。確かに麗沙と黄緑は攻撃を受けてるだろうけど、多分問題ない。

麗沙のあの興奮ぶりを見たろ?察するに麗沙は相当やれる。黄緑も魔術が得意みたいだし大丈夫だろ。」

むしろさっきの爆発は麗沙がやったものではないかと思ってる。

理由は、まぁ……性格的に。

黒崎先生と相対した直後に決闘を挑まれたのは記憶に新しい。

(あんだけ戦い好きなら、自然と戦い方も想像できるからなぁ。どうせまた「戦え」って言われるだろうし、対策でも考えとくかな。)

そんなことを考えながら再び走り出した。


「遅かったわね。そんなに呑気に部屋を調べてたの?」

結局言語研究室には何も無かったから教員棟から教室棟へ向かってみれば、合流地点の魔石研究室の前で麗沙が立っていた。

随分と余裕そうな表情を浮かべている辺り、敵は速攻で倒したのだろう。

お前が速すぎるだけだと相槌を打つと、零央が麗沙に質問した。

「ところで麗沙、黄緑はどうしたの?」

「え?黄緑なら………あっ。」

あっ、じゃねぇよ。

「いつの間にか置いていってたかも…。」

…麗沙にとって黄緑は友達のはず。なんだけどなぁ。

「はぁ…大方俺より速く着こうとしか考えてなかったんだろ。」

「うっ…悪かったわね。でもそのお陰で敵は一掃出来たからいいじゃない。それに…。」

麗沙が話している間に委員会棟側の通路から足音が聞こえてきた。

「それに、黄緑はめちゃくちゃ強いんだから。置いていった程度じゃやられないわよ。」

その聞こえてきた足音を鳴らしながら、黄緑がこっちに歩いてきた。

…いや、早歩きか?あれは。

「り〜〜さ〜〜ちゃ〜〜ん?」

「げ。」

黄緑は笑みを浮かべているはずなのに、その顔は笑っていない。

「何で私を置いて先に行っちゃうかなぁ?いくらなんでも酷いと思うけど?」

「あーーえっと、それはー…そう!効率!効率を考えた結果私が先に行くべきだと思ったのよ!」

「へぇ〜?その割には調べる部屋を通り過ぎて行ってたけど、あれはどういうことかなぁ?」

「ぁ、いや、それはー…。」

……怖いな。

普通に黄緑が怖いんだが。

これが小説でよくある、女の怖い笑顔か…。

「えっと…黄緑さん、そっちは何か発見できた?」

「……いえ。予定していた場所以外も調べましたが、何も見つかりませんでした。」

普段の調子で零央の問いに答える黄緑。

あのままだったら麗沙はどうなっていたのか少し興味はあるが…。

「なるほど。つまり、残すはここしかないって訳か。」

俺は左側にあるドアを見て言う。

他の扉と特に違う点は無い。

だが俺の『眼』には、その扉の向こうに他の部屋にはない大型装置やらそれを操作する複数の人が見える。

「…これは居るわね。奥のあちこちから物音がするわよ。」

麗沙も俺と同じようにここに居ると分かったらしい。

そういえば祐斗君がちょっかい出されてることも聞こえてたみたいだし、相当耳が良いようだ。

「よし、準備はいいな?」

全員、一分の迷いもなく首肯した。

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