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打倒魔王の魔術学校生徒  作者: 野河マコト
33/43

33話 犯人探し Ⅰ

「さてと、犯人を追うのはいいとしてだ。」

西日になりつつある太陽が眩しい学校からの帰り道で、一緒に歩いている零央たち3人に向かって俺は足を止めて言った。

「どうやってあいつを探す?どこにいるのかさえ分かってない以上、捕まえるなんてまず出来ない。」

それが一番の問題点。

この辺だというヒントさえない状況に正直お手上げ状態だ。

3人とも俺と同じように見当もついていない様子で悩んでいた。

「思ったんですけど、今は行動するよりも探し出すための方法を考えるべきではないですか?」

訂正。黄緑には何か考えがあるようだ。

「具体的に言うと?」

「えっと、つまり…直接犯人がいる場所を探すよりも、犯人がどんな行動をしたのかを調べれば、おのずと潜伏先も分かるし、犯人の目的も知ることができるんじゃないかなって、思ったんです。」

言葉を探しながら黄緑は俺の問いに答えた。

確かにその方が効率的かもしれない。

早く助けなければと焦ってたせいで思いつかなかった。

「ナイス黄緑!ならさっさと足取りを調べるわよ。」

「待て待て、どうやって探す気だ?俺たちは犯人の足跡はおろか人相さえ知らないんだぞ。」

「う、確かにそうね…。」

何しろ顔を覆い隠せるような大きなローブだったせいで体格もよく分からない。

まずはそこから考えないといけないだろう。

「あのさ誠、校長から渡された物に何かヒントないかな。ダメ元だけど。」

そういえば校長室から退室する時、校長が何かを投げ渡したのだ。「おそらくこれが必要になる」という言葉を付け足して。

零央に言われて胸ポケットからそれを取り出す。

白い直方体の形なのだが、これが何なのかよく分からない。

「これって、USBメモリじゃない?」

ところが、零央はこれについて知っているようだ。

「USBメモリって…確か隣国のヴァストロータで開発されたものですよね?確かあのパソコンと一緒に使うって聞いたことがあります。」

ヴァストロータとは、この世界で最も技術力に長けた国で、その科学技術で数多くの機械や電気製品などを製造してそれを他国にも販売していると聞いたことがある。

現に魔術まみれのこの国でもヴァストロータ製の機械を使っている家や機関がそれなりにある。

「あんたはこれどう使うか知ってるの?」

「うん。黄緑さんが言ったようにこれはパソコンに使うものだよ。このメモリでデータの出し入れが出来て便利なんだ。」

「へぇー。まあとりあえずそれは置いといて、聞き込みとかをして犯人の情報をさっさと探すわよ。」

「ちょっと待て。」

俺は麗沙に制止の声をかけた。

確かに今は情報を集めた方がいい。だが、校長が必要だと言ってわざわざ渡したこのUSBも気になる。

「…先にこっちを見てもいいか?何しろこの国の政治を動かしてる人から渡されたものだ、もしかしたら重要なものかもしれない。」

「んー…分かったわよ。それで犯人のことについて全部知れるなら楽だし。」

「流石にそれは無いんじゃないかな…。でも桐ヶ谷君、それを実行するためには1つだけ問題がありますよね?」

そう、この方法には少々厄介な問題がある。

それは俺も気づいていた。

「あぁ、黄緑が言いたいのは、このUSBを使用するための機械が無いってことだろ?」

USBメモリは主にパソコンに差し込むことで使用することが出来る。

だが、パソコンはここ最近普及し始めたばっかりで持ってる人はそうそういないだろう。

「そう都合良くパソコン貸してくれる家は無いだろうしな…。尋ねすぎて新手の犯罪だと思われたくないし。」

「それに、パソコンを貸し出してくれる公共機関は知る限りありません。探せば見つかるかもしれませんが…。」

「そんなことしてる時間無いわよ。この際、誰かが買えばいいんじゃない?」

「麗沙ちゃん、パソコンがいくらするか知らないの?麗沙ちゃんのお小遣いの100倍くらいの金額だよ?」

「う…なんでそんなに高いのよ…。」

そう、パソコンは金額がもの凄く高い。

これも所有者が少ない理由の一つだ。

学生である俺たちは無論、働いている社会人でも買える人はほとんど居ない。

最悪、また校長に会って借りるって手もあるが、出来れば最後の手段にしたいし…。

「…あのさ、実は僕の家にあるんだよね、パソコン。」

その発言に俺を含めた全員が零央の顔を見る。

「あんたねぇ、なんで先に言わないのよ!」

「いや、話を切り出すタイミングが無かったから!」

「そんなの最初に言えばいいでしょ!」

麗沙の怒鳴り声が辺りに響き渡る。周りの人がこっちを見るが、麗沙は気にしてないようなのでこっちも無視する。

とにかくパソコンが使えるのは有り難い。USBの中身を今すぐ確認しないと。

「零央、今からお前の家に行けるか?」

「うん、行けると思う。親は共働きだから家に居るか分からないけど、居ても多分入れてくれるよ。」

「よし、なら行くわよ。さっさと犯人を探さな——」

「あ、僕の家逆方向だよ。」

歩き出した麗沙を零央が引き止める。

それに対する麗沙の反応は。

「…なら早く道案内しなさいよ!!」


その後、黄緑が憤慨した麗沙を宥めたが20分ほどかかった。

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