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打倒魔王の魔術学校生徒  作者: 野河マコト
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25話 修繕1

「失礼します…。うわぁ、凄いですね!カフェの下にこんなものが…。」

「ああ、俺も最初に見た時は驚いたよ。じゃあ祐斗君、あそこの椅子にでも座ってて。3人もそこら辺でいいよ。」

俺は祐斗君と零央達の4人を入って奥の椅子に座るよう言った。

ここに店長以外の人が入るのを見たことがないので、新鮮な感じだ。

「あのさー、なんか暑くない?私汗かきたくないんだけど。」

「…麗沙もそういうこと気にするんだ。」

「何か言ったかなノーデリカシーの零央君…?」

「あ、えと、いえ何もっ!」

「まあまあ、許してやれよ麗沙。…それじゃ早速作業に取り掛かろうかな。剣を貸してくれる?」

「あ、はい。よろしくお願いします。」

麗沙を鎮めた後、俺が言うと祐斗君は快く剣を渡してくれた。

これはしっかりと修繕しないとな。

俺は改めて剣をじっと見て調べた。

まずは外側。一目見ただけで数多くの戦いでその刃を振るったと分かるほど傷が多い。

「それにしても本当に長い間使われてるんだなこの剣。」

「はい。これは父の形見の剣なんです。前に父が使ってたのをそのまま使ってるんです。」

な…、まさかそんな大事なものだったとは…。

これは失敗許されねぇなマジで。

「なるほど…。慎重に扱わねぇとな。」

外側はだいたい分かった。

次は内側、この剣の「構造」を見る。

俺の「構造を見る」というのは、ただ内部の形を見るだけじゃない。

どんな素材で出来ているか、どの部分が脆く、傷ついているかも解る。

「ふむふむ…、素材は純黒鉄と、ワイバーンの牙か。どうりで硬いわけだ。」

「その2つは元々硬い素材なんですか?」

今まで口を開かなかった黄緑が興味ありげに聞いてきた。

「ああ。純黒鉄を使ってるからすげえ硬い。ワイバーンの牙はどちらかと言うと切れ味を損なわないようにするために使ったんだと思う。」

ワイバーンの牙は頑丈かと聞かれるとなんとも言えないが、その鋭さは一級品だ。

比較的倒しやすい魔獣ではあるのだが、1度でも噛まれれば身体のどこかは持っていかれるだろう。

「えっとー、刃はどんなものがいい?今までと同じように壊れにくい方がいいかな。」

「うーんと…そうですね、それでお願いします。やっぱり慣れてるので。」

なら素材は前と同じ5:2の比率で作ればいいか。

「了解。んじゃあ仕事開始っと。まずは…。」

俺は祐斗君の剣を刀身と柄に分ける。

珍しいことに、これは両刃の剣なのに日本刀で言う(なかご)があり、ここに釘を刺して柄に固定させる様に作られていた。

この剣作った人は製法に余程こだわりがあるのか?

「よっと取れた。そして次はこれを…ここに入れると。」

そして俺は、刀身を鉄でできたバケツのような容器に入れた。

すると、刀身はみるみるうちに溶けていく。

「ちょ、ちょっと誠!大丈夫なのこんなことして…!」

「ああ心配すんな零央。俺の『鍛え直す』はこういうことだから。」

そう言いながら俺は、追加で純黒鉄とワイバーンの牙を入れた。

「…つまりどういうことよ。」

麗沙が説明を求めてきたので、俺は顎に手を当てて答えた。

「えっと、剣を鍛え直すってことはつまりもう一度使えるようにするってことだろ?でも俺は伝統的な鍛冶師のやってきた製法なんて詳しくは知らないから、本来の直し方は分からない。

だからーえっとー、そうだな…、不死鳥、フェニックスに例えるといいかな。不死鳥は死期が近づくと自ら燃えて死ぬ。そして灰から再び蘇る。

使って使って使いまくって、もう使えないってなったら、その剣をまた1から作り直す。それが俺の直し方だ。

その剣は明らかに別物だとしても、確実に以前の剣から受け継がれてると思うからさ。」

「…もっと分かりやすく言うと?」

ここまで説明してもまた質問を返された。

結構いいと思ったんだけどな、今のセリフ。

「はぁ…。要は刀身を熱して液体状にして、また剣の形にするってこと。その方がコストも下がるしな。」

「なるほど。ようやく理解出来たわ。さっきの説明長ったるいんだもの。」

…長ったるくてすいませんでしたね。

2回目言うよ?あのセリフいいと思ったんだけどなあ。

「そういえば、その容器はどうして鉄とか牙を溶かしてるの?」

今度は黄緑が質問をしてきた。

なんでだろう。黄緑の質問は実用的な感じがする。

「それは、この容器の底に熱の刻印魔術が付与されてるからだ。」

「刻印魔術?それって確か2年生で本格的に習うものですよね?」

だったらなんで知ってるんだよ黄緑。

俺たちは1年生のはずなんだけど…。

「…まぁ詳しいことは知らんが、これがあるお陰で剣作るのが凄く楽になったな。」

「どこかで買ったんですか?だとしたらかなり高いと思うんですけど…。」

「いや、これは店長の友人から貰ったんだ。その人実際に鍛冶屋をやっててさ、これ以外にもいろいろもらったり教えてくれたんだよ。この直し方を説明したら、『いいんじゃない?』て言ってくれたし。

て、型用意しなきゃ。」

俺は鍛冶工房の隅の方にある網棚の方に向かい、そこから鋳型を取り出した。

「いや、あの剣の長さがあれくらいだから、祐斗君の身長を考えて…。」

取り出した鋳型より少し長めの型を選ぶことにした。

この鋳型は鉄でできているのだが、使われている素材が少し特殊で溶けた金属を入れてもくっつかない。

精密に作られているため隙間ができることもなく、氷の刻印魔術もかけられているので鋳造の時間が短くなるのもいい。

「これで、あとは素材が溶けるのを待つだけか。」

溶けていく鉄や素材の様子を眺めているみんなを見ながら、俺はそう呟いた。

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