19話 運命
「「「ありがとうございました。」」」
図書館から教室に戻って10分後、授業終了を告げるチャイムが鳴り1時間目の授業が終わった。
予想外のこともあったけど、これで1時間目終了か。
術式演算型…注目浴びそうだなこれは。
厄介事に巻き込まれなければいいけど…。
ちょっとした不安を打ち消すべく、別のことを考えることにした。
2時間目は副力属性、風の魔術の授業か。
確か4組のはず。
「移動しておくか。」
魔法科は基本的に移動教室なので、いちいち教科書を取りに行く手間を省こうと1冊の本に授業内容を纏めた。
そのせいで凄く分厚いのだけれど。確か600ページくらいあったと思う。
俺は6組の教室から出ると、教室1つ分離れている4組に向かった。
一瞬黄色い何かが見えた気がしたが、気にせずドアを開け——
「ちょっと待ちなさいよ。」
させてくれなかった…。
「何用だ麗沙?勝負なら受け付けないが。」
必ず聞いてくるだろう質問を否定する言葉を付け加えて返事した。
「私をそんなバーサーカー呼ばわりしないでくれない?私14歳の女子なんだけど。」
「あんな登場と質問されたら第一印象は戦闘狂な人って思われると思うんだが…。」
「普通に考えられないの?そういう人は中身も狂ってるわよ。」
確かに。いわゆるサイコパスってやつか。
そう考えると常識的な会話が出来てるし違うな。
「なるほど理解。ところで、お前属性は何なの?」
「…思いつきを装って私の弱点を探ろうとしてる?」
……本当は戦闘狂じゃねえのかこいつ?
普通そんな考えに行き着かねぇつの。
「いや今さっき魔術の授業してただろ。この後も副力属性の授業だから気になって。」
「あぁ、そういう事ね。私は主力属性は火で、副力属性は風よ。」
主力が火で副力が風ね…。ん、待てよ?
「…お前次の教室4組?」
「え?…そうね。風属性の教室は4組だから。」
マジか。
教室同じか。
いやまぁ嫌いってわけじゃないけど、なんかこう、苦手だからなぁ…。
「それで、私にだけ聞いて終わり?」
「あぁ、俺は主力が氷で副力が風だよ。」
「ふ〜ん…て、2時間目私と同じじゃない!よりにもよって…」
今こいつ何言おうとしたんだ?よりにもよって?
「あ、誠〜!廊下で何やってる…。」
俺が考えだそうとした時に零央が来た、と思ったら止まった。
彼の視線は俺ではなく麗沙を向いていた。
「ねぇ、こいつあんたの知り合い?」
顔さえ覚えてもらえてねぇ…。可哀想な零央…。
「そうだ。名前は佐久間零央。副力一緒だから教室同じだぞ。」
「あ、えっと、零央です。よろしく…です。」
これは…ビビってる?
あぁ前に引っ込んでろ的な言葉で怒鳴られたしな。無理もない。
「何ビクビクしてんのよ。あんた人見知りなわけ?」
「いえ、そういう訳では…。」
「麗沙ちゃんの口調に怯えてるんじゃない?」
と、向こう側(1組がある方向)から緑色の髪の女子が話してきた。
確か川満さんだっけ。
本当に状況を理解できてる。すげぇ。
「あ、そうなんですっ。」
「へぇ〜、素直なんだねぇ〜、佐久間くん〜?」
今にも殴りそうな勢いだな…。
「ところで、川満さんは次どこのクラスなの?」
「あ、実は私全属性でどこを受けてもいいんだ。だから、麗沙ちゃんと同じクラスを受けることにしてるんだよね。」
ふむ。てことは…。
「ここにいる4人は、一応クラスが一緒ということか。」
正直、運命的なものを感じた俺なのだった。
続く